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Nov.
2008
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/ 25 Nov. 2008 (Tue.) 「この冬の入口に」

クロード・レヴィ=ストロース、今福龍太『サンパウロへのサウダージ』(みすず書房)。

今福龍太『群島世界論』(岩波書店)。

佐々木中『夜戦と永遠』(以文社)。

「他者の物欲」番外編。番外編というのは、これは買ったからだ。買ったといっても妻よ安心あれ、230円のiPhone/iPod touch用アプリケーションである。「NumberKey」 NumberKey 。iPhone/iPod touchをMac用のテンキーとして使うことができる。Macとの接続はWi-Fiで行われ、Wi-Fi環境のない外出先でもMac側でネットワークを作成することにより接続が可能だ。ブラック、ホワイト、クラシック(GSキーボード?)、シルバーの四種類からスキンを選べて、好みで切り替えたり、自身のノートブックと揃えたりできるようになっている。

だから本屋になど行くものではないというのはつい買ってしまうからだ。23日、ひさびさ街の本屋に行く。今福龍太の新刊が出ているのではなかったかと見て歩くと、人文系の棚の一角に「レヴィ=ストロース生誕100年」という特設コーナーができていた。ああそうか、最近しばしば名前を目にすると思えばなるほど、そういうことだったか。「生誕100年」という言葉を前にしてこの場合、その物言いに(人ごとながらも)幾分くすぐったさを覚え、なんとも微笑を禁じ得ないというか、つまりその目出度さが特異であるのは、レヴィ=ストロースが存命であるからだ。1908年11月28日生まれであるところのレヴィ=ストロースは、満百歳の誕生日をこの円い大地のどこかで迎えつつある。ハッピー・バースデイ。これはもうね、構造主義が勝ったということでいいのではないのか、何に勝ったんだか知らないけど、ともあれ〈勝利〉なんじゃないかと、よくわからないことのひとつも言いたくなるこの冬の入口に、私はいま両手をポケットに入れ立っている。
クロード・レヴィ=ストロース、今福龍太『サンパウロへのサウダージ』(みすず書房)今福龍太『群島世界論』(岩波書店)佐々木中『夜戦と永遠』(以文社)を買う。
『サンパウロへのサウダージ』は二部構成になっていて、前半が、1996年にブラジル版が刊行された同名の写真集の翻訳である。1935年、新設のサンパウロ大学に招かれてブラジルの地に降り立った27歳のレヴィ=ストロースが、ライカを手にサンパウロの街を歩くなかでスナップに収めた都市の日常。そこにレヴィ=ストロースの短めの文章が添えられている。また、2005年のインタビュー「ブラジルから遠く離れて」もそれを補うものとして併録。そして後半に収められるのが、訳者でもある今福龍太の論考と写真からなる「時の地峡をわたって」だ。レヴィ=ストロースがサンパウロでシャッターを切ってから正しく65年後、2000年に彼の地に長期滞在した今福が一枚一枚、同じ地点から同じ方角にレンズを向け、「レヴィ=ストロースが撮った写真を再撮影する」という試みを行ったことに出発する思考の軌跡である。
ふと、レヴィ=ストロースの次の言葉に、いまさら「あっ」と思わせられる。

けれどここで強調したいのは、私のそうした省察が、サンパウロに住むという経験がなければけっして生じえないものであったという簡潔な事実である。
(「サンパウロへのサウダージ」『サンパウロへのサウダージ』 p.11)

 そうなのだな、やはりその「簡潔な事実」から出発しなければならないのだ。だから、おそらく、インタビュー「ブラジルから遠く離れて」の最後にある次の発言もまた、前掲の言葉とのセットにおいて──この民族学者のもつ重要な〈律儀さ〉の響きのなかで──耳にしなければならないのだろう。

──未来についてはいかがですか?

 その種の質問はしないでください。今の世界は、もはや私の属する世界ではありません。私の知っている、私の愛した世界は、人口二五億の世界です。現在では六〇億を数えています。これはもう私の世界ではありません。そして、九〇億の男女が住む──たとえ、私たちを慰めるためにそれが人口増加のピークであると言われたにせよ──明日の世界について、何か予言することなどとうてい不可能です……
(「ブラジルから遠く離れて」『サンパウロへのサウダージ』 p.113)

ハッピーバースデイ、ミスター、レヴィ=ストロース。

本日の参照画像
(2008年11月26日 13:11)

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