/ 9 Jan. 2005 (Sun.) 「そして初日まで」

○1/5(水)
シアタートラムの地下にある「稽古場B」を使うのも、いよいよ今日と明日だけとなる。明日には劇場の「仕込み」がはじまり、照明作りのために大道具のうちのいくつかがそっちに運ばれてしまうため、明日の通し稽古ではそれらが使えない。それらを使い、劇場入りする前段階として完全な(?)状態で「通し」をできるのが今日までということで、宮沢さんのほうから「今日は2回通したい」という意向があり、それで強行スケジュールながら2回「通し」を行う。
○1/6(木)
「稽古場B」での最後の「通し」を終えてから、映像関係の機材を劇場の調光室に運び入れた。舞台上にある生中継カメラから調光室までのケーブル配線だの、本番用のプロジェクターの基本的なセッティングなどはプロの業者さんにお願いしてあり、機材を運んで劇場に行くとすでにそれらのセッティングは完了していた。調光室内部のセッティングや配線は明日、自分たちで。
○1/7(金)
朝、「映像出し」用のDVDを家で焼いているところに演出補の小浜さんから電話がある。13時から照明作りがあり、映像が必要になるのでそれに間に合うように劇場入りしてくれとのこと。前日の連絡ではもう少し遅い入りでも大丈夫というような話だったが、すると2枚焼いていく予定だったうちの1枚は焼いている時間がなく、それはあきらめて劇場で焼くことにする。「2枚」というのは、舞台上のスクリーンに投射する分と、舞台全体(スリット部分)に投射する分の2枚。ニブロールの高橋さんの映像はまだ全部揃っておらず、そもそも舞台全体に投射するほうはこれから「場当たり」ではじめて実際に投射してみる次第で、それを経ての微調整もあるだろうから最終的にはまた前夜に焼き直さなければならないが、ひとまず仮のものでも焼いておきたいと考えたのは、「場当たり」「ゲネプロ」でなるべく本番同様にDVDデッキから素材を出し、その操作に慣れておこうと思ったからだ。
それで照明作りに付き合いつつ、調光室でもう1枚のDVDを焼き終えたころ、高橋さんが新しいムービーデータをもって登場。ハードディスクからハードディスクにコピーし、追加・差し替えとなるそれらはひとまず、スクリーン用にパソコンから、スリット用にDVテープから、それぞれ出せるように準備する。
18時から「場当たり」。冒頭から流していき、適宜止めて、おもに「きっかけ」となる箇所を確認する作業。稽古場ではセットの実寸が取れなかったため、役者さんたちも実際の「広さ」のなかで動くのははじめてで、そのへんの動線の確認もある。やはりたいへんなのが照明で、照明ばっかりは機材の都合上ということなのだろうが稽古場では何も稽古しようがなく、劇場入りしてから一気に、それ以外の音響、映像、そして芝居といったものたちに追いつかなくてならないといった印象である。厄介なのは、舞台奥での芝居をカメラで中継しスクリーンに映すという「生中継」がこの舞台では多用されるのだが、舞台上を直視した場合に美しいと感じる「舞台上の明かり」を優先したときに、しかしカメラで撮ると光量が足らず、スクリーンの映りとしてはだいぶ暗くなってしまうのだった。カメラ側の露出を上げたり、どうしてもという場合は照明を足してなんとか調整。「場当たり」そのものは至極順調に進む感じで、今日のノルマ(全体の約半分)を達成して終了する。
○1/8(土)
13時から「場当たり」で、きのうのつづき。その後、17時から「ゲネプロ」(本番同様にして行う通し稽古)。ところでわれわれのいる調光室は客席の後方、2階部分にあって、客席からはだいぶ見上げるかたちになるスクリーンが目の高さにあり、また舞台全体を正面から望められもして、かなり「いい席」になっているのだった。稽古場でも2階にいたが、舞台のツラ(最前面)は真下に近い位置にあって、手前のほうの芝居を見るには手すりを越えてのぞき込まねばならず、まあそうした余裕もなかなかなかったので舞台手前で行われる芝居をとくに稽古後半からはほとんど見ていなかった。途中で演出が加えられた部分など、「そんなことをしていたのか」とはじめて見る箇所がいくつかあった。
今日も高橋さんからは新しい素材。さらに「やっぱりあそこ直す」と言って、われわれのうしろの席でPowerBookをひろげ、修正作業をはじめた。ゲネプロ中にレンダリング。それでやっと全部──明日の通し稽古で撮影したものを素材に使う部分があるので、厳密には全部ではないが──揃った。今夜は家でこれをDVD4枚(バックアップを考え、スクリーン用とスリット用をそれぞれ同じものを2枚ずつ)に焼き、さらにバックアップ用にDVテープ(1本ずつ)に書き出して明日に臨む。寝るものかこのやろう。
○1/9(日)
12時から、2回目の通し稽古。「いい席」だということも手伝ってか、「映像出し」の作業をしつつもときおり、こちらの手がしばらく空くシーンなどついふつうに芝居を観てしまっていた。そして思う。面白いよ、これ。複雑に錯綜し、難解かとも思われたストーリーがしかしこうしてすべてが出揃ってみるとわかりやすくさえ感じらもし、まあこちとら1年近く付き合ってきた台本だから一般のお客さんとはまた理解のアドバンテージ(?)がちがうとはいえ、しかしシーンとシーンとが有機的に結びついていく構成の妙をいまさらながら感じて、そして「ああ、長かったな」と、もはや克明には思い出せもしない日々のことをただ「厚み」として感じていた。
そして19時。定刻から3分ほど押して初日の幕は開いた。
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