スーパーマンレッセブン

第1話「地球はここか」

霊魂宇宙人ワルサ星人、憑依怪獣ガルワ登場
宇宙空間
巨大な緑色の球が地球に向かって飛んでいく。美しく、静かだ。

高架線(夜)
ゴウという音をたてて走る新幹線。

高速道路(夜)
ヘッドライトの光、光、光。
ナレーション
「地球は狙われている。
宇宙にまたたく幾千の星々から…
今日もまた、今もまた…」

検問所(夜)
パトカーが停まり、警官たちが検問を行っている。
警官A、前方から来る乗用車に、懐中電灯を振る。
車、来て停まる。
警官A、車に寄る。
警官A
「免許証」

車の中の男、免許証を出す。
警官A、免許証を受け取り調べるが、ややあって男に懐中電灯を当て、
警官A
「どちらまで」

車の中の男、警官Aの方に顔を向ける。と、その目が異様に光る。
その目に見つめられた警官Aは一瞬ウッとうめいて倒れる。
何事かと同僚が駆けつけ、警官Aの体をゆする。
警官B
「どうした、おい」

何事もなかったかのように立ち上がった警官Aだったが、顔色が尋常ではない。
警官B
「!?」

突然、拳銃を抜き警官Bに向かって発砲する警官A。
うめき声とともに倒れ込む警官B。銃声を聞いた他の警官たちが集まってくる。
逃げる警官A。
警官たち、取り押さえようとするが、なおも発砲し威嚇する警官Aに手が出せない。
と、警官のひとりが気付いて乗用車の方に近づいていく。
中の男、気を失っている。
警官C
「おい、大丈夫か」

男、気がつく。
「どうしたんだ、俺は?」

ポカンとする男。
警官Cも訳が分からずに首をかしげる。

防衛軍基地・全景(昼)
レーダーが回っている。
ナレーション
「ここは、宇宙のあらゆる侵略から、地球を守るために組織された地球防衛軍の秘密基地である」

同・作戦室(昼)
様々なモニタ、計器類が並ぶ。
ムラヤマ隊長をはじめ、ミズサワ、モリオ、ユンナ各隊員が待機する。フルヤ隊員だけ姿がない。
ミズサワ隊員は新聞を広げている。
ミズサワ
「あっ、昨夜の警官、捕まったんですね、隊長」
モリオ
「(冷やかし気味に)今頃知ったんですか、ミズサワ隊員? 科学警備隊員たる者、もっと情報に敏感に願いたいですね」
ユンナ
「そうよ。フルヤ隊員なんか、事情聴取に立ち会いたいって、もうだいぶ前にお出かけよ」
ムラヤマ
「ハハハ、一本取られたな、ミズサワ」
ミズサワ
「ウーン(と唸って)、しかしですね隊長、今度のあれは単なる刑事事件でしょ。我々科学警備隊員がわざわざ首を突っ込むことじゃ…」
ムラヤマ
「まあな。フルヤには私もそう言ったんだが」

同・廊下(昼)
作戦室に向かうフルヤ隊員。

同・作戦室(昼)
自動ドアが開き、フルヤ隊員が入ってくる。
フルヤ
「隊長、只今戻りました」
ムラヤマ
「ご苦労。事情聴取は終わったのか?」
フルヤ
「はい。警察は警官が一時的な錯乱状態に陥ったためとして事件を片付けるようですが…」
ミズサワ
「魔が差したってわけだ」
フルヤ
「しかし私にはどうも腑に落ちない点が」
ムラヤマ
「なんだ、言ってみろ」
フルヤ
「警官は、事件のことを全く覚えていないと言うんです」
ムラヤマ
「覚えてない?」

××署・取調室(回想シーン)
机をはさんで刑事と、発砲事件を起こした警官が座り、壁際にはもう一人の刑事と、フルヤ隊員が立っている。
刑事A
「(しびれを切らして)ほんとに何も覚えてないのか?」
警官
「ですからその、車に乗った男の目がピカーッて光って…」
フルヤ
「光った!?」
刑事A
「お前が懐中電灯で照らしたからじゃないのか?」
警官
「いや、あれはそんなんじゃなくて…体が急にフワーッとして…」
刑事A
「それで?」
警官
「それからあとはもう、何がなんだか」

お手上げですなという表情でとなりのフルヤ隊員の顔を見る刑事B。
フルヤは真剣な面持ち。

宇宙空間
冒頭のシーンから引き続き、巨大な緑色の球が地球へ向かいつつある。

基地・作戦室(昼)
ムラヤマ
「ウーン」
ユンナ
「そういえば、事件の直前にその警官が検問していた乗用車の運転手も、そこに走ってくるまでの記憶がないって言ってるわね」
フルヤ
「そうなんだ。それともうひとつ」
ムラヤマ
「もうひとつ?」
フルヤ
「警官捜索に加わっていた刑事の一人が、警官を逮捕した直後、行方不明になっているんです」
ミズサワ
「なんだ、最近の警察はなってないなァ」
フルヤ
「いや、そうとばかりは…」
ムラヤマ
「ん? お前の考えは何だ」
フルヤ
「はい。つまりこういうことではないかと。乗用車の運転手から警官、警官から今行方不明中の刑事へと、何者かが憑依を繰り返した。その何者かは、それ自体では肉体を持たないためこの地球上には存在できず、人間に乗り移ってその体を利用した」
モリオ
「じゃあ、その何者かってのは…」
フルヤ
「宇宙人」
ミズサワ
「一体なんのために?」
フルヤ
「それは分からないが、おそらくは…」
モリオ
「侵略!」
ユンナ
「隊長!」
ムラヤマ
「(しばし考えて)突飛な発想ではあるが、いかなる時も備えは必要だ」

と、自動ドアが開く。
入ってきたのはクラモト長官である。
ムラヤマ
「長官!」
クラモト
「ムラヤマ君、大変なことになった!」
ムラヤマ
「なんですか?」
クラモト
「ワルサ星人と名乗る者から、全面降伏をうながす通告が来た!」
ミズサワ
「何ですってーッ!」
ムラヤマ
「ワルサ星人?」
クラモト
「ウン。期限までに返事がない場合は早速攻撃を加えると言っている」
ムラヤマ
「その期限というのは?」
ユンナ
「隊長! モニターを!」

一堂の視線がモニターに集まる!
そこには、刑事らしい男の姿が写っている。
が、そこから響いてくる声はとても人間とは思えない。
モニターからの声
「返事はまだかね、長官殿」
フルヤ
「(モニターを指差し)こいつはたしか、行方不明になってる刑事だ」
ムラヤマ
「外見はそのようだが…」
ユンナ
「あ!(フルヤ隊員の説を思い出し)分かったわ、ワルサ星人ね!」
ムラヤマ
「ナニッ」
ワルサ星人
「その通りだ。さすがは地球防衛軍のエリート諸君、鋭いな」
クラモト
「一体なにゆえの地球侵略だ? ワルサ星人は君一人か?」
ワルサ星人
「私は代表者に過ぎない。残りは霊魂のまま、母船の中にいる。その数1億」
ムラヤマ
「1億!」
ワルサ星人
「我らが故郷ワルサ星は、化学実験の失敗が元で消滅した。かろうじて生き残った我々も肉体を失い、霊魂のみとなってしまった。我々は我々の次なる住みかとなる大地、そして新たなる肉体を求めて地球にやってきた。幸い地球も、地球人の体も、我々の求めるものにピッタリだ。我々の憑依実験の成果は諸君もよくご存じだろう」
フルヤ
「やっぱりあれはお前たちの仕業か! クソーッ(モニターに食って掛かろうとする)」
ムラヤマ
「(フルヤを制止したのち、モニターに向かって)それで何だというのだ」
ワルサ星人
「簡単な話だ。君たちの星、ならびに君たちの体は、我々がいただく」
モリオ
「そんなことはさせるか!」
ムラヤマ
「そうだ。地球には我々科学警備隊がいるのだ」
ワルサ星人
「フン。科学警備隊など問題ではない。我々は地球侵略用に、惑星アミラの巨大生物ガルワを用意した。我らはガルワの体をあやつって、君たちに降伏を余儀なくさせるつもりだ。フハハハハ…」

モニターが消える。と、
ユンナ
「隊長! 沢名湖に怪獣が現れました!」

一同の視線が、隊長の一言を待っている。
ムラヤマ
「科学警備隊、出動!」

基地・内部の発射施設(夕)
バルト1号を載せた発射台がせり上がっていく。

発射前のバルト1号・機内(夕)
ミズサワ、フルヤ、モリオが乗っている。
ミズサワ
「バルト1号、発進スタンバイ、OK」

基地・作戦室(夕)
モニターを見つめるムラヤマとユンナ。
ムラヤマ
「(マイクに向かって)発進!」

基地近くの海・海面(夕)
バルト1号、海の中から飛び立っていく。

沢名湖(夕)
暴れている怪獣ガルワ。
飛来するバルト1号。

バルト1号・機内(夕)
操縦管を握るミズサワ。
フルヤ
「あいつがガルワか」
モリオ
「思えばあいつも、戦うのは本意ではないだろうに」
ミズサワ
「そんなことを言ってる場合か! 俺たちは地球防衛軍なんだ。あいつは降りかかった火の粉さ」

沢名湖(夕)
なおも暴れるガルワ。
バルト1号もミサイル攻撃を開始する。

宇宙空間
みたび、飛来する緑色の球。

沢名湖(夕)
バルト1号のミサイル攻撃が続いている。

バルト1号・機内(夕)
ミズサワ
「クソッ、遠くからじゃ歯が立たん」

沢名湖(夕)
バルト1号、ガルワに接近。
至近距離でミサイルを撃ち込み、旋回しようとするが、ガルワの火炎放射を浴びてしまう。

バルト1号・機内(夕)
大きく揺れる機内。
必死に操縦管を握るミズサワ。
フルヤ
「うわっ!」
ミズサワ
「不時着!」

沢名湖近くの森(夕)
不時着するバルト1号。

バルト1号・機内(夕)
みな気絶している。
無線機から本部のムラヤマの声が聞こえる。
無線機からの声(ムラヤマ)
「おい! どうした! 大丈夫か!」

基地・作戦室
マイクに向かって叫ぶムラヤマ。
ムラヤマ
「おい! 応答しろ!」

バルト1号・機内(夕)
モリオ、気が付く。
無線機からムラヤマの声が聞こえている。
モリオ
「隊長! やられました!」

基地・作戦室
顔を見合わせるムラヤマとユンナ。
ムラヤマ
「我々も出動だ!」
ユンナ
「はい!」

バルト1号・機内(夕)
隊員たちを起こしてまわるモリオ。
気が付く隊員たち。と、
フルヤ
「(窓の外を指差して)何だあれは!」
ミズサワ
「(フルヤの指差した方向に何かを見つけ)ん?」

沢名湖(夕)
暴れているガルワ。
とそこに、上空より飛来する巨大な緑色の球体。
ガルワをかすめ、湖に落下する球体。

一瞬、辺りを強烈な光がつつむ。
光がおさまると、球体はなく、そこには巨大な宇宙人スーパーマンレッセブンが立っている。

強烈な死闘の末、レッセブンがガルワに勝利する。
と、向こう側の森からワルサ星人の母船が飛び立っていく。

沢名湖近くの森(夕)
バルト1号から降り、格闘の様子を眺めていた隊員たち。
ミズサワ
「(母船を見て)おっ、逃げる気か!」

沢名湖(夕)
レッセブン、必殺の光線を放ち、母船を破壊する。

沢名湖近くの森(夕)
ミズサワ
「やったあ!」

喜ぶ隊員たち。

沢名湖(夕)
ムラヤマとユンナの乗ったバルト2号が上空をやってくる。

バルト2号・機内(夕)
ユンナ
「(レッセブンを指差して)隊長! あれは?」
ムラヤマ
「(つぶやくように)ウルトラマン!?」
ユンナ
「あっ!」

と、小さくなるようにして消えてしまうレッセブン。

沢名湖近くの森(夕)
フルヤ
「消えた…」
モリオ
「(バルト2号を見つけ)あっ、隊長たちだ! おーい!」

手を振る隊員たち。
と、森の中から一人の青年が出てくる。
彼こそ、スーパーマンレッセブンの地球での姿、ホシヅキ・ダイである。
フルヤ、気配を感じて振り向く。
近づいてくるダイ。
他の隊員たちも気付いて振り向く。
隊員たちのところまで来たダイが尋ねる。
ダイ
「地球はここか?」
フルヤ
「(一瞬面食らうが)ああ、そうだ」
ダイ
「ありがとう。美しい星だ」

去っていくダイ。
隊員たち、しばらく見送っていたが、
モリオ
「あいつが宇宙人か?」
ミズサワ
「冗談よせよ。単なる変わり者だよ。さ、隊長たちのところへ行こう」
モリオ
「ああ」

沢名湖上空の夕空
隊長たちと合流し、無事を報告する隊員たちの声が聞こえる。
ナレーション
「地球は狙われている。
宇宙にまたたく幾千の星々から…
今日もまた、今もまた…」

(フェードアウト)