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Feb.
2014
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/ 28 Feb. 2014 (Fri.) 「はしるおれ、まにあうおれ」

古井由吉『鐘の渡り』(新潮社)

13:22
無やる気。あったかい。

と、Day Oneのメモにはある。どうやらこのとき、やる気が皆無だったらしい。そして、あたたかかった。
けれどわたしはがんばった。働いたさ。夜になり、わたしはつぶやく。

20:02
ねむいんだなこれはたぶん。

まったくだめなひとのようだが、それはそれ、今日は古井由吉の新刊『鐘の渡り』 の発売日だ。このツイートのあとに会社を出、池袋へ。21時からシネマ・ロサで上映される『ハロー、スーパーノヴァ』にかけつけるその前に、どこかで『鐘の渡り』を手に入れようと「池袋 西口 本屋」で検索するが、どうも「西口」に期待をかけたわたしがいけなかった1]。「西口ならここへ来い、どーんと来い」というところがうまく見つからず、たとえば教えられたうちのひとつ、「東武ブックス 池袋ホープ店」は駅地下街のなかの「ホープセンター」と呼ばれる一角に店をかまえるが、一歩々々近づくごと、ぜったいちがうな、目指すべきはここじゃないなという予感を抱かせられていくさきにやっと姿を現した「東武ブックス 池袋ホープ店」には、ほんとうに何もなかった。

1:「西口」に期待をかけたわたしがいけなかった

というのはこのときの、気がせくあまりに無駄足ばかりを重ねたためのわたしの心情だが、いま、落ち着いて検索するに、「旭屋書店」(東武百貨店 7F)に行けばよかったらしいことがすぐに知れる。

あきらめて『ハロー、スーパーノヴァ』へ。「経済を語る女」の橋本(和加子)さんがよかったな。走るシーンも含めて。
上映後には出演者らの舞台挨拶があったが、それは失礼してすぐ外へ。〈西口の誤算〉もあっていつしか『鐘の渡り』を手に入れないことにはちょっとおさまらないことになっているわたしは、ここはひとつ確実なところを選んで新宿のブックファーストにむかう。23時閉店だ。

22:52
はしるおれ。
22:56
まにあうおれ。

というツイートはそういう話なのだったが、で、無事『鐘の渡り』と、あと、『東京かわら版』、『 MacPeople』、『 Mac Fan』のそれぞれの 4月号を買った。

 窓に向かって、両の掌に顎を深く沈めている。頰杖をついたかたちに見えるが、坐っているのではなくて立っているとある。

 連作短篇集ということになるのだろう『鐘の渡り』の冒頭作、「窓の内」はこう書き出されて、帰途、中央線車中にあるわたしの頭をがつんと打つ。これが仮に、

 窓に向かって、両の掌に顎を深く沈めている。頰杖をついたかたちに見えるが、坐っているのではなくて立っている。

とあるならたんなる描写だし、たんなる描写なのだろうと油断して読む矢先、「とある」の一語が添えられることでいきなり、語り手の意識にあるらしいもうひとつのテクストの層が浮かび上がる。「それで?」というほどのことかもしれないが、これで早くもどこへ連れていかれるのか皆目見当がつかなくなったわたしは、興奮のあまり先を読み進められず、「ああ」と息を吐いて本を閉じた。

Walked 9.3km • 13,661 steps • 2hr 21min • 447kcal.
Ran 0.4km • 532steps • 3min • 22kcal.
Cycled 0.9km • 4min • 19kcal.
本日の参照画像
(2014年3月12日 22:52)

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/ 27 Feb. 2014 (Thu.) 「大乱闘」

『大乱闘──テーオ・エーレット撮影によるプロレスとエロチックレスリング』(タッシェン・フォトシリーズ)

ロラン・バルト著作集 3『現代社会の神話』(みすず書房)

朝、でかい本が届く。思っていた以上にでかかった。なにせ、立つし。
18日付の「謎ですよ、と大場さんはいう」を書くにあたってフレッド・ブラッシーのことを確認しようと、まずはウィキペディアにあたったのだけれど、そこにはこういう記述があった。

前歯は差し歯だったと言われているが、この前歯をヤスリで研ぐパフォーマンスを見せたうえで、序盤から終盤まで噛みつき口撃で対戦相手を「血まみれ」にする悪役に徹した。ヤスリは、実のところ、爪を研ぐための目の細かいヤスリで、歯を削る真似をしただけだった(しかもこのパフォーマンスは力道山の指示による日本限定の物だったらしい)。〔太字強調は引用者〕
フレッド・ブラッシー - Wikipedia、2014年1月31日 (金) 09:45 UTCの版

で、こないだの日記にひっぱってきたブラッシーの写真はこちらのファンページ(?)にあったものだが、そのクレジットにはこうあるのだ。

Photo credit: Exquisite Mayhem: The Spectacular and Erotic World of Wrestling by Theo Ehret (Tashchen Publishing)

 この『 Exquisite Mayhem』(の日本語版である『大乱闘』)というのが今朝届いた写真集なのだが、撮影者であるテーオ・エーレットは 60年代なかばから 80年代初期にかけてロサンゼルスのオリンピック・オーディトリアムに雇われ、ボクシングやプロレスの写真を多く撮った人物らしい( 2012年に亡くなった彼の追悼記事「 Theo Ehret, 1920-2012」がここにある)
わたしがネットで拾った「前歯をヤスリで研ぐ」ブラッシーの一枚も彼の仕事のひとつであり、ということは、少なくともテーオ・エーレットのカメラを通じてそのパフォーマンスはあちらのファンにも多少は流通したし、リング上のパフォーマンスを撮ったものではないものの、ブロマイド的な写真撮影にあたってはあちらでもそのイメージを用いたことがあったということになって、「日本限定の物」とまで呼ぶのはちょっと事情がことなるのではないか──という、「で?」というようなことを考えたわたしは、『 Exquisite Mayhem』への興味も次第にそそられるうちに、ついアマゾンでその古本を注文してしまっていた。
本棚に収まりきっていない本の処理がちっとも済まないまま、またぞろでかい本が届いたことに呆れている妻は「あ、誰かへのプレゼント?」としきりにいい、それが家にとどまりつづけずに誰かの手へそっくり渡ることを願ってやまないが、これなあ、誰にあげるとよろこんでくれるかなあ。いや、いい写真集なんですけどね。でかいしなあ、重いからなあ。
ところで『 Exquisite Mayhem』のことを事前に調べていてびっくりしたのは、「著者 ロラン・バルト」としている情報があるからで( Google ブックスの書誌情報とか)、何だ? と思ったら、「プロレスの世界」と題されたバルトのエッセイがなかに収録されているのだった。むろん 2001年刊行の『 Exquisite Mayhem』にバルトが寄稿するわけもなく、これは、日本語版では独自に訳出したようで訳文はことなるものの、ロラン・バルト著作集 3『現代社会の神話』に「プロレスする世界」として収められているところのそれである(初出は『エスプリ』誌 1952年10月号の記事)
で、さらにつなげるなら、このバルトのエッセイに〈過激なプロレス〉の立場から批判的に応答したのが、村松友視『私、プロレスの味方です』( 1980年)の「ロラン・バルトよ、さようなら」という文章だ。──と、そうして挙げていく本がいちいち本棚にあって、すぐさま原典を確認できるのはありがたいかぎりだけれど、そんなだから本は本棚に収まりきらないのだった。

 プロレスの醍醐味は、それが誇張されたショーであることだ。ここには、古代演劇にあったにちがいないのと同じ大げささがある。そして、実際、プロレスは屋外のショーである。というのは、円形競技場やアリーナに、その本来の意味を与えているのは(むしろしゃれた場面に相応しいロマンチックな意味を持つ)空ではなく、真下に向けて降り注ぐ、あふれんばかりの光の洪水という特質だからである。最もむさくるしいパリのホールで闘ったとしても、プロレスには、ギリシア劇や闘牛のような太陽のもとでの大スペクタクルに通ずるものがある。つまり、どちらも影のない光は、ありあまる感情を生み出しているのだ。
ロラン・バルト「プロレスの世界」、訳文は『大乱闘』のもの

Walked 3.2km • 4,656 steps • 46min • 155kcal.
Cycled 1.5km • 7min • 33kcal.
本日の参照画像
(2014年3月 7日 12:51)

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/ 26 Feb. 2014 (Wed.) 「ポスター / 『3人、』」

こちらがシネマ・ロサのロビーに貼り出されたときのそのポスター。山村(麻由美)さんの Instagramから拝借。暗さもあるが、こうした距離で見ると右下の「宮沢章夫」の名前がほとんど読めないなあと気づく。そこだけ、本番印刷時には白ヌキに修正する。

そして同じものだが、後日上村(聡)君によって運ばれ、稽古場に貼られたらしいそれである。

ゆうべ注文した B全のポスター 1枚を昼ごろに店頭でピックアップ。それを持って夜は池袋シネマ・ロサへ。今野(裕一郎)君の監督作品をレイトショーで特集上映しているシネマ・ロサでは今夜、ドキュメンタリー作品『3人、』の上映があり、折りよくアフタートークゲストとして招かれている宮沢(章夫)さんも来ているから、この機を捉えてポスターの確認をしてもらおうということがまずあった。いや、なんだかんだいってまだ暮れの平野甲賀展の影響下にあるわたしとしては、もちろんほんとはこの試し刷りの 1枚をたずさえて稽古場に行きたいところなわけで、なぜといってそりゃつまり平野さんの以下のような発言への憧れ以外のなにものでもないのだけど、稽古日程とわたしのスケジュールとの折り合いがなかなかあれなこともあって、まずは宮沢さんに。

客を集めるためだったら、チラシを配るほうがよっぽど効果がある。それでもポスターをつくるのは、見にきてくれる客に向けてというより、じつはここだけの話、その芝居に関わる役者や演出家、裏方に向けてなんです。まず劇団の内部に向けて、「今回はこんな芝居なんだ」という僕の考えをかたちにして見せたかった。
 出来上がったポスターを稽古場に持っていって壁に貼ると、みんながびっくりして、稽古場の気分が、いっきに盛り上がる。ようするに、ポスターは劇団の旗なんです。応援団の旗みたいなものでもあるし、大漁旗でもある、それにしちゃ客の入りは、いまいちだったがね(笑)。
平野甲賀『僕の描き文字』(みすず書房) p.233- 234

 で、開場前のロビーでポスターをひろげて、宮沢さんの即 OKをもらう。そののちポスターは、劇場のかたのご好意で急遽お借りできた専用パネルに入れられ、ロビーの一角で『ヒネミの商人』のチケット即売を行うその背後の壁に貼り出されてさっそく日の目を見た。
映画『3人、』は、南波([佐藤]典子)さんの出産とその前後の時間を記録したドキュメンタリーだ。とてもよかった。感想についてはすでにいろんなひとがそれぞれの言葉で書いていて、たとえばツイッターでのおもだったものなら『3人、』のツイッターアカウントである @iithreeiii1]がリツイートのかたちでまとめているので、ぜひそのタイムラインを参照してもらいたい。

1:@iithreeiii

説明の必要もないのかもしれないが、しかしこの「 iithreeiii」は、洒落ていていいアカウント名だと思う。「 three」をはさんだ前後で、ひとのかたち=「 i」が 2人から 3人にふえている、というものなのだろう。「ぜんっぜんちがうよ」と言われたらどうしようかとも思うが、まあ、たぶんそういうことじゃないかと思う。そしてまた、ツイッターのデフォルトアイコンであるタマゴがこれほど似合うアカウントもないのではないか。

 それらに加えてわたしが何かうすっぺらいことを書くとするなら、ひとつには『3人、』のタイトルにある、この「、」はいったい何なのかといった切り口があるかと思うが、ただ、それについてわたしは何ひとつ考えがないので、それもやはり考えのあるひとに書いていただきたい。

@HRAK_GM: →登場するご家族や写り込んだ人の様子などがいちいちおもしろい。なかでも冒頭の宅配ピザのチーズの会話はあそこを切らずに長々と使ったことに声を上げて笑ってしまった。まったくどうでもいい話こそがほんとに素敵なのだ。白く輝いて部屋に膨らむカーテンと同様に。
2014年1月12日 18:30

 ここに言及される「冒頭の宅配ピザのチーズの会話」が、同時に「うまいなあ」とも思うのは、話題の中心となっているそのピザがそもそも、このときの客人である今野君へのいわば「もてなし」として注文されたものであるからで、カメラの持ち手である今野君の存在と、被写体と今野君との関係性とが、やはり音もなく膨らむ白いカーテンのごとく、その冒頭において静かに刻印されてもいるからだ。
ともあれ、地方上映にむけても動き出しているらしい『3人、』は、ぜひ多くのひとに観てもらいたいところの作品である。

Walked 5.8km • 7,311 steps • 1hr 13min • 278kcal.
Cycled 1km • 3min • 22kcal.
本日の参照画像
(2014年3月 6日 03:38)

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/ 25 Feb. 2014 (Tue.) 「かつてないおいしさ」

y/d。

ゆうべは会社泊。泊まって進んだ仕事もあれば、さほど進まなかった作業もあり。
夜、ルアプルのミーティング。わたしがうっかりしていたがために、みんなに麹町までご足労願ってしまった。申し訳ない。会社ちかくの喫茶店でしばし打ち合わせ。終わってまた会社にもどる。
夜遅くに、『ヒネミの商人』のポスターの入稿を行う。試し刷りとして 1枚だけ注文。ポスターは B全( B1)サイズで、劇場に掲示する目的でごく少部数刷る予定のものだ。

22:52
どーなるかなー。

というのはその入稿後のツイート。とにかく「でかい」ということがウキウキながら、出来はその大きさに刷られてみないとちょっとわからない。
話は飛んで猫のカリカリのことだが、常用食である「 y/d」──「甲状腺機能亢進症の食事療法に」とある療法食で、そもそもは長老ロビンのためのこれなのだが、おのおのにおのおののカリカリを与えるということが不可能なためにあとの二匹もろともこれが常用食になっている──が、なんと「改良! かつてないおいしさ!」であるという。「またまたァ、そんなこと言っちゃって」というくらいに受け取っていたが、どうやらほんとにうまいらしい。もうずーっと「 y/d」一本槍なので、単純に味が変わったというそれだけのことがたまらないのかもしれないものの、ここのところ、催促の熱心さがちがっている三匹(とりわけピー)である。

24:02
がんばれザコパロバ。

きのう書いたクララ・ザコパロバ選手はもう早くもつぎの大会に出ている。ブラジル・テニス・カップ。1回戦が深夜 0時ちかくからあり、ライブスコア観戦。6-3, 6-3で勝った。

Walked 2.7km • 3,965 steps • 40min • 130kcal.
Cycled 1.1km • 5min • 25kcal.
本日の参照画像
(2014年3月 3日 22:50)

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/ 24 Feb. 2014 (Mon.) 「初優勝」

表彰式後、トロフィーをかかげる奈良くるみ選手。うしろの観客席には空きが目立つが、屋根があって日陰になっているところが映ると、そこにはごそっといたりする。さらにこのあと、ナダル登場の男子決勝ではすっかり満席になっていた。

まずは妻からの訂正事項。浅田真央選手のフリー演技は見ていた、とのこと。

(見てると失敗する、という自前の経験則から)わたしは見ないほうがいい」と妻はもっぱら目を伏せるので、見届け役はわたしに回ってくる。
2014年2月22日付「早稲田へ / モリ / これが浅田真央です」

というこないだの記述にたいする訂正。たしかにそうして中継に臨んでいたのだが、そうやったところでのショートのあの結果だったから、もう関係がないのだと覚悟をきめ、フリーは生を見ていたとのことである。あと、どうやら相馬があまり風呂に入ってないらしいとも読める「風呂とインカム」については、なんでそんなことを書くのかとコメントをいただいた。
未明。ソチは閉会式、リオは決勝。今日もソチをテレビで、リオを iPhoneで見る。
リオ・オープンの女子シングルス決勝──クララ・ザコパロバ v. 奈良くるみ──は 2時ごろから。相手のザコパロバは世界ランク 35位で今大会の第1シードだ(奈良は 62位、第5シード)。とはいえザコパロバも本調子でない様子で(いや、知らないけど「本調子」を)、1セット目はいったん 0-5までいく展開。いつになく奈良が安定のキープをつづけ、相手のサービスゲームをもつれながらも連続ブレイク。第6ゲームでは奈良にセットポイントが 3度来て、こりゃベーグルか( 6-0のスコアでセットを取ることを「ベーグルを焼く」と言うのだそうだ)とも思われたものの、そこは取り切れずに 1-5。第7ゲームのサービング・フォー・ザ・セットも 40-0までいきつつ、追いつかれ、逆にブレイクポイントを握られるまでいっての、1-6セットアップ。
ところでこの大会ではオンコート・コーチングが認められているらしく、セット間休憩のベンチには原田夏希コーチがやってきてアドバイスをおこなうのだが、そのベンチ付近に中継用の集音マイクがあるためにふたりの会話がまる聞こえだ。「最後のあれはどうした」「緊張です」「はあ!?」「キン・チョーですっ」「そんなのまだ早い!」といったいっそほほえましい口喧嘩も聞こえてくる。
第2セットは一転ブレイク合戦になり、どうにか持ち直したらしいザコパロバが 6-4で取る。で、ファイナルセットもブレイク合戦の体ではじまるが、3ゲーム目から奈良が連取、けっきょく 1-6でマッチ、つまり優勝。きまった瞬間、奈良はラケットを放り出して拳をにぎった。
THE TENNIS DAILYの報じるところによるとザコパロバは(本人はそれを言い訳にはしていないものの)喘息の発作に苦しんでいたらしい。途中で一度泣き出してしまったシーンも手伝ってか iPhoneの画面からはもっと若いような印象を受けていたが 32歳で(ちょうどこの 2月24日が誕生日)、もう長いことトップ100位内(近年は 50位内)をキープする中堅選手だというザコパロバは、キャリアで 2度のツアー優勝をいずれも 2005年に飾って以降、今回を含めじつに 12回決勝の舞台にあがり、すべて準優勝なのだという。そうなのかあ。こりゃちょっと、ザコパロバのことも気になるというか、つまりその、かわいいよね、ザコパロバ。がんばっていただきたい。
さて、くるみちゃんは今日付のランキングで一気に上げて 48位(準優勝のザコパロバも上げて 32位)。つぎは 3月5日からの BNPパリバ・オープン(カリフォルニア)かな、たぶん。

Walked 3.3km • 5,217 steps • 54min • 160kcal.
Cycled 1km • 5min • 23kcal.
本日の参照画像
(2014年3月 1日 15:35)

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/ 22 Feb. 2014 (Sat.) 「風呂とインカム」

点けっぱなしだったテレビでは「ごちそうさん」がはじまるところだったから 8時ごろの起床か。その後、テレビではカーリング男子決勝の録画、カナダ v. イギリス。イギリスチームは、要はスコットランドチームだとのこと。
カーリング解説の敦賀信人さんは、「このようにカーリングの試合のなかで時間をかけるときというのは、チャンスでもあり、ピンチでもある、ということなんですね」というコメントがたいへんに好きなようで、ほぼ毎試合どこかのポイントで言っているように思うが、これがいよいよ今日は、スネークマンショーのコントの、「いいものもある、わるいものもある」の調子に聞こえて笑ってしまった。
おととしあたりから時折通い、また妻もたまに行っている駅前のマッサージ治療院では、スタッフ間のやりとりにインカムを用いている。今年の年初からよりフロア面積の広いビルに移転し、人手も増やしたようなので以前ほどインカムの会話も気にならなくなったものの、とはいえ施術の合間のちかい距離で、気持ち弱められた声をマイクに充てて他のスタッフに指示を出したりするから、そうなればだいたいは聞こえるのが道理である。以前の、みるみる手狭に感じられるようになっていったフロアで、要は詰め込み過ぎな予約客のやりくりをしていた──というかしきれていなかった──ときなどは指示も頻繁だったから、もういっそふつうの声量でやってくれというほどに微妙な道具になっていたところのインカムである。それで、話は変わるようだがわたしは風呂が面倒な人間だ。とくに冬場は油断しがちで、基本は一日おきのペースになるのだが、たまに(世間体を考えてここは「たまに」ということにしておきたい)それ以上の期間身体を洗わないでいることもあり、そんななか、翌朝にマッサージの予約を入れてあるという場合の懸念というのが、そのインカムである。ひょっとして施術中、インカムのマイクに向け「相馬さんくさい」と静かに口にされたらどうするかという問題だ。それでいったいどうしたらいいのか、当惑するのはむしろ受けたスタッフかもしれず、「相馬さんくさい?」と思わず知らず聞き返す者が出る。うまく聞き取れなかった者もいて「すいませんもう一度お願いします」と別室から声を潜めれば、わたしの担当はもう一度、一層わたしに憚った声量で噛んで含めるように言うのだ。「相馬さんが、くさい」。そうなったらたいへんだと妻は言い、だから今晩風呂に入っておけとわたしを諭す。
ルミネに入っているムーミンショップで ARABIA社製マグカップの 2013冬季モデルを、同じく本屋で『ムーミン・コミックス』の 13、14巻を買う。『ムーミン・コミックス』はこれで全巻が揃った。
深夜から未明にはフィギュアスケートのエキシビション。テレビにはエキシビションを点けておいて、手元の iPhoneアプリ( Tennis TV)で奈良くるみ v. ナターシャ・ブルネットの動画中継を確認する。そちらはリオ・オープンの女子シングルス準決勝。6-4, 3-6, 6-2でくるみちゃんが勝ち、WTAツアーで初の決勝進出をはたした。
フィギュアについていえば、いま妻が注目するのは町田樹選手だ。インタビューでの受け答えにおける、インタビュアーの質問をちっとも聞いていない(ぜんぜん質問に答えていない)感じなどがたまらないと大笑いしている。

Walked 2.5km • 3,184 steps • 34min • 119kcal.
Cycled 0.7km • 2min • 15kcal.
(2014年2月27日 13:29)

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/ 20 Feb. 2014 (Thu.) 「早稲田へ / モリ / これが浅田真央です」

小川さやか『都市を生きぬくための狡知──タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(世界思想社)

『スペクテイター vol.27』、特集「小商い」のなかに「小川さやか アフリカ・タンザニア商人たちに学ぶ『路上で生き抜く知恵』」という記事がある。茂木さんが興奮していたのはたぶんこれのことだろう。

@majuzub: これは面白そうですな。 関東地区研究懇談会 2014年2月20日(木)14:00〜18:00 早稲田大学早稲田キャンパス 22号館502教室 小田亮(首都大学東京)「アクチュアル人類学宣言!」 小川さやか(立命館大学)「Living for Todayの人類学」
2014年2月18日 15:25

 というこのツイートをゆうべ目にしてしまい「わわわ」となる。折しも今日の午後に入っていた外出の案件がなくなったところだったし、「だったし」じゃないよという声もごもっともながら、何のための有休だとばかりに半休の届けを出して、午後、早稲田へ。早稲田は入学試験中で、いつも開放されている門が閉じられていたりとかなり雰囲気がちがった。そのメインの構内からは外れた位置にある 22号館というところへ。
いや、だからなんでわたしが日本文化人類学会の関東地区研究懇談会なんぞに足を運んでいるのかって話ですけど、面白そうなんだからしょうがない。22号館502教室はさほど広くないふつうの教室で、参加者は 20数人といったところか。名前を書けという名簿(所属大学・団体を書く欄がある)がまわってきて最後に書いたが、一般参加はわたしだけだったっぽい。とはいえ首都大の何人かや、去年 8月の小田ゼミ夏合宿でいっしょだった方の顔もあり、もちろん小田先生もいて、ちょっとしたホーム感はある。
発表者のひとり、小川さやかさんは『都市を生きぬくための狡知』(世界思想社) の著者だ。知人の茂木(成美)さんが以前に、「 Spectatorに小川さやかさんのインタビュー載っててビビっときて我慢できませんでした。マチンガのウジャンジャやばいですよね」と興奮していたところの小川さんである。そのマチンガのウジャンジャにも当然触れつつ、「瀬戸際の狡知とウソ」から「ぱちもん/模造品交易」へと至る矢継ぎ早な話。
小田先生の「アクチュアル人類学宣言!」は以前にも聴いた内容のバージョンアップ版。そのこまかな内容をいまここで子細に紹介している時間はないのだが、質疑に応えて小田先生が言っていたグレゴリー・ベイトソンのメタメッセージの話はとりわけ刺激的だった。曰く──

  • 遊びと労働とを分けるのはその行為の中身ではない。「本気で遊ぶ」ということはごくふつうにあるわけで、行為の「本気度」が、それが遊びかどうかを決めるのではない。
  • 遊びには、その行為の外側に「コレハ遊ビダ」というメタメッセージが込められている(から、それは遊びとしてコミュニケートされる)
  • そして遊びには、ときに「コレハ遊ビダロウカ?」というメタメッセージが込められることもある。
  • 〈システム〉への批判は大事だが、批判が区別を強化するのだったら意味がない。
  • だから、そこ(批判/研究)に「コレハ遊ビダロウカ?」というメタメッセージを付ける(しのばせる?)こと。

研究会は 18時半ごろに終わり、わたしは懇親会をパスして会社へもどる。帰還先のデスクトップでは森元首相の発言が話題になっていた。何か言ったらしい。押し寄せる憤りツイートの一群がいったん過ぎ去ったあとで、こう飛び込んできたのには笑ってしまった。

@soma1104: 事情はよくわからないけど見事なモリが決まったのか
2014年2月20日 18:30

 それは技か。技の名前なのか。
 で、こちらはほぼ一日たってのツイート。

@soma1104: 全文読んだら立て続けにモリが決まってるじゃないか
2014年2月21日 17:15

 ふざけつつも、ちゃんと原文にあたったりして @tak_kameradさんはえらいなあと思ったり。
深夜に帰宅。未明に、そのフィギュアスケートの女子フリーを見る。「(見てると失敗する、という自前の経験則から)わたしは見ないほうがいい」と妻はもっぱら目を伏せるので、見届け役はわたしに回ってくる。結果はご存知のとおり。ところで後日高橋(祐子)さんが、

@20100222yucong: 「これが浅田真央です」っていうアナウンサーの第一声、私一生忘れないと思う。一人で行う行為が、どれ程の多数の人の気持ちを声高にではなく冷静に静かな怒りや悔しさや驚きとともに響かせることができるのか、職人芸の極みを聞いたようだった。何度きいても泣ける。
2014年2月21日 21:02

とつぶやいて、浅田真央選手のフリー演技終了後の実況アナウンサー(鳥海貴樹さん)の第一声──「これが浅田真央です」──について絶賛していたが、これ、聞き返してみると演技終了からしばらく間があって発せられ、しかも途中でつっかえていることをいまさら知ってちょっと驚くのだった。というのも、記憶では間髪置かず、すっと言い放たれたように思っていたからで、ということはつまりそれだけ、この言葉──が発せられるまでの時間と、そのつっかえと──が、競技を見ていたわたしの思いにじつにリアルタイムに寄り添っていたということなのだろう。
あ、フィギュアといえばロシアのソトニコワ選手ももちろんかわいかったが、その愛くるしさがあまって、まれに立川志らくめくときがあったように思う。

Walked 6.9km • 9,370 steps • 1hr 35min • 331kcal.
Ran 0.3km • 292 steps • 1min • 15kcal.
Cycled 1.8km • 9min • 39kcal.
本日の参照画像
(2014年2月26日 03:30)

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/ 18 Feb. 2014 (Tue.) 「謎ですよ、と大場さんはいう」

フレッド・ブラッシー(1918- 2003)。噛みつき魔のイメージを補強した、やすりで歯を研ぐパフォーマンス。

柳澤健『 1976年のアントニオ猪木』(文藝春秋)。こちらの単行本もまだ入手可能だが、現在では大幅加筆されたという『完本 1976年のアントニオ猪木』が文春文庫から出ている。

で、もちろん妻はいる。ずいぶん前の写真だが、日記のなかに載せたことのある写真としてはこれがいちばん顔がわかる部類か。おこって、むきー!となっている。

夜、新宿で大場(みなみ)さんと軽く飲む。「お茶でも」という話だったがけっきょくお酒になった。ビールの安さを謳う立て看板に促されて居酒屋へ。
実のある話はとくになし。「あけましておめでとうございます」とか。いや、さすがにそれだけじゃなかった気がする。もう少ししゃべった。夕方に更新した「ドキュメント・足止め」をはやばやと読んでくれたらしく、なぜそう依怙地か、なぜもっと早く外へ出ないのか、なぜ奥さんの提案を容れてタクシーの列に並ぶことをしないのか等々を詰問される。「いや、だからそれは」と個々の反論をならべるわたしに、「最初の武蔵境で降りるべき話ですよ」とにべもない大場さんだ。で、銀髪鬼って何ですか、国立で急に何があったんですかという素朴な疑問ももらったので、フレッド・ブラッシーについて説明する。何よりも噛みつき攻撃で知られ、日本では WWA王座をめぐって力道山とたたかいを繰り広げた稀代の悪役レスラー、「銀髪鬼」フレッド・ブラッシー。ついつい引用したくなるのはやはりこのエピソードだろう。

 後の話になるが、力道山の死後 20年を記念した追悼番組に招かれた時、ほとんどのレスラーが月並みな追悼に終始する中、ブラッシーだけは違っていた。力道山に負けた映像が流れると、ブラッシーは荒々しい声でこう叫んだのだ。
「力道山は一度だってこの偉大なブラッシーに勝ったことはないんだ。お前たちは別のフィルムを勝手につなぎ合わせたんだ。日本にあるお前たちのフィルムはみんな嘘つきフィルムだ。力道山、お前は天国には行かない。地獄行きだ。お前とは地獄で決着をつけてやる!」
 ブラッシーは死ぬまでプロレスラーであり続けた。
柳澤健『 1976年のアントニオ猪木』(文藝春秋) p.178

 ちょっとなあ、泣いてしまいそうなくらいのエピソードだ。
 あ、このフレッド・ブラッシーからの流れで大場さん、何かプロレスの話をしたがってたような気もするが、その流れはどこかに雲散霧消してしまった。
それからまあ、ふたつの CSSの話とか。ひとつはサンパウロ出身のバンドの CSS (Cansei de Ser Sexy)。あげたファーストアルバムはけっこうお気に召したらしい。何かで聞き覚えもあった「 Alala」がよく、先日、柳家小権太さんのゴールデン街劇場での会を手伝ったときに音響( iPod操作)を任されて、出囃子とか追い出しとかいろいろ指定のあったなか、あいだの休憩時間については「好きな曲流していいよ」と言われたので「 Alala」を流したとか、なんだとか。で、もうひとつは大場さんが中学のときに通っていたという学習塾の CSS (Chair! Sit down! Sit down!) だ。その名からも想像されるとおりなかなかのばかが集まっていたようで、「高校でがんばりました」と大場さんは述懐する。いや、いま検索して「たぶんこれだな」という本物の CSSのサイトを見つけてはいるが、たいへんまじめそうな学習塾であり、適当なことを言ってるのが見つかるとおこられるのでリンクは張らない。
「謎ですよ」と大場さんが力説するのはわたしの妻についてだ。いっときは「ほんとうにいるのだろうか?」とその実在を疑いもしたという1]

1:ほんとうにいるのか

大場さんと妻とは、グーチョキパーズの第 2回公演『相馬さんの書いたコント』のときに会場で一度だけ会っている。ただ、最初に「今日は妻が観にくる」と言っていた日には妻が急に体調をわるくして、かなり直前になって「今日は来られないことになった」と大場さんらに伝えたので、このとき「やっぱりほんとはいないんじゃないのか」という空気になったらしい。さらにいえば、日をあらためて楽日に妻は来場し、前述のとおり大場さんと挨拶しているのだが、その「妻」も、わたしがたまさか新宿眼科画廊のギャラリーに来ていた女性に頼み、「ちょっとぼく、見栄張って妻がいるって言っちゃってるもんで」と因果を含んで連れてきた可能性を一概には排除しきれない、とはいま、つい面白がってわたしが尾ひれを付けている。

だいたい、この「何考えてるかわからない」「くだらないこと( Chair! Sit down! Sit down!とか)しか言おうとしない」男がいったいぜんたいモテるのかということもあり、ことによるとたんに「見栄」なのではないか、はたまた既婚だと言っておけば若い女の子たちが安心するという、そういうアレでもって妻帯者だということにしてるんじゃないかこの男はと、いちど生まれた疑念は膨らむいっぽうだ。ってまあ、いったいどんなひとなのか、(自分について書かれた箇所に照らせば、日記もけっこうでたらめだったりするし)ちょっとうまく人物像を思い描けないという話。
で、どんなひとなのかということについてわたしはたいして説明もせずに、「いないのではないか」という相馬未婚説のほうばかり面白がって膨らましていた。

Walked 5.3km • 6,877 steps • 1hr 10min • 252kcal.
Ran 0.3km • 288 steps • 2min • 16kcal.
Cycled 1.5km • 7min • 33kcal.
本日の参照画像
(2014年2月22日 01:42)

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/ 16 Feb. 2014 (Sun.) 「チケット発送」

チケットはこんな感じ。日時のところが「 n1」となっているのは出力サンプルのため。日時と整理番号とが可変要素となるバリアブル印刷。

これは明けて 17日の話だけれど、それが「筋肉痛」だと気づくまでにわたしはだいぶ時間を要したのだった。封筒かあ。封筒ごときになあ。
東北沢に制作チームのみんなで集まり、『ヒネミの商人』のチケット郵送作業。これまでにルアプルショップで購入いただいた方の分をまとめて発送する。当初の案内では「 2月初旬ごろに郵送」としていたので少しお待たせしてしまった恰好だ。それぞれ金曜日に刷り上がってきてうちに届いていたチケット 1,800枚と封筒 1,500枚とをふたつの手提げ袋にまとめ、両手に持って東北沢へ。封筒 1,500枚がとにかく重いのだが、しかしもはや、荷物の重みごときで長グツィストたるわたしの歩みが止まることはない。ぐんぐん歩く。
発送するだけの封筒にまず一気に切手を貼ったあとで、エクセルの予約管理表をひと注文ずつ読み上げてはその日時のチケットをピックアップして封筒に詰め、宛名シールを貼り、案内状も足して封をするという流れ作業を 13時〜17時まで。なんとか予定時刻ぎりぎりに終えた。
立川にもどって夕飯はカオマンガイのテイクアウト。ラープの豚( 2.5辛)、ガパオご飯の鶏( 2辛)、ヤムウンセン( 3辛)、タイオムレツ。ぐんぐん歩いた。

Walked 3.8km • 5,661 steps • 1hr 6min • 181kcal.
本日の参照画像
(2014年2月20日 21:41)

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