12
Dec.
2011
Yellow

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/ 4 Dec. 2011 (Sun.) 「馬生やばい」

これが石原君の落とした、「ピュレグミ」(カンロ)である。

そしていま、わたしは悩むのだった。どうしよっかなー。やっぱりこれ買うかなー。

こっちかなー。

東銀座は「東劇」へ。「スクリーンで観る高座 シネマ落語『落語研究会 昭和の名人 参』」を石原(裕也)君と観る。

  1. 桂吉朝「不動坊」('03) 37分
  2. 五代目 三遊亭圓楽「助六伝」('82) 39分
  3. 三代目 古今亭志ん朝「三方一両損」('88) 24分
  4. 十代目 金原亭馬生「鰍沢」('75) 34分

どうやらタイムテーブルを勘違いしていたようで、入るともう吉朝「不動坊」の途中だった。ちなみにこれも行ってから知ったが、東劇ではこのプログラムにかんして一日入れ替えなしで観ることができ、途中から入場して、たとえば圓楽から観はじめた場合にはそのままつぎの回の吉朝まで観て帰ることが可能である。とはいうものの、まあね、やっぱり会の構成としてはもとの順番で観るのがベストだろう。
とにかく終わるやいなや、すごいすごいと石原君がうるさかったのが馬生の「鰍沢」だ。「いやァ、すごいもの観ちゃいましたね」とまず場内の照明がもどってから声を漏らした石原君は、その後も「やばいっすね、馬生。馬生やばい」と何度も繰り返す。噺の途中、(休憩中に一粒もらったりしていたこともあってなんとなくそれだろうと察せられたところの)レモン味のグミのパッケージを石原君が床に落とした音はわたしの耳にも届いたが、本人の弁では、噺に引き込まれるうちについ、持っていることを忘れたという。
「鰍沢」は三遊亭圓朝作の三題噺(諸説あるが一般に「鉄砲」「玉子酒」「毒消しの護符」の三題)で、圓朝作のなかでも傑作と評されるものだが、さりとて「話がよくできている」というのとは印象がことなり、ストーリーだけを追えばそこにさのみ魅力があるわけでも、さして結構がととのっているわけでもない、ただただ話芸者の力量だけが噺の緊張を持続し、持続されれば、あらためて物語そのものの「凄さ」が立ち現れてくるというていのものである(はっきりした出典は知らないが、「鰍沢」を榎本滋民さんは「話芸家の博士論文」と言ったという)。かの名人・4代目橘家圓喬(「親父から見てどういうのが名人か」と志ん朝に尋ねられた志ん生が、「圓喬というひとは名人だった」と答えたというあの圓喬。志ん生が22歳のときに没している)によるその口演はもはや伝説と化していて、夏の暑い盛り、団扇や扇子が波打つ寄席で圓喬が真冬の噺である「鰍沢」をかけると、やがてその寒さの描写に釣り込まれて団扇や扇子の動きが止むばかりか、羽織を脱いでいた者がまた着直したというエピソードは米朝のマクラでおなじみだ。

 これは歌川広重の「木曽路之山川」だから、鰍沢ではないが、おそらく鰍沢もまたこのようなイメージをまとう土地だったろうと想像され、つまりまあ「鰍沢」は、(「物語」ではなく)この「画」を「しゃべれ」と演者に要求するような噺でもある。
吉朝「不動坊」。2005年に50歳で早世して今年七回忌を迎えた吉朝の2003年の口演は、ほんと、それこそ「スクリーンで再会」といった感が漂う。
圓楽「助六伝」。じつを言って当方、圓楽をちゃんと聞くのはこれがたぶんはじめて。さすがに入れ歯で苦労する前の映像だろう 82年のそれは、なるほどね、こうだったのねと腑に落ちるような一席。ラストに至るまでまったくなんの救いもないハナシだというのに、そうして最後、地の語りが時空を超えるや途端にどこか救われたような光の差すのを感じてしまう、そんな〈カタリ〉の不可思議も味わえる一品。
志ん朝「三方一両損」はもちろんわたしのお目当て。「おおかァ(多くは)食わねえ、たった越前(一膳)」という、このまったくもって取って付けたようなサゲを堂々と演ってみごとに祝祭をしめくくる(ってまあ、祝祭にまでもっていける技量がまずすごいわけですけど)、どうでえ見たかい、これが古今亭よの 24分間。
終わってちかくの「ルノアール」に移動し、石原君とひとしきり落語談義。強烈な出会いをしてしまった馬生に、とにかくもう石原君はご執心である。後半は MacBook Pro の買い物相談。「ほしくなってしまった」と、『トータル・リビング』の公演の直後から相談を持ちかけられていたもので、Apple Online Store の画面を見ながらいろいろ説明というのか、アドバイスというのか、指示というのか、出していく。まあ、遠からず買うことになるようである。
「こんど三人でご飯でも行きましょうよ」と、近藤(久志)君が言っていたというのを石原君づたいに聞いて、それで近藤君にダイレクトメッセージを送ると、夜になって返信があり、それでまあ、年内にいっぺん、三人で会うことになりそうな雲行きである。「映像オペ担当になった演出助手三代の会」。近藤君曰く、会の議題は「スッチーのカノジョをもつテレビマン」についてだ。そんなやつが、来春にはどこぞに誕生するらしいのである。

きょうのひとこと

ナマで来やがったな(3代目古今亭志ん朝「三方一両損」)

本日(4日)の電力自給率:44.8%(発電量:13.0kWh/消費量:29.0kWh)

本日の参照画像
(2011年12月 8日 17:18)

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