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よし沼

  • Posted by: SOMA Hitoshi
  • July 6, 2005 3:18 AM
  • net

友人のひとりである吉沼が、ASAHIネットのブログサービス(アサブロ )を利用して「よし沼」 というブログをはじめたのはもういまさら紹介するのもどうかと思う5月のこと。「長編レシピ」と謳われた「チャーハン(一)」 は笑った。

 ごはんは、あらかじめ箸などでほぐしておく。旅順から届いた敏夫の手紙には、ただ、それだけの言葉があった。

あはははは。くだらねえなあ、「長編レシピ」。しかし、この人の書くでたらめはどうしてこう心地よく読めるのだろうかと毎度思う。

で、以下に引用したのは吉沼が、件のブログをはじめる際に最初に投稿した記事。

私は今年三十になる。人世五十が通相場なら、まだ今日明日穴へ入ろうとも思わぬが、しかし未来は長いようでも短いものだ。過ぎ去って了えば実に呆気ない。そんな事を考えるうち、日記でも付けてみようかという気になった。

近頃はblogとか云って、何でもその者の経験した愚にも附かぬ事を、日記だか何だかわからない体で、だらだらと、牛の涎のように書くのが流行るそうだ。好い事が流行る。私も矢張り其で行く。で、題は「よし沼」、書方は牛の涎。

説明したところで「ああそうですか」という話なのだが、知っている知識は披露したくなるもので、つい解説すればこれは二葉亭四迷の小説『平凡』のパロディである。それぞれ、冒頭の書き出しと、「二」の終わりにある文章で、本物は以下のとおり(引用は「青空文庫」 から。括弧書きのルビを適宜省略)。

 私は今年三十九になる。人世五十が通相場なら、まだ今日明日穴へ入ろうとも思わぬが、しかし未来は長いようでも短いものだ。過去って了えば実に呆気ない。まだまだと云ってる中(うち)にいつしか此世の隙(ひま)が明いて、もうおさらばという時節が来る。其時になって幾ら足掻いたって藻掻いたって追付(おッつ)かない。覚悟をするなら今の中だ。

 次には書方だが、これは工夫するがものはない。近頃は自然主義とか云って、何でも作者の経験した愚にも附かぬ事を、聊かも技巧を加えず、有の儘に、だらだらと、牛の涎のように書くのが流行るそうだ。好い事が流行る。私も矢張り其で行く。
 で、題は「平凡」、書方は牛の涎。

これまた「ああそうですか」だが、国文学科卒の私の、卒論の題材が『平凡』だったのだった(ちなみに吉沼は、芥川の『羅生門』)。

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