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思想のないRTより、粗相のないvia

  • Posted by: SOMA Hitoshi
  • August 6, 2009 4:17 PM
  • critique | web

 タイトルはなかば冗談(シティボーイズによる標語「思想のない演劇より、粗相のないコント」のもじり)だし、わたし自身の結論を先取りすれば、むしろ「RTの思想」をこそ拾い上げるべきではないかというふうにも思うのだが、いや、そもそもの話からはじめれば、Twitterの「RT」ってやつがよくわからなかったのだ。
 「RT」というのは「Re-Tweet=再つぶやき」のことである。あなたがTwitterを使っていて、ふと「いいつぶやき」に出会ったとする。この「声」は重要であり、もっと広く届かせるべく自身でも同じことをつぶやきたいとか、あるいは、重要であるとまでは言えないが何かひっかかるものがあり、そこから何かを考えるためのメモとしてひとまず採集しておきたいといったような場合に、「RT」の記法を用いてそれが再つぶやきであることを示しつつ、自身のタイムライン(TL)のなかにつぶやくことができるというわけだ。
 一般的な記述ルールは次のようなもの。

RT @username: message

 先に「RT」を打ち、つづく @username で元のつぶやき主を示す。@username のあとのコロン(:)は形式上のニュアンスを伝えて親切だが、これは字数節約の観点から省略する人もいて、どちらでもいいらしい。そして、元のメッセージ=つぶやきが最後につづく。
 要は「引用」なわけだが、もうひとつ、Twitterには引用の書式があって、それが「via」である。「via」のほうはこのような形式になる。

message (via @username)

 いま、より一般的であるのは圧倒的に「RT」のほうであるように見受けられるが、そんななか、かなり劣勢ながらも「via」を支持するひとつが、iPhoneおよびMac界隈ではよく知られるところのTwitterクライアント、「Tweetie」である。
 現時点で、「Tweetie」では再つぶやきの形式を「RT」にするか「via」にするか、ユーザーが環境設定で変えられるようになっている(このへんは、後段に訳出するブログ記事が書かれた当時とは状況が変化している)のだが、しかし、そのデフォルト値は「via」のほうである。
 で、調べると、今年1月の「Tweetie」公式ブログに「なぜわれわれはviaなのか」について語る記事があり、「“RT” vs “via”. Round 1.」と「“RT” vs “via”. Round 2.」というそのふたつを訳出したのが以下である。ただし、すでに触れたように、記事が書かれた当時からさらに状況は変化しているらしく、記事中では「環境設定でユーザーにどちらかを選択させるということもしない」と明言しているものの、その後にリリースされたバージョン(現バージョン)ではその機能が追加されている。
 というふうに、(まあ何でもそうだけど)歴史的なある時点での議論であることは多少考慮に入れつつお読みいただきたいが、では、ひとまずその記事を。訳してみてわたし自身が思うところについては最後に。

“RT” vs “via”. Round 1.

 "RT" 対 "via" 。まずは「Round 1」から。

 他人のつぶやきを引用して再度つぶやく場合に、「Tweetie」では "via" という記述法を用いている。
Tweetie uses the “via” syntax when re-posting tweets.

 "via" を用いることがまず合理的であるのは、それがより理解しやすいからだ。あなたがもう "RT" に慣れっこなのだとすれば、もちろんその略語ははっきりと意味をなすだろう。けれど、Twitterに新しく加入したばかりならば、"RT" がいったい何を意味するのかさっぱりわからないにちがいない。
The primary rational for the “via” syntax was that it’s simpler to understand. If you’re used to seeing “RT” all over the place, it makes sense, obviously. But if you’re new to Twitter, you have absolutely no clue what “RT” means.

 2文字分の情報を犠牲にするかわりに、"via" はそれ自身を説明する必要がないのである。対立するこのふたつの規格は、依然殴り合いをつづけているという印象だ。わたしが "via" を選択したのは、その言葉のほうがより意味をなすからである。もし、"RT" こそがいまやTwitterにおける「スタンダード」であると真に証明する者が現れるならば、わたしは敬意をもって「Tweetie」をアップデートするだろう。
At the cost of two extra characters, “via” is self-explanatory. I get the impression that these two opposing standards are still duking it out. I chose “via” because it makes more sense. If someone can present [real] proof that “RT” has become the “standard” of Twitter, I will honor that and update Tweetie.

 カギは標準化だ。そっちのほうがいいと思うので "via" にスタンダードになってもらいたいけれど、もし……、もし仮に "RT" がスタンダードになったならば、そのときにはわれわれも "RT" に乗り替えたほうが幸せになれるだろう。
Standardization is key. I’d prefer if “via” became standard because it’s nicer, but would be more than happy to switch to “RT”… if, and ONLY if it becomes the standard.
“RT” vs “via”. Round 1.

“RT” vs “via”. Round 2.

 「Round 1」からほどなくして更新された記事であることから、おそらく「Round 1」での意見表明のあと、「RT」陣営側からのものすごい攻勢があったのだろう。

 再つぶやき問題は “RT” の勝利に終わった。議論の余地なし、試合終了、以上である。"RT" のほうが、はるかに一般的な形式なのだ。もしあなたがTwitterクライアントに「再つぶやき(Retweet)」ボタンを付けるなら、それは以下の書式に従うべきなのである。
“RT” wins for retweets. Hands down, game over, that’s it. It is by far the most common format. If your Twitter client has a “Retweet” button, this is the format it should conform to:

RT @username: the message

 「@username」につづけてコロンが打たれるべきどうかについてはまだ議論の分かれるところだ(わたしは打たれるべきだと考えるし、Twitterの省文字数ナチの連中はだめだと決めつける)。そしてもしあなたがTwitterクライアントに「再つぶやき(Retweet)」ボタンを付けるなら、ユーザーに書式にかんするオプションなど与えてはならない。標準化せねばならない
Whether or not there should be a colon following @username is still up for debate. (I think there should be, Twitter character-count-nazis be damned). And if your Twitter client has a retweet button, don’t give users a formatting option. Standardize.

 以上が再つぶやきの形式だが、では、「Tweetie」としてはこの「スタンダード」を採用するのか? けっしてそうではない。つづきをお読みいただこう。
That is the format for retweets. So, Tweetie will adopt this “standard”? Well, not exactly. Read on.

 最近発見したのは、"RT" と "via" がまったく同じものを意味するのではないということである。"RT" は元のつぶやきをそのまま、逐語的に再度つぶやくさいに典型的に用いられる。何というかそれは "fwd" に相当するのであり、このメールを10人に転送すればビル・ゲイツからお金が支払われるのだからといってあなたのおばあちゃんがいまだに送りつけてくるような、チェーンメールの転送にさえ似ている。かたや "via" が用いられるのは、そのつぶやきが元の発言者のおかげであることを示しつつも、それを新たな自身の文脈に載せ、提出したいと考える場合においてである。
What I found recently is that “RT” and “via” don’t mean the same thing. “RT” is typically used for verbatim retweets, sort of like the equivalent of “Fwd” for those chain emails your grandmother still sends you where Bill Gates will pay you money if you forward it to 10 people. “via” on the other hand is used when you want to add your own context to some existing tweet while attributing it to the original author.

 わたしの主張は、Twitterコミュニティーにおいて、RTスパムよりも、オリジナルのコンテンツのほうがはるかに価値があるものだということだ。同じことを、Craig Hockenberryこうつぶやいている
I would argue that original content is far more valuable to the twitter community than RT spam. Craig Hockenberry nails it in this tweet.

 で、だから「Tweetie」はどうするの? そのような読者の金切り声がすでにわたしの耳には届いている。「Tweetie」にはいま現在、"via" 形式の投稿を容易にするための "このつぶやきを再投稿(Repost Tweet)" ボタンが付いている。"via" と "RT" がそれぞれちがうものを意味する以上、ひとつの方法は、おそらくボタンをふたつ用意するというものだろう……あるつぶやきに「言及する」ためにひとつ(via)、そのつぶやきを「転送する」するためにもうひとつ(RT)。
So, what about Tweetie? I can already hear most of you screaming at me. Tweetie currently has a button called “Repost Tweet” that makes it easy to create “via” style posts. Because “via” and “RT” mean different things, perhaps there should be two buttons… one for “mentioning” a tweet (via) and one for “forwarding” a tweet (RT).

 問題はわたしが、UIをごちゃごちゃさせるのがたんに嫌いだということだ。(Twitterオタク以外にとっては)些末なことと思えるもののためにもうひとつ別のボタンを付け加えるのはまちがったやり方である。
My problem is that I HATE adding UI clutter. Adding another button for what seems like a petty detail (to non-twitter-geeks) is the wrong thing to do.

 (どちらをより多く使うかにより)両者を切り替える設定項目を加えるというのは、たんにお粗末なやり方だ。あなたが頻繁に "RT" を用いるというのなら、何よりもまず、そのスパム行為をやめるべきなのである。興味深いつぶやきを目にしたなら、少なくともまず自身のフォロアーへどう配慮するかを考え、そのつぶやきへの参照とともに、なぜそれが興味深いのかについて言及すればいい。フォロアーたちは、あなたがどのつぶやきを参照しているかを簡単に知ることができるのであり(なぜなら「Tweetie」はつぶやきに in_reply_to_status_id 属性を仕込むから、そこから元のつぶやきをたどることができる)、なにもあなたが全文を引用しなければならないことはないのである。
Adding a setting to switch between the two (depending on which you use more) is just as crappy. First of all, if you use “RT” a lot, stop spamming people. If you read an interesting tweet, at least think… why would my followers care… Then reference the interesting tweet and mention why it’s interesting! Your followers can easily see which tweet you were referring to (because Tweetie sets the in_reply_to_status_id attribute - allowing reply-chain navigation), and you don’t even have to quote the full text.

 結局「Tweetie」にはどんな変更が加えられるのか。いまのところ、ナシだ。もし、すっきりとしてごちゃごちゃしていない、"RT" を選ぶやり方を考えることができたなら、そのときには改良を加えよう。それまでは、手動での修正をつづけてもらわないといけない。"このつぶやきを再投稿(Repost Tweet)" をタップして、"via" を消し、頭に "RT" と入れてもらわないといけない。ことによると、その余分な手間はあなたが自身の思考をつむぐのを手助けするかもしれない。
So what is going to change in Tweetie? Right now, nothing. If I can think of a clean, uncluttered way to let you choose to “RT”, I’ll implement it in Tweetie. In the meantime, you’ll have to continue to modify the text manually. Just tap “Repost tweet”, delete the “via” and put “RT” in the front yourself. Perhaps the extra work might encourage you to come up with some original thoughts.

傍注:どこで見かけたのか忘れたが、“♺” で再つぶやきを示すというのはおそろしいアイデアだ。"RT" が抱える問題と同様、それではインターネット初心者にとって意味がわからないだろう。文字入力と結びつけて考えるのは不可能だ。それはリサイクルシンボルなのである(どこがどう再つぶやきなのか)。でもって、そのマークはiPhoneでは表示できないということもある(表示できないのがiPhone側のバグだというのは認めるにしても)。
Side note: I don’t remember where I saw it, but “♺” is a terrible idea for indicating retweets. It has the same problem as “RT” in the sense that newbies can’t figure out what it means. It’s impossible to type. It’s a *recycle* symbol (what does this have to do with *retweet*?). And it doesn’t show up on the iPhone (granted, that should be considered an iPhone bug).

(Continued from “RT” vs “via”. Round 1)

追記:というわたしに対して議論を挑むのはできるかもしれないが、この人を打ち負かすのはちょっと大変だぞ。
Update: You can argue with me, but it’s tough to argue with Him.
“RT” vs “via”. Round 2.

 で、追記にて言及されている「この人」はこう書いている。

 なんであれ "RT" ってやつが嫌いだ。注目に値するつぶやきがあれば、たんにそこへリンクすればいいじゃないか。オウム返しするんじゃなくて。
I hate the whole “RT” thing. Just link to noteworthy tweets, don’t regurgitate them.
Daring Fireball Linked List: 'RT' vs. 'via'

“RT” vs “via”. Round 3.

 探してみたが「Round 3」はまだ書かれていないようなので、以下はわたしの考えである。言ってしまえばこういうことになるだろう。
 どっちでもいいじゃないか。

 「RT」をきっぱり「スパム」だと見なす、atebits(というのが「Tweetie」の開発者)の視点はまず興味深い。どう興味深いかといえば、スパムというその比喩が、再つぶやきのもつある種の性質を端的に浮かびあがらせるのと同時に、また、積極的な再つぶやき肯定派にたいしてはむしろ、「スパム上等」といったようなアイデンティティを与えるかもしれないという点において興味深い。
 そして、そこにおいて立ち現れてくるものこそが、あるいは「RTの思想」かもしれないと思うのだ。
 スパムとオリジナルにつぶやかれたものでは、何であれ後者のほうに価値があるという atebits の主張は、つい首肯きたくなるところのものではあるものの、「じゃあ、オリジナルって?」という反問にきちんと答えを用意することなく、安易に賛同できる考えではないだろう。
 atebits もこだわるように、「RT」の抱える最大の(そしてじつは唯一の?)問題は、それが、すでにそれに慣れた者以外には「意味のとおらない記号」だということである。けれど、それはむしろこのように考えることが可能ではないだろうか。「RT」という記号を理解しないまま(それを飛ばして)自身のつぶやきを読む者がいること、そのことの覚悟をもってこその「再つぶやき」なのであり、「つぶやかせる」のではなく「つぶやく」以上、あくまでそれをつぶやく「声」はわたしのものなのだ、と。
 むろん擬似的にではあれ、Twitterにおいて「つぶやき=声」が志向されていることは、このさい、やはり重要な何かであるように思われるのである。

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