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Feb.
2012
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/ 5 Feb. 2012 (Sun.) 「池袋演芸場二月上席へ」

池袋演芸場二月上席。相当ひさしぶりの寄席の定席。昼・夜とも立ち見の出る盛況で(といっても池袋はそもそもの座席数が100席弱で、他に比べて少ないんだけど)、すでに前座が出るころにはほぼ席が埋まっていた。うしろのほうの席で、と思っていた目論見は崩れ、最前列、いちばん下手の端に座る。けっきょくその席を動かずに、昼の部の前座から夜の部のトリまで、まるまる観た。

〈昼の部〉
十徳 柳家いっぽん
たらちね 古今亭志ん公
奇術 ダーク広和
鹿政談 蜃気楼龍玉
錦明竹 古今亭菊志ん
漫談 林家ペー
真田小僧 桃月庵白酒
替り目 古今亭志ん弥
太神楽 鏡味仙三郎
時そば 三遊亭歌武蔵
(仲入り)
千早振る 橘家文左衛門
出来心 古今亭志ん橋
三味線漫談 三遊亭小円歌
笠碁 隅田川馬石

〈夜の部〉
子ほめ 柳家おじさん
平林 桂才紫
羽織の遊び 柳亭左龍
漫才 ホンキートンク
長屋の花見 橘家仲蔵
宮戸川 柳家花緑
俗曲 柳家小菊
短命 柳家権太楼
(仲入り)
粗忽長屋 林家たい平
鮑のし 古今亭菊六
紙切り 林家正楽
幾代餅 古今亭志ん輔

「たらちね」志ん公。そうか、志ん公の与太郎は「鼻へ抜く」のかな。与太郎噺ではないが、一瞬だけそれが出た。〈奇術〉ダーク広和。イトコに似てる。って何だその感想は。「鹿政談」龍玉。なるほど聞き心地に師匠(五街道雲助)に似たものを感じる。〈漫談〉ぺー。落語協会が掲載するプロフィールによれば 70歳(1941年生まれ)だ。その年齢を生々しく感じさせて一瞬どきっとさせられた声は、しかしどうやら風邪気味ってこともあったらしい。「真田小僧」白酒。生で聞くのははじめて(「はたご」か「喜助」時代に聞いている気がするがさすがに内容は記憶にない)。で、そんな感想もないもんだが、マクラのときの声と息遣いがまるきり〈織田裕二をやる山本高広〉だってことにきょう思い至る。「千早振る」文左衛門。自由。「こないだまで鈴本(演芸場)でよそ行きの落語をやらされてたから」。〈太神楽〉鏡味仙三郎。いつだったか、ヒザがわりの翁家和楽・小楽のあとに上がった志ん朝がマクラで、「こういう分野にはまだまだ〈名人〉というものが出てきますよ」と言った、その太神楽の妙技。傘の上で鞠、升、金輪を回したあと、「きょうは調子がいいのでもうひとつ、茶碗を」と言ったところで「待ってました」の声がかかる。「出来心」志ん橋。いいなあ。声量にやや衰えは見えるものの、その太い声がはっきりと落語の力を信じている。「親分のめえですが」。〈三味線漫談〉小円歌。かつての大看板たちの出囃子──文楽=野崎、志ん朝=老松、志ん生=一丁入り、三平=祭囃子──を披露。まさかと思ったが生演奏の「老松」で泣きそうになる。まだだめなのだなあ。「笠碁」馬石。マクラで囲碁の話をはじめたからひょっとして「柳田格之進」か、あるいは「笠碁」か、と思っていると「笠碁」。「笠碁」となると、やはり大師匠(師匠・五街道雲助の師匠である先代金原亭馬生)のそれを片側に浮かべつつ聞くことになる。サゲのところ、「それ、さすがに視界に入るだろう」という例の問題(従来のそのサゲ自体がもつ不自然さ)がこちらの意識にのぼった。馬石の意識にものぼっていたろうか。馬生の映像を見てるぶんには気にならないんだけどなあ、なんでだろう。いきおい?
「宮戸川」花緑。これが意外と好印象。「短命」権太楼。けっきょく、この日どれが印象に残ったかってことで言うと、やはりこれになるのかなあ。かなり完璧な「短命」。「鮑のし」菊六。聞いている途中ではじめて、「3.11以降の鮑のし」という問題に思い至る。口上を教わって間違うというパターンのなかに、「やがて長屋からツナギが参ります」「やがて長屋からツナミが参ります」「ツナミじゃあない、ツナギ」という(志ん生起源の?)クスグリがあるのだが、菊六はそれをやらず、言い間違いパターンでないギャグに組み替えていた。あれ? そういえばそこの言い間違い、志ん朝は「ウナギ」だっけ?(「居残り佐平次」とごっちゃになってるだけ?)〈紙切り〉正楽。ハサミ試しで「相合傘」、注文に応えて「五代目小さん」「龍が千頭」「澤穂希」「バーテンダー」を切る。さすがライブ、「五代目小さん」のお題では、切るあいだのBGMに下座が小さんの出囃子「序の舞」を弾く。「幾代餅」志ん輔。わたしの個人的な落語受容史のなかで、いちばん毀誉褒貶のはげしいのがこのひとかもしれない。2001年の日記ではかなりべた褒めしてるし、2008年の日記ではぼろくそに書いていて、ほんと、身勝手このうえない。申し訳ないかぎりだ。けっきょくそれ、「ファン」なんじゃないかとも思う。で、きょう。あいかわらずクサイっちゃクサく、「幾代餅」ってそういう噺か? と思わないでもないが、でもその、そんな、言うほど(言ってるのはわたしだが)わるくもないのだった。志ん輔に変化が起きたのか、わたしがまた変わったのか、はたして……

きょうのひとこと

捨てちゃえそんなもの!(10代目金原亭馬生「笠碁」)

本日(5日)の電力自給率:27.2%(発電量:10.8kWh/消費量:39.7kWh)

(2012年2月 7日 17:28)

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