スーパーマンレッセブン

第3話「超えてゆけ!」

侵略宇宙人アガペー星人登場
都心(早朝)
朝の光を浴びて屹立するビル。通る車の数もまだまばらな道路。

住宅地(早朝)
そろそろ人々が起き出してくる時刻。
新聞受けに新聞を取りに出てきた御主人が、向かいの家の奥さんと挨拶を交わしたりする姿が見られる。

アパート・一室(早朝)
気持ち良さそうに寝ているダイ。
ナレーション
「いつもと変わらぬ、気持ちの良い朝でした」

枕元の目覚まし時計が鳴る。
たぐりよせて、文字盤を見るダイ。七時半である。
アラームのスイッチを切って再びふとんにもぐり込むダイ。
ナレーション
「おやおや、二度寝ですか?」

防衛軍基地・作戦室(朝)
時計の文字盤は八時十五分を指している。
ドアが開き、フルヤ隊員が入ってくる。まだ眠そうだ。
ミズサワ
「おいおい、十五分も遅刻だぞ。なっとらんな」
フルヤ
「ゴメン、ゴメン。つい気持ち良くってさ(と、アクビ)」
ムラヤマ
「たしかにこのところ、地球は何事もなく平穏だが、しかし油断は禁物だぞ」
フルヤ
「すいません。気をつけます」

ドアが開き、モリオ隊員が入ってくる。
モリオ
「定時パトロールより戻りました。異常ありません」
ムラヤマ
「ご苦労、ゆっくり休んでいいぞ」
モリオ
「はい、ありがとうございます」
ミズサワ
「まったく地球は平穏無事か」
フルヤ
「(からかって)おっと、油断は禁物ですよミズサワ隊員」
ミズサワ
「分かってるよ!」

アパート・一室(朝)
まだ寝ているダイ。
目覚まし時計は九時半を指している。
やっと目を覚ましたダイ、目覚まし時計を手に取る。
ダイ
「おっと、もうこんな時間か」

ダイ、ふとんから起き出し、それほど慌てもせず着替えをはじめる。

同・表(朝)
外階段を降りてくるダイ。

走る車の中(朝)
ハンドルを握るダイ。
ナレーション
「宇宙警備隊隊員として普段はそれぞれの惑星や銀河系に散っているウルトラ兄弟たちが、年に一度ウルトラの国に集まって、宇宙平和を話し合う会議が開かれる。今日が、その日であった」

喫茶店・前(朝)
ダイ、車を止め、店内に入っていく。

同・店内(朝)
食事を取るダイ。
ダイ
「(心の声)一般人のままでは何かと行動しづらい。やはり早いこと地球防衛軍の内部に身を置く必要があるな。よし、今日兄さんたちに聞いてみよう。さて、そろそろ行くか」

立ち上がるダイ。

ハイウェイを走るダイの車(朝)

海岸(朝)
車を止め、砂浜に降りてくるダイ。
辺りを見回し、人がいないことを確かめて変身、レッセブンとなって空の彼方へ飛び去る。

宇宙空間
レッセブンがM78星雲めざし、飛んでいく。

同・別のところ
宇宙船が数機、地球へと向かいつつある。

宇宙船・内部
宇宙人たち。

回転するパラボラアンテナ(昼)

防衛軍基地・作戦室(昼)
通信機の前に座るユンナ隊員。
着けていた通信用のヘッドホンをはずし、振り向いて、
ユンナ
「隊長! M13地区上空に複数の未確認飛行物体です。未知の宇宙船と思われます」
ムラヤマ
「応答は?」
ユンナ
「ありません」
ムラヤマ
「モリオ」
モリオ
「ハイ」
ムラヤマ
「ミズサワ」
ミズサワ
「ハイッ!」
ムラヤマ
「フルヤ」
フルヤ
「任して下さい!」
ムラヤマ
「お前たち、少し気がせいているようだが…。特にフルヤ、いいか、まずはそれが何であるか確かめることだ。迂闊に攻撃してはならんぞ」
フルヤ
「(落ち着いて)ハイ」
ムラヤマ
「出動!」

同・発射施設(昼)
バルト1号を載せた発射台がせり上がっていく。

基地近くの海・海面(昼)
バルト1号、海の中から飛び立っていく。

上空(昼)
バルト1号、飛来する。
雲の合間から姿を現す宇宙船。
先に攻撃を仕掛けてきたのは宇宙船である。
それをかわしつつ反撃に転じるバルト1号。
烈しい空中戦。

と、ついにバルト1号のレーザービームが宇宙船を捉える!
急降下していく宇宙船。爆発、炎上。

バルト1号・機内(昼)
ミズサワ
「やったあ!」

喜ぶ隊員たち。
と、無線機からムラヤマの声。
ムラヤマ
「喜ぶのはまだ早いぞ。こちらのレーダーにはまだ二機の宇宙船が映っている。どこか上空に潜んでいるはずだ。探索してその二機も撃墜せよ」
ミズサワ
「了解!」

上空(昼)
旋回するバルト1号。

(フェード・アウト)


(フェード・イン)

宇宙空間
地球へ向かって飛ぶレッセブン。
ナレーション
「ウルトラの国での会議も無事に終わり、再び地球へと向かいつつあるレッセブン。まもなく地球の大気圏にさしかかろうとしたまさにその時、それは起こったのです」

大気圏
飛んでいるレッセブンの前方に突如奇怪な光が現れたかと思うと、その光がレッセブンを呑み込んでしまう。

奇怪な光の中
様々な色の光に翻弄されるレッセブンのイメージ。

地球
まだ夕方といった時刻のはずだが、どんよりとした雲が立ちこめて真っ暗な空。下には焦土と化した街が、いや、かつて街であったろう塊が、ある。
その変わり果てた地球の大地に立つ巨大なレッセブン。

レッセブン、巨大なの姿のままで、廃虚の群れを見下ろしながら歩き回る。
砂塵に埋もれた大地を踏み進むレッセブンの足。
と、そこにもう一人、レッセブンが現れる。

レッセブン
「お前は誰だ?」
もう一人のレッセブン
「私は、未来の君自身だ」

声も同じである。

レッセブン
「未来の私? ではここは…」
もう一人
「そう、未来の地球だ。どうやら君は時空の裂け目に落ちたらしい」
レッセブン
「時空の裂け目? そうか、さっきの奇妙な光がそうか。しかしこれはどうしたことだ? この無惨な地球の姿は?」
もう一人
「ある国の核ミサイル保管施設が事故を起こしたのだ」
レッセブン
「なに! いつのことだ?」
もう一人
「3日前だ。もっとも君の立場で言えば11年後と言うことになるが。しかし『君』という言い方はどうもおかしいね」
レッセブン
「人は? 人間たちはどうした?」
もう一人
「いない。ひょっとするとまだいるかもしれないが、おそらくいないだろう」
レッセブン
「君は一体何をしていたんだ!」
もう一人
「おっと、そんなことを言っても天に唾するようなものじゃないか。私は君なんだ。それに…」
レッセブン
「……」
もう一人
「第一、防ぎようがなかった。たしかに地球は美しい星だったが、人間はやはり愚かな生物だったのだ」

と、未来のレッセブンに飛びかかっていくレッセブン。
以降、二人のレッセブンが格闘する中を、二人の(同じ)声が飛び交う。まるで自問自答するかのようである。

もう一人
「何をする、レッセブン! 自分に八つ当たりしても無駄だろう!」
レッセブン
「自分自身だから腹が立つんだ!」
もう一人
「何もできなかった自分が悔しいのか? それとも愚かな人間に無性に腹が立ったか?」
レッセブン
「うるさい!」

格闘がつづく。
未来のレッセブンを高々と持ち上げるレッセブン。胸のカラータイマーが点滅している。
未来のレッセブンを地面に叩きつけ、ふと見ると、叩きつけられた彼のカラータイマーは点滅していない!

レッセブン、ハッと何事かに気付いた様子でウルトラ透視光線を使い、辺りを透視する!
と、空中に何やら機械のようなものを発見し、それをビーム光線で破壊するレッセブン!

途端に荒れ果てた地球の街並みが消えて、そこは宇宙船の中である。

宇宙船・内部フロアー(夕)
いつの間にか人間大のサイズになっているレッセブン。
大地に叩きつけたと思ったもう一人の自分はアガペー星人の姿に変わっており、宇宙船の床に倒れている。

起き上がるアガペー星人。
アガペー星人
「(不気味に笑う)」
レッセブン
「お前は誰だ」
アガペー星人
「アガペー星人」
レッセブン
「アガペー星人? 地球に何の用だ。私にあのような幻覚を見せたのは何故だ」
アガペー星人
「外を見ろ、レッセブン」

レッセブン、振り向き、宇宙船の窓から外の街を見る。

宇宙船の窓から見た街(夕)
一匹だけ巨大化したアガペー星人と、科学警備隊のバルト1号2号の戦いが続いている。
科学警備隊、苦戦の様子。
撃墜されるバルト1号。

宇宙船内のアガペー星人が、レッセブンに語りかける。
アガペー星人
「(声のみ)科学警備隊など我々にとって問題ではない。こわいのはスーパーマンレッセブン、君だけだ。だから我々は君をまぼろしの世界に捕らえ、ちょっかいを出させないようにしたのだ。あと少しというところで見破ったのはさすがだが、もう遅い。君には我々の勝利が決するまで、今しばらくここに居てもらおう。(笑い声)」

宇宙船・内部フロアー(夕)
レッセブン、振り返り、ビーム光線でアガペー星人を倒す。

宇宙船・外(夕)
宇宙船の中から飛び出してくるレッセブン。

上空(夕)
飛来するレッセブン。

街(夕)
着地するレッセブン。
静かに対峙するレッセブンと巨大アガペー星人。

ナレーション
「このお話しは、ここで終わりです。
おそらく、この宇宙人も、その宇宙船も、レッセブンの敵ではないでしょう。

しかしもし、次にまた人類に危機がせまった時、
それは、宇宙人の侵略によるものなのでしょうか?
それとも、愚かな人間の為した行為によるものなのでしょうか?
果たして…」

(フェードアウト)

[メモ:もし「カラータイマーが点滅していない!」という気付き方が映像的に分かりにくければ、別の案で]