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Oct.
2006
Yellow

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/ 21 Oct. 2006 (Sat.) 「いきなり『通し』を観る」

三軒茶屋へ。街は大道芸のフェスティバルのようなもので賑わっていたが、目的はそれではなく。
14時から18時すぎぐらいまで、『鵺/NUE』の稽古を見学させてもらう。シアタートラムの地下4階、稽古場A。稽古場に着いてから知ったのだが、まったく想定外なことにこの日は稽古のアタマから「通し」だという。いきなり「通し」を観ることになってしまった。
1時間50分ほどの舞台。演出席にいる宮沢さんを見るのも久しぶりだ。若松さんと上杉さんの「こども」ぶりが楽しい。台本も読んでいないし、これまでの稽古の過程を知らないからわからないが、若松さんはこれ、かなり自由に振る舞っているように見える。
休憩をはさんでダメ出し、ということになる予定だったが、いつしか衣裳のフィッティングがはじまってそれがだいぶかかった。フィッティングをしている地下4階のフロアは入り口がごった返しているので、地下3階に上がり、上からその様子を眺める。宮沢さんが日記に書いている「祝祭感」は、中川安奈さんがしばっていた長い髪をほどいたところで頂点に達した。宮沢さんをはじめ周りは、「あ、図に乗っている、図に乗ってる」とその様を評して口にし、楽しがっている。中川さんはさらにまた別の、劇中劇で着るワンピースがかわいらしく、それを身に纏ってしまったがためにもう「ルンルン」である。その様子を上からニカニカしながら見ていたら中川さんと目が合い、「笑ってるんでしょう?」と言って中川さんは笑った。
18時ぐらいまでフィッティングがかかり、それで食事休憩に入る。「通し」のダメ出しは休憩明けということになって、ここはひとつせっかくなので久しぶりに宮沢さんのダメ出しを聞きたかったところではあったが時間切れ、私はここで退出した。
出演者のひとり上村君は、まあこの人の場合会えばだいたいいつもそのように口にしている気もするけれど、日々いっぱいいっぱいでやってますよと言い、何か気づいたところがあったら言ってくださいと頼んでくる。なにしろもうかなりかたちになった段階の「通し」をいきなり観ただけに、ともかくすんなり「受容」してしまっていた私だが、それで、あらためて舞台の印象をたぐり寄せ、何か引っかかりとなるようなこまかい感想を言ってあげようと考える。
ひとつがテープチェンジのシーンだ。ここで上村君演じる男が新しいDVテープを丁寧に取り扱ってカメラに装着するのは、それはそれでテープにたいするフェティッシュなものを感じさせていいが、よく考えると、撮り終わったテープ(まさに「お宝映像」が収まったテープ)のほうに、もっと神経が行っていてもいいのではないか。たとえば、(観客から見えるかどうかは別として)しっかりテープのツメを折ることを忘れない、といったようなそうした意識のありようである。また、思い返してみると、男の背負っているバッグがどうにも軽いような気がし、そこに、そのときの新旧2本のテープだけではなく、それまでに撮り溜めた何本ものテープがあると感じられるかどうかというのは大事なのではないかといったようなこと。そうか、考えていてようやくわかったんだけど、男がひとり残って後発の便にしたのは、たんに若い女優が後発の便になったからという理由によるものかもしれないわけか。

(2006年10月23日 02:38)

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