27 Jul. 2009 (Mon.) 「本から/ミイのいた場所/タスポと暮らす/本へ」
■ひとはときとしてアマゾンの「お急ぎ便」さえもどかしく、本屋に駆け込むものである。会社帰り、新宿ルミネに入っているブックファーストへ。
- 『ニッポンの思想』(著:佐々木敦/講談社現代新書)
- 『VOL lexicon』(責任編集:白石嘉治、矢部史郎/以文社)
- 『パロール・ドネ』(著:クロード・レヴィ=ストロース/訳:中沢新一/講談社選書メチエ)
- 『ムーミン・コミックス(9) 彗星がふってくる日』(著:トーベ・ヤンソン、ラルス・ヤンソン/筑摩書房)
- 『ムーミン・コミックス(10) 春の気分』(同上)
『VOL lexicon』は、『VOL』の執筆陣によるキーワード集。『VOL』だからと大判サイズを思い浮かべながら探すとそれはわりとハンディなサイズで棚にあるから、そこのところは注意を促したい。『パロール・ドネ』は予定外。出ているのを知らなかった。
■それでまあ、まずは『ニッポンの思想』からぱらぱらと。読んでいるとどうしたって、『構造と力』とか、『雪片曲線論』とか、いろいろ読みたくなってしまうから厄介だよ。『構造と力』は大学のときに──高円寺のアパートで布団に寝ころびながら読んでいる自分が像を結び、それがたしかな記憶だとすれば入学してまもなくに読んでいることになる──、いっぽう『雪片曲線論』は高校のときに──昼下がりのJR水戸線、ボックス席に座っているから土曜日の帰りということになるが、こちらはやけにはっきりとした記憶だ──読んでいるが、中身についてはほとんど記憶のはるか彼方にしかない。「クリナメン」ぐらいしか覚えていない。
■先日の「ゴダールシンポジウム」でなされた発言でもそうだったが、小田亮さん経由でレヴィ=ストロースを学んだわれら「構造主義者」にとって、どうしてもひっかかるのは「二項対立」と「二元論」の混同である。いや、語用論的な問題にすぎないといえばそうだし、その混同はむしろ世間一般的なものだから、その「言わんとするところ」を汲み取るのはじゅうぶん可能なのだし、「言わんとするところ」でいえばまったく同意するのだけれど、それでもやはり、「二項対立」と「二元論」は異なるものである。──ということをきちんと説明するのにはまずわたし自身、小田亮『構造主義のパラドクス』(勁草書房)をもういちど読み直すところからはじめないといけない。何度でも何度でも、わたしはそこ──〈構造主義革命〉──からやり直そうと思う。
20世紀思想史の《構造主義革命》の項に確実に含まれるただ一人の思想家レヴィ=ストロース。その構造人類学の地下には、ポスト構造主義などによっては汲み尽くせぬ刺激的な批判=思考の水脈がある。本書はその水脈にまで掘りすすむための手引きである。
レヴィ=ストロースにおける合理性は、西欧近代の合理性を逃れ、彼の言う《交換》は《共同体》から外れて《交通》としての《闘争》へと連なり、その構造分析における《二項対立》は西欧近代の一なるものに統合される《二元論》に抗し、その《二項対立》における《反復》は弁証法的《媒介》に対立する……。
小田亮『構造主義のパラドクス』の帯文(ウラ)
■そうそう、しばらく前に「ミイのマグカップ」について書いたが、そこに使われているイラストの元絵を『ムーミン・コミックス(9) 彗星がふってくる日』に見つけた。表題作「彗星がふってくる日」の冒頭、彗星の衝突を予知したのだろうか大移動するニョロニョロの隊列が、ムーミンの家を通過して床を焼き焦がし、あとに溝を残していく(雷の電気をエネルギー源とするニョロニョロは身体に電気を帯びており、不用意に近づくと感電する)。
何が起ころうともつねに目の前の状況を受け入れていくムーミンママは、困惑した表情を見せつつも「ニョロニョロが焼きこがしたあとにシネラリアでも植えようか…?」と提案するが、居合わせたミイがすぐさまその溝に水を流し込み、「あたしにぴったりのプールだね!」と勝手に遊びはじめてしまう。それを受けてなお、あきらめ顔ながらも「まあいいわ…ただし水もれしないように気をつけてね」と声をかけるムーミンママに、わたしの妻などはかるい感銘さえ覚えると告白するのだったが、そう、あのマグカップのイラストでミイが遊んでいるのは、川でも池でもなく、ムーミンの家の床だったのだった。

マグカップのほうでは服の柄が描き足されていたりして若干ことなる部分もあるが、基本的に元となっているのはこのコマに描かれたミイだろう。
■きょうはほんとうに取り留めがなくて申し訳ないが、いちおう「タスポ情報、検察に提供 日本たばこ協会」のニュースにも触れておこう。
たばこ自動販売機の成人識別カード「タスポ」を発行する日本たばこ協会(東京)が、特定の個人が自販機を利用した日時や場所などの履歴情報を検察当局に任意で提供していたことが25日、関係者の話や内部資料で分かった。行方の分からなかった罰金未納者の所在地特定につながったケースもあった。
クレジットカードや携帯電話の使用履歴はこれまでも捜査当局に使われてきたが、タスポ情報の利用が明らかになるのは初めてとみられる。
刑事訴訟法に基づく照会に回答した形となっているが、タスポの利用者は通常、想定していない事態だけに、個人情報保護の観点から「どんな情報を第三者に提供するのか、本人に明らかにすべきではないか」と、疑問の声も出ている。
日本たばこ協会は、共同通信の取材に事実関係を認め、「法に基づく要請には必要に応じて渡さざるを得ない。情報提供については会員規約で同意を得ていると認識している」と説明している。
関係者の話などによると、協会は求められた個人の生年月日や住所、電話番号、カード発行日などのほか、たばこ購入の日時や利用した自販機の所在地を一覧表にして提供。免許証など顔写真付き身分証明書の写しが添付された申込書のコピーを渡した事例もあった。
(cache) タスポ情報、検察に提供 日本たばこ協会 - 47NEWS(よんななニュース)
記事中にもあるように、捜査当局に使用履歴を「提供する」段階の話でいえば、クレジットカードでもSuicaでも同様のことはきっとあるわけで、「個人情報の保護に関する法律」においても、「刑事訴訟法に基づく照会」は本人の同意なしに第三者へ個人情報を提供してよい/しなければならない「例外」とされているところのものであるのだが、じゃあ、それ以前に、その使用履歴を「収集する」段階の話ではどうなのかということがひとつあるだろう。
記事では、「情報提供については会員規約で同意を得ていると認識している」という日本たばこ協会側の説明を紹介しているが、じっさいにタスポの会員規約を読めばわかるとおり、そこ(第23条1項)で「収集及び利用」の同意を得ている「個人情報」は以下のものだけである(条文中の「TIOJ」は「社団法人日本たばこ協会」のこと)。
(1) 氏名、生年月日、住所、電話番号、等会員本人が申込時および申込後に届け出た事項
(2) 第5条(会員申込手続き)に定める手続きにおいて、会員がTIOJに提出した本人確認書類の写しおよび公共料金領収書の写しに記載される情報のうち、システムの運営・管理に必要とされる事項
(3) 退会に伴う電子マネーの返金手続きに必要となる口座番号、口座名等の事項およびその他ピデルサービスの運営に必要なる事項
また、これ以外に説明されているタスポの目的・機能は「成人識別」のみであり、「購入日時や利用自販機の記録」についてはまったく言及がないといってよい。
「個人情報の保護に関する法律」では個人情報を不法に収集することを規制しているが、そのさいの「不法」には、「収集手段」が不法である場合(たとえば盗聴など)と、「収集目的」が不法である場合(本人の同意を得ず、利用目的の達成に必要な範囲を超えて収集すること)とがある。今回のケースでは後者のほうに該当するかたちでその使用履歴を「不法」な記録とみなすことができるかもしれず、もっていき方によっては、したがって「裁判の証拠資料にはできない」と主張することが可能かもしれないのだった(以上、スラッシュドット・ジャパンの記事での議論を参照)。
いやまあ、監視社会に抗する手段として個人情報保護法を盾にするというのがそもそもどうなのかということはあるけれども、しかしそれも「相手の作ったルールの裏をかくこと」のひとつではあるかもしれない。
■最後に、今後出版予定の気になる本を。
- 『ナラティヴの権利』(著:ホミ・バーバ/訳:磯前順一、ほか/みすず書房/2009年8月21日発行予定)
- 『書くこと、ロラン・バルトについて』(著:スーザン・ソンタグ/訳:富山太佳夫/みすず書房/2009年9月10日発行予定)
■本日の電力自給率(7月27日):80.7%
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