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Oct.
2010
Yellow

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/ 15 Oct. 2010 (Fri.) 「また新しい何かがはじまる、そんな夜に」

チケットはこんなデザインだ。

『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』の初日だった。会社を少し早退して、午後4時ごろ、ちょうど最後のリハーサル(ゲネプロ)が終わったころにわたしは劇場に着く。制作スタッフさんの手伝いなどしながら開演をむかえ、本番は客席で観た。
門外漢なのでよくは知らないのだが、たしかこうした世界には「初日が出る」という言い方があり(あ、もとは相撲ですね。場所中の初白星を指して「ようやく初日が出た」など)、その視点に立てばまだ初日は出なかったものの、とはいえ、作品そのものがもつ絶対的な強度によって支えられた舞台の魅力はしっかり客席まで伝わっていたように思える。あとは相対的な強度の問題。セリフのミスがいくつかあり、それにも影響されてかリズムに乗り切れなかったシーンが(とくに後半に)散見されたのはたしかだ。
わたしは最後列の左寄りのほうから観ていた。映像のオペレーションをしている演出助手の近藤(久志)君が何かミスをやらかさないだろうかと、そのことにばかり神経がいき、ずっとどきどきしながら観ていた(というのはわたしが、前々回の公演で映像オペレーションを担当していた身だからだろう)。宮崎(晋太朗)君演じる「製薬会社の営業マン」がよかった。なんだかよかった。「ついに来たと思ったら、(われわれがずっと待っていたのは)こんなやつだった」という感じが出ていた、といえばいいだろうか。
田中(夢)さんもよかったな。稽古場では気づかなかった要素だが、カメラレンズと舞台とをつなぐ存在としてその特異な魅力を発揮していた。でもって山村(麻由美)さんだ。とあるシーンでソファから半身を起こして静止する、その姿勢がすばらしくよかった。一瞬、その何秒かのあいだ、舞台は山村さんに付属していた。
高橋源一郎さんと宮沢(章夫)さんとのアフタートークがあり、その後、初日乾杯。夜11時にはみな解散したが、その後も Twitter のタイムライン上には関係者それぞれ、思い思いのつぶやきが流れて、夜は長かった。

本日の参照画像
(2010年10月16日 11:23)

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/ 14 Oct. 2010 (Thu.) 「初日直前日記」

わたしがいま、つい「未来」というキーワードを持ち出しがちなのはこれを読んだりしているからだ。カトリーヌ・マラブー『ヘーゲルの未来──可塑性・時間性・弁証法』(未来社)。でもこれ、すげーむずかしい。さっぱりわからないと言っても過言ではない。

こちら、きょう(14日)付の朝日新聞夕刊に載った紹介記事です。

『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』は明日、というか日付変わってきょう、もう何時間か後には初日の幕があく(いや、「幕があく」というのはあくまでレトリックで、じっさいには剥き出しの、じつにかっこいい舞台装置がわれわれを待っている)
相当な舞台だと思う。いや、相当どうなんだよって話だけれど、いま、ちょっと適当な言葉が出てこない。「相当面白い」のではない──それを言うならきっぱり「面白い」──し、「相当かっこいい」のでもない──その点もやはり、きっぱり「かっこいい」──のだが、そうでなく「相当」な舞台なのだと、曖昧な言葉を使って紹介したい思いに駆られる。たとえばこういうことかもしれないというのは、「相当気持ちいい」ということだ。
9日(土)、10日(日)、11日(月・祝)の三連休にひさびさ稽古場へ行き、そこではじめて「通し」を見た(通し稽古は三日間ともあった)。稽古初期からすると、構成も個々のシーンの演出もずいぶん変わっており、しばらく稽古場から離れていたから全体としてどういうことになっているのか、どうはじまりどう終わるのかも知らないままに9日の通し稽古を見たのだが、ラストシーンもなかばにさしかかり、ああ、これでどうやら終わりにむかっているのだなという感じが舞台上から伝わってきたそのとき、ふと、「これで終わると、どうだ? 物足りなくはないか?」という懸念が湧くのを感じた。けれどどうだ。じつにぴったり「物足りた」のである。ああそうかと、舞台が終わるあのラストの瞬間に、何の過不足もなく「腑に落ちた」。その不思議な体験を、また少しちがう言葉で書いたのがこのつぶやきになった。

『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』。その舞台上には〈未来〉がある。希望とも絶望ともつかず、ただただ明日へとつづく〈未来〉がある。それを観に行こう。眠りの先の、朝を夢見る者として。

 つまりこれは、相当な舞台なのだ。
なにしろまだ初日の幕もあいていないので、きょうのところはこの程度の、抽象的な物言いにとどめさせていただきたい。そして何より、舞台を観ていただきたい。後半の、20日(水)、21日(木)、22日(金)といったあたりはとくに席に余裕があり、まだまだ予約が可能です最新の残席状況はこちらのページにて随時更新されています。また、当日券の販売枚数については遊園地再生事業団のTwitterアカウントにて、公演中毎日、その日の朝11時につぶやいています)。わたしを窓口にしてご予約いただくのでもかまいません。お気軽にお問い合わせください。
単純な一観客の立場であったなら、きっとわたしは三度観たでしょう。一度は必死に考えながら、もう一度は何も考えずに、そして最後は、目の前に立ち現れた、いまここにしかいないこの役者たちとの時間を惜しみつつ。
では、劇場で会いましょう。

本日の参照画像
(2010年10月15日 13:45)

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