8/1 AM2:34
実家に帰るので、飛行機のチケットを買いにいった。
「とにかく安いやつください」
「6:30の便で、17000円というのがありますね」
「じゃそれで」
「お時間のほう、大丈夫ですか?」
「余裕です」
発券してもらってから気付いたのだが、朝の6:30だ。
うちから羽田まで2時間だ。始発は5時半だ。どういうことだ。
「キャンセルされますと、キャンセル料が3000円かかります」
たった今予約したばかりの航空券をキャンセルして、
3000円払うという人を私は知らない。
なぜならその人はばかだからだ。
「羽田に6時半」よりもそのほうが、考えただけでも恐ろしい。
大塚さ~ん、八木さ~ん、
ワタシが今どこにいるかわかりますぅ?
実はここ、まんがランド京急蒲田店なんですよ。
朝の5時までこちらにおじゃましまして、
6時半の飛行機で福岡へ向かいます。
えつ、なんですか大塚さん?
へんなこと言わないで下さい。
こちらのインターネットコーナーなんですが、
蚊がいます。
(相馬称)
ひげには強弱があり、鼻の向かって右の穴奥につまみがある。生まれてこの方いじったことがなければ、つまみは「強」になっているので、少し寒いと感じるようなときには「弱」にするとよいだろう。また、ひげの音をもっと大きくしたいという場合は向かって左の穴に調節つまみがあるのでそれを回す。
(ゆうすけ)
午前10時39分 喜望峰通過。
(相馬称)
朝からダンナがブンブンうるさいと思ったら、ひげの音だった。どこかの拍子で音量が上がってしまったらしい。剃るように言う。
ビッグ・エムがセールなので、昼からダンナに行ってもらう。生鮮食料品売り場のものを買った場合は、個々の単価からお買い上げ合計金額の3%分を引いて、再度合計しなおした金額と元の合計金額との比率分だけレジの女性が増えていくというセールで、結局何がどのくらい得なのかピンとこないが、帰ってきたダンナはとにかくたいへんな人の数だったと興奮していた。
(MAMI)
▼手にボールペンを持ったまま寝たら翌朝まで持っていられるのかどうか、実験した。
▼目が覚めると、ボールペンはどこにもなかった。
(相馬称)
会社は麹町にある。
●麹町は、古くは「子氏町」と記したもので、山王日枝神社の勢力が土地の基盤となっていたことから付いた「氏子町」の名を江戸庶民が逆さに呼んだことにそもそもは由来する。
というのがまったくのでたらめだとして、にもかかわらず、たまさかとおりかかったネットサーファーをして知識の空隙を埋めさせてしまうだけの説得力を獲得し得ているとすれば、それは「インターネット的権威」というものを象徴的に示す事態だろうか。あるいは、「知識の空隙」と「豆知識」との間にある、力の緊張関係に目を瞠るべきだろうか。
とはいえ調子に乗って、続けて書き並べてしまってはいけない。
●「庚神(こうじん)町」が転じて麹町となったもので、現在の2丁目に明治末まであった、大きな庚神塔がその名の起源とされる。
途端にクイズになってしまうからだ。
(恭子)
▼次第に楽になってくる。苦しいのだか難有いのだか見当がつかない。カゴに居るのだか、腿の上にいるのだか、判然しない。どこにどうしていても差支はない。ただ楽である。否楽そのものすらも感じ得ない。日月を切り落とし、天地を粉韲して不可思議の太平に入る。吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。太平は死ななければ得られぬ。南無阿弥陀仏々々々々々々。難有い々々々。
▼と、シマが呟く夢に目覚める。南無阿弥陀仏。
(相馬称)
「シマの初盆は来年だな。他宗に倣って。四十九日の済むまでは、極楽に往生できるかどうか決まらないから」と、まず遠くにこもったのは冗談めかして言う住職の声だったようだ。
「もう行ってるでしょうよ」と坊守さんの声が聞こえて目が覚めた。
皆、いる。
父も母もいて、兄や弟もいる。他の知った顔もある。
皆、常のすがたではなく、見分けるということでもないが、短かったり曲がっていたり、どこかしら尻尾の俤(おもかげ)をそれぞれが光に宿していて、等しくまぶしい。それが揺れている。
「いったい今までどこに行ってたんだ」と、まず兄に声を掛けそうになり、言葉が出かかるその先を越されて、兄は説明をしはじめた。
「まず阿弥陀はな、このあたりを、こうしてやるとごろごろ言うんだよ。…」
(釋縞仙)
今日、私は隣町のラーメン屋へ、友人と四人で行った。私はたいして綺麗だとは気付かなかったのだが、友人の一人が、『綺麗だ。』と言って、向に座る、女性のほうを、ちらちらとみていた。腹も膨れ、綺麗な女性も拝み、さあ、代金を払って店を出たその時、女性の横に座っていた男2人組みに声をかけられた。私は、「ああ、絡まれるんだ」と、その男たちの容姿から、すぐに分かった。(男たちはチンピラの格好をしていたのだ。決して不思議なスポーツ刈りで、不思議な内股で、不思議な甘い目つきだった訳ではない。よって、掘られる、の類の「ああ、絡まれるんだ」では、当然ない。)男たちは、友人が女性のほうを見ているとき、自分たちの方を見ていると勘違いしたらしい。あまりファッションには気を使っていなかったように見えたが、意外と自意識過剰なようだ。それが気に入らないようだった。咄嗟に友人が謝ると、更にそれが気に入らないらしく、「男ならすぐにあやまるな」と言ってきた。男たちは、鼻は曲がり、顎は潰れ、背丈は六尺もあった。謝るのも、無理は無い。だが、口答えをしたなら、確実に殴られていた。だんだん、男たちは暴走を始めた。気が付けば、男たちは気合と根性について語り始めていた。しかも、強制的に。「てめーら、男なら、気合と根性を説明してみろ」と、言われたので、「今、貴方様の仰られた通りでございます」と、いう思いは噛み殺し、「男として持つべき物です」と、ついでに笑いたいのも噛み殺しながら言った。四人で「気を付け」をしながら、横に並んで、右から順番に。男たちは、「なんだ、分かってるじゃねえか。なら、何で謝ったんだ」と言った。期待通りの返事だった。「今、お前らが言った事をまとめて言っただけだろ」と、また一言、喉の奥で死んでいった。その後も、延々と一時間も、気合と根性について聞かせてもらった。彼らの怒りもそろそろ冷めたらしく、(気合と根性は冷めてないが、。)最後に一言、こう言い放った。「良かったな、お前ら。男として大切な話が聞けて」・・・ 人生の中の貴重な一時間を、こんな事に使わなかったほうがお互い、良かったのではないかと。 「それより私は、『早く帰れ』、その一言が聞きたかった」、無論、その言葉はショッカーに捕まり、改造手術を受け、「ありがとうございました」と、姿を変え、元気良く飛び出してきたのだった。
(相馬称)
▼靴墨ばかりなめていて、いけないと思う頃にはもう満腹だ。洗ったジーパンをもう三日も干しているのだった。
▼寝坊して遅刻していると午前の宅配便が届くような時間になっていて、うまいことG4を受け取ってから家を出る。ドアに鍵をかけ、部屋の角を折れて道に面した側に出ると、竿に掛かったジーパンが目に入る。鍵穴、お隣のドア、自転車、ジーパンという順で指差していくような視線を送り、自転車には乗らずに、ファミリーマートを正面に捉えながら歩き出す。たまに鍵をテーブルに置いたまま部屋を出ようとするときがあり、鍵をとりに部屋へ戻らなければならないのでドアを開けると、新聞整理箱からはじまって、きりもないような物たちが「鍵穴」と「お隣のドア」の間にはさまっていく。
▼もしあの干されたジーパンが、いよいよ西荻名物になるとして、それにはあと何年干しておかなければならないだろうか。
(カトウ)
今年はもう来ないのかと思ってた。
11号にして、今年初上陸。
台風も、ここでサービスしとかなきゃ、と思ったのか、超大型だそう。
しかもゆっくり型。
テレビのお天気予報を見ながら、
「こりゃ、大変なことになるぞ。」
と、特に意味の定まらない、曖昧なことを考えていた。
テレビではアナウンサーが台風対策としていくつかの注意を呼びかけている。
「床上浸水の恐れがありますので、大事な物は早い内に2階に上げておく、などの準備が必要でしょう。」
すぐさま飼い猫と昨日買ったばかりのクツを手に、ひとつ上の階に急いだ。
「すいませーん」と叫ぶ。
ネコとクツで両手は一杯だ。
「はーい。」という声ととも登場した女性に向かって、
「あの、これ、大事な物なんです。ニュースで、台風が来るから2階に上げておけって。あ、僕、下の階の物なんですけど。」
とまくしたてた。
すると、その女性は言った。
「ここ、4階ですよ。」
おや?と思った。そうか、ここは4階か。
「いや、どうもすみません。慌てちゃって。どうもねえ、慣れてなくて。こういうの。」
テレ笑いを浮かべながら挨拶を済ませ、今度は螺旋階段を2階へと急いだ。
(相馬称)
明日は、朝早くイサドへ出張なので梨の酒はやめにする。
そのかわり、リムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」を、
ヘッドフォンいっぱいに聴いて就寝。
(ミエ)
台風はまず夢に現れた。
枕元に立ち、唇をとがらせて、しかし息ではなく声で、「フルフルフルフルフル」と繰り返した。抑えた調子で、娘が目を覚ましてしまうような声でもないので、そんなことをやっているのは夫かとも思ったが、顔を向けてみるとちがった。
私が目を覚ましたので安心したような顔になり、「ゆっくりしていく」と言った。
「あいにく今は夜中だから、私は寝なければならない。お茶を出してやることもできないが、それでいいか」と頭を枕につけたまま尋ねると、かまわんでくれという表情だけ作って、居間の方へ消えた。
やがて居間のテレビが点いて、音が聞こえてくる。なぜか奴が台風だと知れたのはこのときだった。
起き出していってテレビを消し、ひっぱたいてやろうかとも思ったが、ひっぱたけば泣き出してしまうような気もして、そのまま布団の中にいた。明日、朝までいたら起こしてお茶を出そう、テレビが点けっぱなしになっていたら小言をいってやろうと、それだけ考えて目を閉じた。
(MAMI)
(父)ガス台が壊れたから臨時休業。
(母)今日もあの人に電話かけませんでした。だって、あの人
こちらの方を一切気にせずに生きているんですもの。
もし、今から電話かけるとしたって、時計は12時を回ってしまう。
12時過ぎて眠るのは寝苦しいったらありゃしない。
(子供)嗚呼、寂しい、寂しい。
(相馬称)
吊革ひとつ隔てて乗り合わせた男は、観察すれば私よりも若いふうで、おそらく学生ではないかと思われたが、携帯電話を耳に押し当て、しきりに「やっくん」の名を口にしている。電話の向こうで彼の話を聞いているのもやはり「やっくん」を知っている人物らしく、とにかく彼に言わせれば、「やっくん」はとてもおもしろい男だということである。聞きながら私は、いわゆる知り合いと呼べる範囲に「やっくん」をもちあわせてはいなかったのだが、しかし、何とか知っている名前から「やっくん」を掴まえてきてみようと努めていた。
柳家の誰かだろうか、と考えていた。まさか小さんでもなかろうが、しかしさん喬でないともいえず、権太楼や、あるいは喜多八あたりかもしれないとそれらの顔を思い浮かべてみて、しかし柳家ナニナニを掴まえて「やっくん」とは、ずいぶん不用意な呼び方をしたものじゃないかと呆れた。たくさんいるからだ。
呼ばれたのは自分かと銘々に振り向かれてみれば、錚々たる顔ぶれであって、しっかりした返事をされるにちがいなかった。
(まくらざか)
先日、小泉総理が靖国神社を参拝した。その事で、金大中大統領が真面目な顔をして怒っていた。私はTVの横に掛けてある世界地図を眺めながら、祖母のことを思い出していた。
私の家の食卓には昔、透明のテーブルクロスが掛けてあり、その間に世界地図が挟んであった。ある日の食事中、祖母が世界地図の、中国北部、朝鮮半島、東南アジア一帯を指差し、
「ここは昔は全部日本だったのに、戦争に負けて、アメ公に取られてしまった。」
と、悔しそうに嘆いていた。
少しニヤつきながら、一人、TVの中の真面目な顔の金大中大統領と、世界地図を見ている私。広東語が、BGMの様に流れてくる。そんな祖母の影響からか、
「こんな言語、真面目な顔で喋れない。」
という思いが、頭をかすめた。
自分を情けなく思いながら、祖母に、もう一度世界地図の説明をしてもらいたいと思った。
(相馬称)
近所の某ハンバーガーショップの前を通ったら、バイト募集の貼り紙が
出ていた。何の気なしに見てみたら、
「心身共に16歳~30歳までの方」とあった。
健康かどうかは問わないという寛大な心には感心するが、心と体の年齢
はどうやって見極めるのだろうか。
心は、まぁ精神年齢をはかるテストを独自に設けていたり、年代ごとの
ギャグに反応するかどうかではかるとしても、体はどうするんだろう。
そのまま、単純に生きてきた時間と思って良いのか?
それとも、骨年齢だの肌年齢だのを細かくチェックして、どれか一つで
も16歳~30歳という範囲からずれるものがあれば、失格なんだろうか。
(カトウ)
先月の末だかに駅前にでき、以来ひそかに評判だという「占いの館」へ夕方、足を運んだ。
呼び物となっているのが「身長占い」で、名前と生年月日をあらかじめ係りの人に伝えて部屋に入っていくのだが、先生は見るなりその人の身長を言い当ててしまうのだった。誤差はだいたい二、三センチだという。いっしょに行った友達が先に見てもらい、出てくると、「だいたいあってたよぉー」と驚いていたので期待して、その次に入った。
入るなり、先生は「全然分からない」と言う。
ごくまれにあるのだそうだ。先生の力をもってしても計り得ない、特殊な身長の持ち主というやつで、そういう場合まったく身長を感じ取ることができないのだと先生は説明する。
「分かりましたが、せっかく来てさびしい気もするので、当てずっぽうでも何でも何か言ってください」と言うと、「5メートル」と先生。「そんなにありますか?」と聞くと先生は変な顔をした。「そんなにありますか?」と聞く私が変な顔をしていたのかもしれない。
一瞬よほど頭をぶつけるような心地がして、戸をくぐるように部屋を出た。
寄らなかったが、隣には「志ん朝占い」の看板も見えた。血液型と、古今亭志ん朝の持ちネタの中で一番好きなものを言い、「あれはいいよねえ」といった話で盛り上がるらしい。そこの先生はビデオもたくさん持っているのだそうだ。
(マリ)
今朝のコーヒーの香りは、
千のキスより、
マスカット・ワインより、
甘い。
秋が訪れた日、
僕は今日何杯のコーヒーを飲むでしょうか?
(相馬称)
村の時間の時間は、
千のキスより、
とそこまで打って、
やめにする。
それじゃやる気がなさすぎるじゃないかと私は、
本日一杯目のマンデリンを空ける。
(MAMI)