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Dec.
2006
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/ 2 Dec. 2006 (Sat.) 「じつを言うと」

じつを言うと、Wiiのために立川のビックカメラに並ぶことを考えていたのだった。あっさり寝過ごした。
昨夜の会社帰り、11時すぎに確認するとあれでどのくらいになるのだろうか、頭のなかで数え直すに150〜200人ぐらいの列ができていた。会社を出る間際、「大阪梅田のヨドバシカメラでは9時の時点で1000人」というネットのニュースを見てきたばかりだったが、それに較べればやはり「(立川という)地の利」のようなものはある気がし、早朝、販売開始は7時からだが、その2時間ぐらい前に──できれば「始発で来る組」よりか一歩早く──もう一度自転車で様子を見に来るだけの甲斐はあるように窺われて、それで家で食事をし、風呂に入り、少しパソコンに向かいなどするうちにもう3時すぎで、あとの後悔のことを考えればやはりここで寝るべきではなかったのだとは言うものの、そこはそれ、目覚ましで起きられると踏んで布団に入った。
朝の光に気がつくと7時半である。一応と思ってすぐに出かけてみたが、購入の順番を待つ千人規模の列の最後尾に、「完売しました」の札を持った係の人が立っていた。しかしあの数の人たちが買えたのだとすると、「寝過ごさず、始発の時間に行っていればどうだったか」という思いは残り、それでついつい思い浮かべたのが荻窪の「タウンセブン」という駅前ビルに入っているおもちゃ屋だ。そのビルの半分は「西友」なのだが、もう半分、駅前の開発にあたってもとからあった地元の駅前商店たちがビルのなかに収められた側が「タウンセブン」で、だいぶ泥臭さを漂わせている。そのおもちゃ屋も、いまどきな商品とそうでない玩具とが半々に同居した空間を形成していて、なんとなく「穴場」といったイメージがあるというのも、以前、妻がゲームボーイミクロを買った折りに他の大型店でことごとく完売していたにもかかわらず、たまさか最後にそこを覗いたところあっさり在庫があったという経験があることが大きい。
で、いったん家に戻ったあと、ほんとうに荻窪に行ってしまったというのは、11時半に渋谷待ち合わせという別の用事があって、なまじ早起きだったためにそれまでの時間が中途半端に空いてしまったということもあるけれど、まあその、どう考えても悔し紛れの行動である。
「タウンセブン」は10時開店で、その20分ほど前に着いたが、じつに平穏なものである。ほんとうは入り口のひとつに「Wiiは予約完売の状態で本日の店頭販売はありません」という張り紙があったのだが、別の口で開店を待っていてそれには気づかなかった。とはいえこの「平穏さ」を考えるに、いずれの理由かは知らず私のような者がおよびでないのはまずまちがいないところだと知れ、それでいながらややもすると持ち上がってこざるをえない期待を抑え抑えしながら、開店だけは待つことにしてキヨスクで『ぴあ』を買い、それを丹念に読んでは時間を潰しつつ、自分が「おっちょこちょい」であった場合の恥ずかしさを思ってビルの入り口から充分に距離をとって待っていた。と、そのうちに、息子の手を引いた父親がひとり現れて、その入り口の前に一番乗りというかたちで陣取る。やや後れて、これは青年がひとりそのあとに列んだ。ビルの開く10分ほど前のことになる。このことでかえってあきらかになるのは、「こんな Wii の行列はない」ということで、離れて立っているとはいえ私もまたこのおっちょこちょいな行列の一部をなしているかと思えば恥ずかしく、いやそれよりも、この一番乗りの親子のためだけにも Wii があってほしいと私は念じていた。
『ぴあ』を買ったのはごく久しぶりだが、禍は転じて福となす。なぜ『ぴあ』だったのかといえば、渋谷での用事のあと6時に喜多見という約束があったのだけれど、そこの間もまた時間が半端なことになっていて、映画を一本、うまく挟めないかということだったが、Wii を手に入れられなかったことでその代替としての「娯楽」を求める執念は高まり、丹念に読んでいると折しも今日、渋谷の UPLINK で1時から『島ノ唄 Thousands of Islands』の上映があるとわかった。詩人・吉増剛造さんが南の島々を旅するドキュメンタリーであり、たまさかこの日、私は今福龍太・吉増剛造『アーキペラゴ──群島としての世界へ』(岩波書店)をバッグに忍ばせて出かけていた。

吉増 (略)『島ノ唄』の最後のハイライトのような場面の直前に、これもまた新しく芽生えてきている、九十六歳の里英吉さんが独力でたったいまつくりあげようとしているエレベーション、何かを伝えようとしている仕草が立ってくる場所、踊り場に似ているものの立ち現れを感じていました。その場面で、もしかしたら生涯がかけられているような英吉さんのコメントが出てくる。ハブに咬まれた畑の通路を指して、これは神が咬んだもので、それは向こう側に理があると言ったらおかしいけれども、向こう側に何かがあるということを、おそらく初めての表情で言われたでしょう。

 といった言及のあるこの本を電車で読みながら、あらためてロードショーを見逃していたことを悔やんでいた矢先の発見である。これは見ない手はない。Wiiは買い逃してみるものだ。
『島ノ唄』はじつはいま UPLINK でレイトショー(〜12/7)としても上映されていて、それを先に『ぴあ』で見つけていたが、それは毎週木曜日のみだから見に行けるかはむずかしいところだなあと思っていた。今日の上映はそれとは別の特別企画で、映画のあと詩の朗読会があり、前田英樹さんらの出るシンポジウムがあって、さらに最後には吉増さんが登場して詩の朗読を行うというものである。が、あとの予定を考えると最後までいるのは無理で、さらに喜多見に向かう前にいったん妻と落ち合って…という時間の余裕を考えると、これは映画だけ見て帰るのがちょうどいい。
と考えていたところへもってきてハプニングが起きたのは、もうあと10分ほどで映画が終わるという段に、映写していたプロジェクターが故障し、スクリーンが真っ暗になって音声だけの状態になったのだった。しかし、おかしなことを言い出すようだが、私は満足していた。場内がざわつき出すなか、スクリーンが真っ暗なら、真っ暗でもいいじゃないかと音声に耳を澄ましていると、そこへあの「里英吉さんの言葉」が聞こえてきたのだから興奮は絶頂である。やがてしばらく経って劇場の人がようやく異変に気がつき、いったん場内を明るくしたところで私はすたすたと会場をあとにした。

(2006年12月 5日 22:07)

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