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Jul.
2009
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/ 3 Jul. 2009 (Fri.) 「『あたしちゃん、行く先を言って太田省吾全テクストより行程2』の初日を観る」

『あたしちゃん、行く先を言って太田省吾全テクストより行程2』を観る。よかった。ほんとうによかったし、そしてわたしは田嶋さんに、「恥ずかしいので(わたしのことは)あんまり書かないでください」と釘を刺された。笑顔でもって、しっかりと刺された。だからもう、田嶋さんのことはあまり書かないようにしようと思うのであり、京都に住む児玉君が同居人(以前に「地点」の舞台に出たことがあるらしい)から聞き出したさらなる田嶋さん情報のことなど、それこそきょう間近で田嶋さんとしゃべり、あーなるほどね、わかるよそれ、おれもそれに一票だなとつよく言いたくもあるし、ついてはどう児玉君このあと、うち立川だけど、寄ってく? 時間だいじょぶ? とさえ言いたいところだけれど、そこをぐっとこらえ、舞台の感想のほうにすすもうと思うのだ。
なにしろいま、急遽週末の予定をかえて明日も観ようかどうしようか悩んでいるわたしがいるのであり、だからその、また観たいのだ。わたしが「また観たい」というときはきまってそうだが、舞台上を生きる役者に「また会いたい」のである。
いちおう説明しておくと、公演タイトルにある「行程2」というのは「プレ公演の二回目」(あるいは三浦基さんが強調して用いる言い方でいけば二回目の「お試し会」)を意味している。二度のプレ公演を経て、それこそ『トーキョー/不在/ハムレット』(以下、『不在』)と同様、ほぼ一年がかりで本公演へとむかうプロジェクトが『あたしちゃん、行く先を言って』である。『不在』とすこし事情がちがうのは、『あたしちゃん、行く先を言って』では『行程1』(わたしは観ていない)と『行程2』でことなるテクストが用いられていることだ(『不在』ではひとつの戯曲に一年間つきあった)。『行程1』と『行程2』をもとに、本公演ではあらためてテクストが編み直されることになるだろうという現時点での見通しらしい。『行程1』と『行程2』はまったくことなる姿をした作品であって(だったそうだ)、そしてまた本公演も、あるいはいま観ている『行程2』とはがらりと変わった舞台になるかもしれない(というか、おそらくなるだろう)というのは、言われずとも、『不在』やその他の作品をとおしてひじょうに「よくわかる」ところのわたしである。だから、あくまで「通過点」であり「お試し会」であるところの『行程2』をそれ単体の舞台として評価されることに、あるいは当事者側にはある種のとまどいもあるかもしれないものの(プレ公演を打つというのは「地点」でははじめての試みらしい)、とはいえ、たとえば『不在』のとき最終的に、なんだかんだいって「準備公演」(四回目、最後のプレ公演で、もっともわけのわからない舞台だった)がいちばんよかったという声が一部のお客さんからは聞かれたりもしたように、まあその、「すごいプレ公演」というのは生まれうるものなのだった。
すでに書いたように今回わたしは「公開ゲネ」を観ているのだけれど、それよりも数倍よかった。いや、誤解のないように言っておくが、公開ゲネの時点で相当感動させられたのである。しかし、それから一週間を経た「いま」であるきょうは、それを上回ってぐっとよくなっていた。このさい知ったふうなくちをきかせてもらうなら、それ、「稽古」ってやつだろうな。この一週間、ものすごい量の時間が稽古に費やされたにちがいないと想像される。構成や内容の面でいえば、前半はほぼ公開ゲネから変わっていないとも言えるのだが、しかし、ぜんぜんちがうのだった。開演直後、石田大さんの「歩き」がもうまったくちがうものに見えて、それでやられてしまった。
公開ゲネのときとの大きなちがいを言葉にするなら、公開ゲネにはどこか「オムニバス」感があったのだった。全体が三つぐらいのブロックにわかれ、各ブロックごとに「うねり」のようなものを感じさせてそれはむろん感動的なのだが、それらがあくまでオムニバス形式に並置されているといった印象があって、全体をとおしての「うねり」は希薄だった。そしてきょうは、その全体をとおしての「うねり」があったのである。後半部分にかんしては構成自体もすこし変わって、そのなか、「ゲネからのとある変更」があったわけだが、そこにはほんとうに感動させられてしまった。「うねり」の頂点はむろん、安倍聡子さんがいう、「ね、あたし案内するわ。十年もガイドブック見てくらしたんだもの」(『硝子のサーカス』からのカットアップ)である。
ラスト、舞台の最前面に正面をむいて立つ六人の俳優は、〈ここからわれわれはどこへでもいける。「劇」はいま、はじまったのだ〉ということをはっきり示していた。だからおそらく、本公演ではその可能性のうちのひとつである〈どこか〉へすすもうともするのだろうが、ひとまずいま、ここに〈ゼロの演劇〉が立ち上がったのだとわたしは興奮する者であり、何よりもう一度、〈彼/彼女ら〉に会いたいのである。

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(2009年7月 4日 13:10)

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