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Mar.
2018
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/ 10 Mar. 2018 (Sat.) 「外語大へ / 夢みる振替輸送」

ロビン。2016年10月。

東京外国語大学のアジア・アフリカ言語文化研究所で開かれた、「日本文化人類学会関東地区研究懇談会」なる集まりに行く。いや、そこへ行ってわたしが何を「懇談」するんだって話だが、いつものように「小田亮」の名前で世間を検索して、少し前に開催を知った。「『日本人を演じる』の衝撃美術家の問い、人類学者の応答」と会のタイトルはつづき、美術家・映画監督の藤井光さんが招かれて発表をすることになっている。それに応答するコメンテーターとしてクレジットされているのが小田先生。最近はわりあい浮かれているので、ひょこひょこと出かけたのだった。行かない手はない。

 1903年に日本政府が開催した第5回内国勧業博覧会では、「学術人類館」と名付けられたパビリオンで、琉球民族やアイヌの人々などが伝統的な居住空間とともに「展示」された。欧米の博覧会での流行を受けたこの企画は、しかし、展示される側からの抗議により見直しを迫られることとなる。「日産アートアワード2017」でグランプリに選出された藤井光の《日本人を演じる》は、この史実から着想を得て行ったワークショップの様子をまとめた映像インスタレーションだ。
「人間の展示」をいま再考する。日産アートアワード2017、グランプリ受賞の藤井光に聞く|美術手帖

藤井さんが自身のアーティストとしての来歴をしゃべり、作品への導入となるような話をしたあと、その『日本人を演じる』の上映がある。先の説明にあるとおりこの作品は本来はインスタレーションであり、展示空間に配置された複数のモニターに、同時多発的にさまざまな映像が流れているのを見て回るというかたちのものだが、今日のはその映像群を一本につないだ特別編集版で、藤井さんが今日の発表用に用意したもの。
おもしろかった。あと、だからどうということもないのだが、映像に映るワークショップ参加者のなかに山﨑(健太)君と村川(拓也)君がいて、「あ。」とだけ思う。
で、上映後の小田先生の応答コメントだけれど、さすがにいまですね、前回の日記でもって「長い日記」には懲りているものだから、ちょっとまあ、ノートに残っているメモを箇条書きに並べるだけにさせていただく。いろいろ言葉は足りてないと思うが、そこはその、訊かれたら答えますんで。

  • コレクション=収集し、タブロー化する=同一平面に並べる。それを一望のもとに眺める(収集者とはべつの)人物。
  • 人種が序列化されるのではない。序列が先にあり、序列空間に人種があてはめられる。だから、人種が固定化されていないことをいくら指摘しても序列空間は変わらない。
  • 参加者が怒り出さないことのおそろしさ。学術のため、芸術のためのワークショップという前提のもとでは、たしかにぼくも怒らないかもしれない。
  • 人類館にたいする当時の抗議もそれを受けての言い訳も、文明化の序列の同一平面上で行われている。
  • 万博はパリの成功を受けて娯楽化する。人類館ももとは敷地外に娯楽ブースとして企画されたもので、それが内側に取り込まれ、そのときに「学術」の冠が付く。およそ開催一ヶ月前のこと。
  • コンパニオンという見世物。見世物性が不可避であること。あるいは可能性は、見世物がはみ出ていく部分にこそある(/にしかない)のかもしれない。

会がハネたあとの懇親会には出ずに失礼したが、その手前で藤井さんと少しだけ話す。研究者でも学生でもないわたしが何者なのかというのはさておき、なぜこんな場にいるのかについて「小田亮さんのファンなもので」と説明すると、すかさず「キレッキレですね、あのひと」と藤井さん。「キレッキレです」とわたし。そんなこんな。

それで揚々と帰途に着いたのだったが中央線の運転見合わせに巻き込まれる。中央線でそのまま運ばれれば立川まであと 10分という国分寺でいよいよ動かなくなり、改札を出たところに貼り出されていた振替輸送の案内に従うことにしたが、それによれば、国分寺から西武国分寺線→西武拝島線→モノレールと乗り継いで立川に向かう手があるという。行けるもんだねえ。
これでもかという遠回りがちょっとした旅行気分をもたらし、度重なる乗り換えにも不思議な高揚感が生まれると、ローカル線のどこまでも〈日常的〉な風景で構成されたその〈非日常的〉移動のなかで、いつしか祝祭的な感覚にさえ包まれたわたしの脳裏にやがてひとつの夢が結実する。あるいは、条件さえうまいこと整えば、

20:23
振替輸送で世界一周。

という事態だってありうるかもしれない、という夢だ。相次ぐ運転見合わせと迂回の連鎖の果てに、もう、これしかないという──しかし、これならば立川に着くという──奇跡のひと筆書きが地球を一周する。そんなことがないともかぎらない。驚くべきことには、何しろ振替輸送なので、タダなのである。さすがに東京を離れるあたりでどこか申し訳ないような気分になりつつも、定期券を示して次から次、改札の脇のところを抜けていく。いや、それにしたって世界一周となればどこかで日本を出なければならないわけで、そこの理屈がよくわからないけれども、しかし、信じてほしいが、立川に帰るためにはこれしか道がないのだ。たのむ、行かせてくれ。
今週のジュニアの女子テニスはタイの大会で内藤祐希が準優勝。いや、優勝が目前だっただけにがっかりもひとしおだけれども、試合後に本人が Instagramに上げていた写真が、なんだか、前よりも一段ガタイがよくなったように見受けられ、それがとにかくたのもしい。

Walking: 3.1km • 4,617 steps • 55mins 32secs • 146 calories
Cycling: 2.6km • 13mins 24secs • 56 calories
Transport: 44.3km • 1hr 12mins 22secs
本日の参照画像
(2018年3月30日 02:11)

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