突然の電話.
最近,突然の電話は,縁起がよくない.
いや,今までもそうだったか.
誰が危篤だの,あんたなら治せるだの,金が高いだの..
こっちの都合はお構いなしの電話.結局,ただ働きか,
持ち出しなのになあ.
でも,今日の電話は,ちがっていた.
生まれるというのだ,子供が.
別に俺の子供が生まれるわけではない.
妹の子供が生まれるというのである.
時間がかかるだろうと踏んでいたのだが,
(初産はふつう時間がかかるものだ)
パンという音とともに,二時間でご誕生.
あまりに鮮やかな安産だが,俺が取り上げたわけではない.
俺の専門は別である(血とか出るのは似てるかも).
出産後,駆けつけたのだが,新しい生命は,時折ピックン
と体を震わせながら,すやすやと寝ている.
俺の顔をみると泣き出してしまうかと思ったが,ずっと
すやすやと寝ていた.
すっごいかわいいね,と喜び勇んで永澤に報告すると,
「気をつけなよー.また持ち出しだろ?」と心配された.
図星だった.
いいじゃん,おじさんだもん.
あっ,また電話だ.
(相馬称)
鼻は始終詰まっている。
そんなばかな話もないものだが、この二センチほどの鼻腔に地層のようにして、折々の記憶と結んだ匂いが凝りかたまり折りかさなりしていて、ふとした具合にそれがほどけて、鼻がとおったかと思う間もなく、年月を隔てたあの匂いがたしかにする。場所の匂い。
例えば日暮里の。大学受験の折りに泊まったときの。
何の匂いなのか、家の匂い。居間のテレビのチャンネルはMTVで、ケイト・ブッシュのクリップが流れていた。東京は夜の7時。それは持ち込んだCDだったか、そのとき東京で買い求めたのだったか。
今は栃木。
嗅ぎなれて久しいような、それとはまったく違うと言いたげなような、病室の匂いを、きっとまた鼻に詰めている。
(永澤悦伸)
昨日、「突然の電話」に関して書いたが
はたして
突然ではない電話など、あるのだろうか
そもそも電話とは...などと思っているところに
電話がかかってきた
それは、なぜか、こう、突然ではない気がした
(相馬称)
(相馬彰)
(みえにや)
この年になるまで、人との関わりの中で生き延びることを積み重ねていくうちに、いつのまにかこういう芸風が身についてしまった、といえばそれまでだが、
それを悪意を持った、本質的な他者からみれば、飛躍したり滑落転倒する筋立てや、決まって軽くひねった文末だのが、読者を必要以上に意識した、いいかえれば媚びた調子として、気に障るところがあるといえばいえるかもしれない。
しかし私には、決してそういう意図はないのだ。逆に私は、私自身の書いたものの最初の読者として、書いたものを過剰に甘やかすことは厳に慎んでいるつもりである(といって、まったく甘いところがないといえばウソだが)(ていうかそんな堅いことばかり言ったら、モノ書けなくなるし)。
というような、意に反した気恥しい(思いきって誤字も混ぜちゃおう)日記を、私自身の署名で掲載せざるをえないしくみが存在するということは、自業自得とはいえ、当初予想した以上に辛いものである(カライじゃなくて)。
否、これこそ私が、この「交換日記」によって、私自身にもたらそうとした地獄絵であろうか。実際やるにつれて、なぜか仕事も忙しくなってきて、疲れて家に着いてから、毎日毎日書くだけでも大変なのに(泣)。
まったく多者とは、手に負えないものだ。いずれにしても、これは私自身が書いたものではない。
(相馬称)
お願いだ。ここから出してほしい。どこか外部へ。連れ出してくれるのは、私は宮沢章一ではない、という言葉ではないだろう。
宮沢章一とはまたあからさまな偽名。使い捨てられた宮沢章夫さんに申し訳ないというか、宮沢喜一さんにも失礼というか、前沢章一さんなら知らないが、おそらく不在であるところの、連続して在ることを約束されずに生まれた名前しか、それしか足場を得ずに語るのだとすれば、私は宮沢章一ではない、と表明することには何の甲斐もなく、署名のさらに外側にあるというルールを露呈させるだけの効果しかないやりきれない。
と語ることでしかし、「宮沢章一」が、そろそろと縁取られていくとしたらどうしたことだ。語る私は何をしたらいい? まずは「章一」を何と口に出すのか。はたして「あきいち」なのか、「しょういち」なのか、「あきかず」なのか。どのように口ずさみ、どのローマ字のキーを打って変換するのか。私はそれを知らない。それを知らない私はしかし、
「みやざわあきお→宮沢章夫」
「夫を削除」
「いち→一」
「で」ある(笑)。
最後にサイレントとサイレンの違いについて。サイレントは静かですが、サイレンはうるさいです。
(宮沢章一)
つまり、なんだ、意図したわけじゃなかったが、
君の騙っているのは、私の固有名ではなくて私という風景で、
私を騙れば騙るほど、剥き出しの君自身で、
君が偽名であれば、さらに二重に君自身で、
君は私の署名で、より君らしくなるといった、
そういった装置か?悪意か?
はじめて見る顔じゃない。と思いました。
金子光晴に似ていると思いました。志ん生にも似ていると思いました。生まれたばかりの女の子をつかまえて、最晩年の金子光晴にそっくりです、とか、倒れてからの志ん生に似ていますとか云うとめづらしい感じになりますが、よくよく考えるとなんのことはない、日本を代表する二人のおじいちゃんに似ているということです。新生児と老人が似ているといった、ありきたりな話です。
ところが、馬生にも似ている。と、思った刹那、志ん生の固有名が回復し、血縁が像を結んだのでした。姪は志ん朝に似ていました。志ん朝の芸に似ていました。いい顔です。
大暑は猫の七回忌。
空調をきかせて「八月の狂詩曲」と「となりのトトロ」をハシゴ。
還ってこい、カメ、涼しいから。
(相馬称)
ところで政見放送である。
いまや猫も杓子も小泉一色といった感のある日本列島津々浦々であるが、わずか1ケタという驚異的な支持率を誇った森内閣の閣僚を半分近く留任させ、その責任が追求されないまま、小泉純一郎あるいは田中真紀子の個人的な魅力、人気だけで劇的に支持率が上昇してしまうという現象に疑問や不安を感じてしまうのは私だけではないだろう。我々は、このまま小泉内閣を、自民党を無防備に支持してしまっていいのだろうか。政見放送はそのヒントを与えてくれる。
なぜなら政見放送が一番面白いのは、自由連合だったからだ。
自由連合といえば、党代表の徳田虎雄氏が水をかぶったり、小さな女の子を追いかけて捕まえるというCMが異彩を放っているが、政見放送でもそれは健在である。候補者の肩書きがすごい。
「元衆参両院議」「国際発明協会会長」「経済研究所代表」「直木賞作家」「芥川賞作家」「会社社長」「院長」「マンション問題研究家」「国際的獣医師」「禁煙活動家」「ふくろう博士」「漫画家」「初代タイガーマスク」「アントニオ猪木の兄」「フィンガーファイブ」「渡辺絵美」とすごい人が目白押しだ。
その中で私が痛く感銘を受けたのが、若井ぼん氏である。氏の肩書きはこうだ。
「元漫才師でレゲエ音楽でも活躍している」
いきなり何を言い出すんだ。びっくりするじゃないか。この男、さすがに元漫才師だけあって、政見放送という番組の性質上沈みがちなスタジオの空気を、盛り上げて盛り上げて空回る。素晴らしい。なんて素晴らしいんだ。僕達が待ち望んでいたのはこういう男ではなかったか。
いや、そうではない。
この夏、私は自由連合を応援することに決めた。でも、投票は別だ。
(相馬正)
たまさか政見放送を見ていると、小道具として電話を使っている政党があった。それがとても上手い。
画面手前にはがっしりした感じの長机が置かれ、正面を向いて党首らしき男性が座っている。その右奥、ややはなれてもうひとつ小ぶりな机が見え、電話機が置かれている。BGMのようにして、心なごむ音楽が流れるなか、党首、しきりに後ろの電話を気にしつつ話を始めるが、どうにも堪らず電話機に駆け寄り、受話器を取る(音楽、やむ)。「もしもし。」
だいたいそんな感じで、電話を手短に済ませたあと、ふつうに政策の指針を語り、最後にまた音楽が鳴った。
しかしあの晩は、私がYさんに電話をかけていた。指示を仰いでいた。
奥の部屋で夏掛けをかぶり、結局最期を看取ることはしなかったのではなかったか。こう強ばられてしまっては、この夜中に仕方もない、ことによったら明日までは、もってくれさえすればと、宥め寝に寝入ったように、思い出せばそう思い出される。
翌日の言語学のテストを土壇場でさぼって、学生ロビーでぼんやりしていた。その朝、東長崎の駅へと向かう途中の歩道橋を通り過ぎる自分の、眼の縁を泣いて歩く、あのあしどりを反芻して、ぼんやりしていた。
(ゆうすけ)
▼世界水泳で騎馬戦が見たい.
(相馬称)
買い物がすぎるぞ俺。
(K)
8:00おっぱい
9:00うんち
9:30おふろ
10:00おっぱい
10:30ねんね
(相馬称)
無計画にひげをのばしている。
引っぱり引っぱり、1日でのばした。
のばしてしまうと元に戻せないのが厄介。そこからひげは生えるものだったかというところからも1本、のばしてしまった。
昼からは上山君と恭子ちゃんが来る。(本日、夏期休暇をあてがって休み)
「三人で交換するやつは、どれが相馬さんのなのかを考えるのが、楽しいですね」(恭子ちゃん・談)
「トリが俺だよ」と身も蓋もないことを言ってしまった。
部屋に着くなり今福龍太の本(『スポーツの汀』『フットボールの新世紀』)を紹介しはじめる私も私だが、まんまとその「面白さ」が伝わって、カップルで読書が始まってしまったときにはどうしたものかと思った。
訳し終えたばかりの「ネズミ問題」をDVDで見せる。ビデオを見たり、その他。
最後は阿佐ヶ谷の東京オプチカル(メガネ屋)に三人で行き、恭子ちゃんに似合うメガネとは?と題して素見(ひやか)した。
はやりな感じの細いものだと、俄然教育ママ風になるというのがお悩みの恭子さん。
相馬、ずばずばチョイスし、「ちゃんと考えて選んでる?」と上山君に叱られる。
(相馬麻夏)