足熱図鑑

エッセイ

テクスト

 何度か片付け忘れてテーブルの上にあるドレッシングの容器に目が行く。

 「油のおいしさと唐辛子の辛味が効いています。おいしい煎りごまがたっぷり入った、しょうゆがベースの中華ドレッシングです。」

 ちなみに赤い字で書いてある。

 何か、テクストと、決定的に出会ってしまったかのように自分が読み耽っているので、困ってしまった。

 このドレッシングが「油のおいしさと唐辛子の辛味が効いて」いて、「おいしい煎りごまがたっぷり入った、しょうゆがベースの中華ドレッシング」であることは、私にとって重要な何かなのだろうか。
 いや、そうでもなさそうだ。

 それとも、「テクストに外部はない」のだから、私はこの、「油のおいしさと唐辛子の辛味が効いています。おいしい煎りごまがたっぷり入った、しょうゆがベースの中華ドレッシングです。」の真っただ中にいる、のだろうか。
 絶対違うような気がする。

 私は立ち上がって、冷蔵庫にしまった。

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