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Mar.
2008
Yellow

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/ 5 Mar. 2008 (Wed.) 「オーライ船長」

鈴木慶一『ヘイト船長とラヴ航海士』。

原田知世『music & me』。

掛川へと向かう新幹線に乗り込みつつ、なぜ、通夜へ行こうと思ったのだろうと考えていた。帰りの新幹線では答えが出ているだろうか。「なぜ」などと問うのは、あるいはたんに眠いからかもしれない──と、行きの新幹線の席ではノートにそこまで書き、じき寝てしまった。
26日の朝に、更新された「富士日記 2.1」の文章を読んでいたから察してはいたが、昼前にはあらためて笠木(泉)さんから電話があり、宮沢(章夫)さんのお父さんが亡くなられたことを報せてくれて、通夜や告別式の日程などおおまかなところを伝えてくれた。近日中に果たさねばならない仕事量からいってきっぱり「行けない」と判断すべきだったのかもしれないが、「行けるのではないか」という思いがむくむくと湧くのを抑えられない。告別式のほうは昼間だしまずむずかしいが、通夜ならなんとか都合がつくのではないか。「仕事を片付けてしまって、ぜったいに行こう」と考えることで、永遠に片付かないのではないかとも思われた厖大な仕事がいっそ片付くような光さえ差した。
それで26日の夜は会社に泊まり、少し目途のついた翌27日の朝、7時半ごろにいったん帰る。家で風呂だけ入って、10時半にふたたび出社。17時に退けるまでにもうひと区切りつけて、そして東京から新幹線に乗り込んだ。20時前には宮沢さんの実家に着く。いよいよ家が近くなると道には案内用の看板が現れるが、それには「宮澤家」とあって、「あれ?」と思ったというのは易しい「沢」のほうが戸籍上にも正式な用字なのだとばかり思っていたからだ。なぜそんなふうに思いこんだか、記憶をたよりにいま検索してみたが、たぶんこれだな。2001年3月1日付の「世田谷日記」にある。

知っているのか、知らないのかよくわからない人からもメールが届きアニメについてコメントしてほしいという。雑誌の編集者。その人のメールでは「宮澤」となっていた。きっぱり断る。

焼香。大工さん(宮沢さんのお父さんのお弟子さん)なのだろう方々がおおぜい座を占める居間にとおされ、新幹線の終電までそこにいた。桜井(圭介)さんや白水社のWさんも駆けつけていて、宮沢さんはおもにお二人の話し相手になるふうだったので自然その輪に加わることになるが、しかし一方で職人さんたちの会話や表情にもつい目がいき、耳が向く。うちの寺の檀家にも職人さんはいて、かつて接したその人たちのことを浮かべれば、方言こそ違えどある種の既視感もある。たわいもない会話で時間がすぎていく。
終電の時間が来て、宮沢さんに車で駅まで送ってもらい、東京組の三人でいっしょに帰る。それでそのまままた会社へ戻り、泊まって仕事。
翌28日、帰るつもりでいたのだがけっきょく帰れず、もう一泊。
29日の深夜にようやく帰宅。NHKの「MUSIC JAPAN」に鈴木慶一さんとともに笠木さんが出るらしいというのでテレビを点け待っていたが、ほどなくひどい睡魔に襲われた。録画予約をしておいてよかった。プロデューサーに曽我部恵一を迎えた鈴木慶一さんの新譜(17年ぶり、2枚目のソロアルバム)『ヘイト船長とラヴ航海士』から「おー、阿呆船よ、何処へ」が披露され、演奏するそのお二人のうしろのほうで、サングラスをかけた笠木さんが踊りながらフルートを吹き、同じく高山(玲子)さんがウクレレを弾いているという内容。
3月1日、夜、原田知世のライブへ妻と。行ってみたらスタンディングで、へとへとになりながら観る。最新アルバム『music & me』をもとにしたツアーの最終日で追加公演。ゲストに鈴木慶一、高橋幸宏、大貫妙子、キセルほかという豪華さ。高橋幸宏は「Are You There ?」(バートバカラックのカバー曲で、選曲&編曲が高橋幸宏。私は『music & me』でこれがいちばん好きだ)で1曲だけドラムを叩き、あと、YMOナンバーの「CUE」を演る。「CUE」はいうまでもなくとてもチリチリ言っていた。アンコールでは原田知世+大貫妙子+鈴木慶一+高橋幸宏の4人ボーカルによる「Moon River」、再アンコールで「時をかける少女」。
3月2日は池袋へ。リージョナルシアターのリーディング公演、熊本の劇団0相による『アクワリウム』。宮沢さん、(鈴木)謙一さんといっしょに観た。面白かった。面白かったが、なんていうんでしょうか、〈劇世界内了解事項〉とでも言い表されるような語られない細部がちょっと不用意に多いという印象もあり、それは「観客に委ねる」というのとはまた少し(あるいは、まったく)異なる「語らない態度」であるように感じて、まあ、何をえらそうに言ってやがんでいってはなしですけど、とにかくこのリーディングを経て本公演(初夏に九州で上演されるらしい)がどのようなかたちをしてあるのか、楽しみであるってそれ無責任なことを書くようだが、そりゃ、行けたら行きたいよ、熊本も。暗算の速い〈猫踊り〉の女性(松岡優子さん。役名忘れた)が徐々にいとおしくなる。あと、〈ト書きスト〉としては少しじりじりもした。
2日の帰りに『ヘイト船長とラヴ航海士』を買い、それでいまもっぱらそればかり聴いている。「おー、阿呆船よ、何処へ」はいいが、聴くたびにフルートを吹く笠木さんが脳裏に浮かぶのは厄介だ。困ったものを見せられたとつくづく。あと、このアルバムは高音質の5.1chで収録されたSACD(Super Audio CD)としても(機器があれば)再生できるのだが、やっぱりそっちでも聴きたくなる。『ニュータウン入口』の打ち上げの席で隣り合わせた鈴木慶一さんが、そういえばそのときしきりに「5.1chの魅力」について語っていたが、思えばあれはこれのことだったのだな。5.1chのスピーカーセットは居間にあるが、残念ながらSACD対応の再生デッキがないのだった。「いや、あれがそうかも。あれでできるのかも」というのがあるにはあるが、いま、あんまりそうしたことを考えられないのだった。
3日も4日も5日も、仕事三昧。

本日の参照画像
(2008年3月 6日 02:51)

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