2014/3/23(日) 上野鈴本演芸場
- April 17, 2014 4:04 AM
- rakugo
真打昇進襲名披露興行、志ん好の初日。近藤君と。
〔夜の部・途中から〕
釜泥 柳家三三
漫才 すず風にゃん子・金魚
酒粕〜からぬけ 古今亭志ん橋
長短 三遊亭金馬
幇間腹 春風亭一朝
〈仲入り〉
口上 下手より市馬=司会、金馬、志ん好、志ん橋、馬風
狸賽 柳亭市馬
紙切り 林家正楽 ※若駒=鋏試し、志ん好さん、背負い投げ、闇夜に鴉、ピカチュウ、桜
妾馬 古今亭志ん好
志ん橋の「酒粕」がよかった。近藤君ともども与太郎の「見てた?」に吹き出す。「見てた?」じゃねえよとつい言いたくもなる、〈バカの飽和〉の幸福な瞬間がそこにあった。
で、どうでもいいことながら、初日のトリネタ予想は大当たりだったわたしだ。
これは後日見つけて読んだのだが、林家ぼたんさんがそのブログにこの日の楽屋の様子を書いている。
私「兄さん、何やるんすか?」
志「妾馬かなあ」この時点で、泣きそうになった。志ん好兄さんの前師匠、故志ん五師匠の得意ネタだ。志ん好兄さんは志ん五師匠の一番弟子だった。我々は二ツ目勉強会で大変お世話になった。『志ん五師匠も絶対見てますよ!』と心の中でつぶやいた。
披露目は生き様だ。 | BOTAN'S LIFE
いや、ここだけ抜き出してもちょっとあれで、ぼたんさんの記事は記事でぜひ原文にあたって全文をお読みいただきたいし、全文を読めばそりゃあどうしたって感動的なのだが、しかしいっぽうで、ここにある志ん好の「妾馬かなあ」には、おそらく、さほどの感傷はなかったのではないかとも──なんとなくそうであってほしいなという願望も込めて──思う。つまり、思い入れのある噺であることも要素のひとつとして(記憶違いだったら申し訳ないが、志ん五から最後に教わった噺が「妾馬」だったと、以前にそんなことを言っていたような気もする)、ほかに、トリネタに適した重量のあること、初日にふさわしくめでたい噺であること、そして持ちネタのなかで一定の手応えを感じているものといえば……? といった要素を等しく勘案した、いたって冷静で、ある意味〈無難な〉判断だったのではないかと想像したい。なぜといって、「亡き志ん五の……」といった物語にいたずらに回収してしまうには今日のこの日はあきらかに早く、あまりにスタートラインだからだ。まずここから。まずこの先へ。
とはいえ、知るかぎりの志ん好の持ちネタのなかで、「妾馬」がもっとも志ん五を感じさせる一席だということも事実である。志ん五の「妾馬」をわたしは二、三度聞いているが、わけても志ん朝一門会の仲トリで聞いたそれが記憶に深く、いまでもそのときの「妾馬」がわたしのナンバーワン妾馬だ。あれはなあ、完璧に近かったよ。
志ん好。「控えておれ三太夫!」もまずまず決まって、まあ、ひと安心の出来。いっしょに行った近藤君は「妹(お鶴)の顔が見えた」といい、それは思わぬ方角からの感想だったが、だとすればそれ、かなりな褒め言葉じゃないかよ。
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