「あきすとぜねこ」と子どもの自由さ
チェリーブロッサムハイスクールを主宰する柴田(雄平)君が、12月に予定されているその次回公演のタイトル『アキストゼネコ』について、ブログにこのように書いていた。
「アキストゼネコ」とは、約25〜35年前の子供達(特に女の子)の中でブームを巻き起こした恋占いだそう。
ア 愛してる
キ 嫌い
ス 好き
ト 友達
ゼ 絶交
ネ 熱中
コ 恋人占い方はまだ知らない。これから勉強しなくては。なんか「友達」ってのが一番切ないな…。
宇宙 日本 柴田: あの夏から、アキストゼネコへ。
はじめその公演タイトルを目にしたときにはなんとも思わなかったのだが、この記述を読んで、私も、ああ、あれかと思い出したのだった。クラスの女子が唱えるように口にしていたそのかすかな響きがよみがえるような気がし、といって自分でやったことはないからほとんど知らないに近いんだけど、なんとなく喚起される記憶はあって、それで、ついその「占い方」を調べてしまったのだった。
これ、少なくとも1960年代から(おそらくは今も)連綿と存在する子どもの遊びのようで、子どもの遊びだけにむろん公式のルールなどは存在せず、時代や地域によって自在にアレンジが加えられているらしいんだけど、60年代に少年期をすごした人などによるネット上の証言[これやこれなど]を読むに、たとえば次のように、特定の算出方法で自分と相手の名前を数値化し、それを「あ~こ」のいずれかに当てはめるのが基本形であるらしいことがわかる。
お互いの名前の各文字を、その母音から「a=1、i=2、u=3、e=4、o=5、ん=1」というルールで数字に置き換える。
そうまひとし=531252
しばたゆうへい=2113342両者に重複する分の数字(上の場合、3,1,2,2)を消し、残った数字を足す。
531252→(3,1,2,2を消去→)55→5+5=10
2113342→(3,1,2,2を消去→)134→1+3+4=8この計算結果に、「あ(1)き(2)す(3)と(4)ぜ(5)ね(6)こ(7)、あ(8)き(9)す(10)と(11)…」というふうに「あ~こ」の文字が対応する。つまり、
そうまの側の思いは「すき」、
しばたの側の思いは「あいしてる」で、両思い
こまかなバリエーションにも触れておけば、「10→1+0=1」というふうに一桁になるまで足し算をつづけてから「あ~こ」に対応させるものや、「10+8=18」と双方の数字を足してしまって「あ~こ」に対応させるやり方などがあるらしい。
で、また、この「あ(1)き(2)す(3)と(4)…」と数えるときに、指先と指の谷間とを交互に指していったり、あるいは握り拳にできる山と谷を指していったりする動作が加わる場合があるといい[参照記事]、それはつまり「貧乏、大尽、大大尽」のような遊びとの相互浸透ではないかと思われるが、さらには、その「指の動作をともなってカウントする」という点でのみここまでの方式と共通する、下記のような自由な発展形[参照記事]も生まれたらしい(ていうか、このパターンもちょっと記憶にある気がするんだよなあ)。
- AがBの手のひらを叩いて、どこが痛いか聞く。
- Bは手のひらのどの部分が痛いか言う。
- AはBの言った地点から、「あきすとぜねこ」と言いながら言葉に合わせて左右の親指を交互に進めていき、肘関節まで行ったらやめる。
- そのとき最後に言った言葉で、好きな人との末路がわかる
このパターンに関連して、「Yahoo! 知恵袋」には2007年の投稿で、
アキストゼネコ はどういう意味ですか。
子供が占いをしてあげると言って、人の腕を取って、「アキストゼネコ」、「アキストゼネコ」と唱えながら、指をひじまで少しずつ上げていって、結局結果は教えてくれません。何を占っているか分かりますか。
アキストゼネコ はどういう意味ですか。 - Yahoo!知恵袋
という質問が投げられており(質問者は親だろうか?)、このパターンが現在もまだ伝播していることや、さらに変形が加わっているらしいことがわかる──というのは、この文面からは手順として a.) と b.) が抜けているように読め、この子どもは、任意の位置からカウントをはじめているように見えるからだ。
まったく自由だよ子どもは。
その他の〈ぶれ〉としては、「あきすとぜねこ」の「ね」を「熱中」ではなく「熱烈」とするもの、「あきすとぜねけ」あるいは「あきすとぜねこけ」として「け=結婚」があるものなどがあるらしい。
いやまあ、ここまで調べてすでに飽きてきてもいるのだけれど、なにか関連する情報があったらお寄せいただきたいところである。
【文中に示した以外の参照記事】
・あきすとぜねこ - 日本語俗語辞書
・投稿!ナウな死語辞典
関連記事
トラックバック(1)
トラックバックURL: https://web-conte.com/blue/mt-tb.cgi/360
以下のリストにある記事は、当記事 " 「あきすとぜねこ」と子どもの自由さ " を参照しています :