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Jan.
2012
Yellow

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/ 15 Jan. 2012 (Sun.) 「新春大沼寄席」

いろいろとやる気満々で臨んだはずの14日はしかし、何やら目眩がするといい寝室に引きこもった妻につられるかたちで、けっきょく無為に過ごしてしまった。[電力自給率:40.8%(発電量:11.6kWh/消費量:28.4kWh)]
それにしても、このままでいくとわたしはいよいよ今年、落語のことしかここに書かないのではないか、それで喜ぶ──というか、ついて来てくれる──のはひとり笠木(泉)さんぐらいのものではないかという懸念は日に日に増すところであって、これでもいちおう懸念はしており、まずいのではないかという自覚はもっているのでどうかその、「落語だな」となったらそこは飛ばし読んでいただきつつ、懲りずにまたご来訪いただければと願う次第だ。
というわけで今年の聞き始めは「新春大沼寄席」。立川から八王子へ出て、そこから横浜線で相模大野。バスへ乗り換えてさらに25分、「大沼小学校前」で降りて数分歩くと会場の大沼公民館である。先週も来て入場券(100円)をもらおうと思ったところがすでに完売だったことは前に書いたとおりで、受付をしきる、実行委員とおぼしきおばさんたちにおずおずと声をかけると、「二度も足運んでもらったんじゃねえ」「どうしても観たい? じゃあ、あたしのぶんの券を譲るよ」ということになって入れることに。定員120名の客席を埋めるのはむろん地元の方々ばかりで、ほぼ全員が60歳以上と思われる老男女である。
開口一番は白雪亭杏仁さんが「寿限無」を。桜美林大学の2年生で、落語研究部の部長とのこと。女性。とにかく客席がよく反応してくれるので、誰あろうわたしこそが救われた。とはいえやっぱりね、聞いていると気恥ずかしくなり、大半はうつむいて聞くかっこうになってしまったのはほんと申し訳ない。ただ一点、「桜美林大学ご存知ですか? あんまり頭いい学校じゃないんでご存知ないかと思って……べつにいちばん面白いから部長なんじゃないんです。面白い先輩はほかにいっぱいいまして……その先輩たちがやる落語会が今度あるんでよかったら……それにも出演するある先輩は顔がすごく老けていて、とても大学生には見えないんですよ。わたしがはじめて部室に行ったときには……で、その先輩は高座名が『腰痛亭小隠居』と言いまして……」と、すっかり雑談だとばかり思っていたそのマクラが最後、「まあ、名前というものはひとそれぞれでして」というところへすっと着地したことには、油断もあって「おっ」と思ってしまったことをここに告白しておきたい。
つづいてお目当て、古今亭志ん公は「湯屋番」。
今年はたびたび登場してもらう予定なのであらためて紹介しておけば、古今亭志ん公は現在二ツ目(東京の場合、前座二ツ目真打と三段階で出世する)。静岡県藤枝市出身で、1977年2月生まれだから歳はわたしの1コ下になる。1999年3月、古今亭志ん五に入門して「いち五」。何の噺だったか忘れたが、いち五時代に一度高座を観ていて、前座にもかかわらず〈いたたまれない思いにならなかった〉のを妙に記憶している。2003年5月、二ツ目に昇進して「志ん公」。わたしがふたたびその高座に接したのは 2008年12月で、志ん五の独演会に行ったさいに「厩火事」を聞き、「いまだ何の色にも染まらずにまっすぐ上達しているという印象の高座姿と口跡。また五年後に出会えばものすごいことになっているんじゃないかと思わせる」とそのときの日記には書いている。2010年9月、志ん五の死去により古今亭志ん橋門下に移って現在に至る──
いま誰が〈贔屓〉かと──まあ、訊かれやしないのだが、もし──訊かれれば、その名を答えようと決めているのが志ん公で、それはつまりわたしが、「〈古今亭の正調〉はきっといつか、かれにこそ宿る」と信じる者だからだ。ここでいう〈古今亭の正調〉とはむろん、志ん生=志ん朝=志ん五というその系譜のすべてを射程に含むある種の〈理想〉のことで、たとえば 2008年7月30日、志ん五の「ねずみ」を聞いたときに震え、「これなのではないか」と予感されたもののことである。というような野暮な大風呂敷を勝手に広げられて、かえって迷惑するのは当の志ん公さんなのではないか、ご祝儀を包んでいるわけでもなし、おとなしく見守っといたらどうなのかというのは書きながら思ってもいるが、まあ、ここにひとり、勝手な〈好み〉でもってそう考えている客があるのだと思っていただきたい。
でもって、2008年12月の日記に「また五年後に出会えば」と書いているわたしの言葉を自ら典拠とすれば、「ものすごいことになっている」のは 2013年12月という計算だ。わりあい計算は合っているのかもしれず、来年、もしくは再来年あたりの真打昇進というのは考えられるところである。この春には春風亭一之輔が、秋には古今亭朝太と古今亭菊六が、それぞれ(順繰りの昇進ではない)抜擢真打に予定されていて、そのうちの一之輔と菊六には香盤で抜かれるかたちになるのだけれど、ま、そんな目先のことはかまやしない。かまやしないというか、秋には古今亭のふたりの披露目を大いに支えてもらいたいと願うのであり、そのことをつうじて、いよいよ力を付けてもらえればと願うのだ。ってだから誰なんだおれは。
とにかくもうひと段階、(できれば二ツ目のうちに)ぐんと伸びるときがあると期待するのであり、かなうならぜひ、その瞬間に立ち会いたい。いま、読者を置いて、あきらかにわたしがひとり盛り上がっているのは承知しているけれど、ものはついでとばかりに夢想を語っておくなら、真打昇進時の名前はやはり、「志ん三」1]がいいんじゃないか。重みでいうと二ツ目の名前なのかもしれないが、重い名前はまた先で継げばいいとして、なんかなあ、「志ん三」ってあたりがなあ、志ん公のイメージにはぴったりはまるように思われるのだ。

1:志ん三(しんざ)

志ん五の前名で、二ツ目に上がるときに「高助」から「志ん三」に改名。「志ん五」は自分で勝手に改名したものなので、師匠からもらった名前というとこっちになる。変則な改名だし具体的なタイミングがもうひとつ知れないのだが、真打になる直前ごろなのか、師匠には何の相談もなしに、「三丁目」から「五丁目」へ引っ越したからと「志ん五」に改名して大しくじりになったというのがよく語られるエピソードである。「志ん三」だとしょっちゅう「しんぞう」と読み間違えられるのが嫌だったというのが当人の本当の改名動機で、転居の件はたまたまの後付けだったらしい。『よってたかって古今亭志ん朝』などより。

というわけでやっとこさ、今日の「湯屋番」である。マクラも入れて35分ほど。こまかいことを忘れさせるライブの力も感じて満足(わたしが)の出来。「釜を損じて早仕舞い」のくだらなさがきまっていた。マクラも含め、やはりわたしにはこのひとの調子が心地よいのだった。こまいかいことというのは前半、とくに出だしの若旦那で、なにやら「抜け目ない」やつが出てきたような印象があり、「若旦那はぼんやりしている」ということを言ったマクラのあとではなおさらちょっとひっかかった。そのイヤったらしい抜け目なさも込みで「どうしようもない」やつなのだというのはおいおい知れてくるものの、うーん、何かもうひと工夫、第一声にあるような気がするのである。
終わってとんぼ返りで立川へ。そこからまたすぐに出かけて渋谷。ルアプル(遊園地再生事業団の制作グループ)の今年最初のミーティングがあった。その席で笠木さんに「来年の誕生日プレゼント」を渡す。雑誌『SWITCH』のバックナンバーで、古今亭志ん朝を特集した号(冒頭に載せたのが表紙)
1994年1月号だから高校三年のときの雑誌。こういうものが出たというのは長兄に教えられたはずで、土曜に、小山の駅ビルの本屋で購入した記憶がおぼろにあるもののそのへんはちょっとあやふやだ。あるいは兄にもらったのかもしれない。「まんじゅうこわい、志ん朝こわい」と題された弟子たちの座談会には、右朝(2001年歿)、志ん上(2001年廃業、のち9代目桂文楽門下として復帰し「ひな太郎」)もいて、まだ志ん馬(先代志ん馬の死去にともない 1994年8月に移籍)、朝太(1998年入門)の顔はない。志ん朝に密着取材した「古今亭をめぐる冒険」という記事は、のちに『師匠噺』(河出書房新社)などを出す浜美雪さんの『SWITCH』編集者時代の文章だ。
来週末にはまた志ん公を聞きに行く。日暮里にある「くにみ」という鰻屋での落語会(鰻重付きで 4,000円)だと妻に言うと、「じゃあ、あの幇間(たいこもち)のハナシ?」と妻。「鰻の幇間(たいこ)」のことを言っているらしい。なかなか、そこいらの主婦の口から出る返しではないものの、まあその、あれに出てくるのはダメな鰻屋だし、幇間が腹立ちまぎれにそれをくさすしね、「鰻屋にちなんで」演るというのにはちょっとあれじゃなかろうか。
ロビンさん(猫)、誕生日。といっても飼いはじめたときに妻が勝手にそう決めた日ということだが、まあ、15歳。

きょうのひとこと

なんのこんだか知んねえけどもよ。(5代目柳家小さん「試し酒」)

本日(15日)の電力自給率:19.2%(発電量:6.3kWh/消費量:32.7kWh)

(2012年1月19日 20:43)

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/ 13 Jan. 2012 (Fri.) 「うどんやさぁーん」

わたしがフライブルク・バロック・オーケストラについて(?)の日記を書いていたそのころ、ツイッターではどうやら、「NYフィルの公演中に携帯の着信音、指揮者が演奏中断」というニュースが話題になっていたらしい。例によってその見出しと当該記事にのみ反射的に反応していると思われるつぶやきは多いが──まあ、えてして反射的に出るのが「つぶやき」だが──、続報にも目配せをすれば、まず鳴ったのは着信音ではなくアラームで(件の携帯というのは iPhone なのだが、iPhone のアラームはマナーモードでも音が鳴る)、また、音を鳴らし続けたこの年配男性は楽団員とも顔見知りの、ニ十年来の定期会員であったという。携帯を iPhone に代えたばかりだったという話もあり、それらを総合して、かれ──人並み以上に音楽を愛しながらも、テクノロジーに愛されなかったかれ──は、なぜ(あるいはそれ以上に、どこから)音が鳴っているのか、ほんとうにわからなかったのではないかというのがおおよその見方であるようだ。(それ以降の記事は追っていないが、13日時点のものでいえば「ニューヨーク・フィルのマーラー9番携帯電話事件」や、「ニューヨーク・フィルの『iPhone 着信音事件』、その時指揮者は?」などを参照のこと。)
ともあれ、マーラーの交響曲第9番、しかもその第4楽章でというのがじつに(知らないけど)最悪なタイミングであるらしく、

交響曲は最後のクライマックスを過ぎて「音楽と静寂が入り混じる」極めて繊細な場面。
NYフィルの公演中に携帯の着信音、指揮者が演奏中断 (CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

マーラーが「死に絶えるように」とメモ書きの指示をつけた緩やかな第4楽章が終わりに近づき、聴衆が弱音に耳を澄ませている、そして[引用者註:指揮者の]ギルバート氏としては「第4楽章を遅めに」という解釈の最後の仕上げに集中しているその時に、
ニューヨーク・フィルの「iPhone 着信音事件」、その時指揮者は? | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

とおのおのの記事は説明するし、この件にかんするつぶやきをツイッターで検索しても、その多くが口を揃えたように、「よりによってマラ9の終楽章で」という言い方をしてみせていて、それでわたしは知るのだが、マーラーの交響曲第9番はどうやら、その方面で「マラ9」と呼ばれているらしい。
でまあ、これ、寄席や落語会での出来事に置き換えるなら、その場合の「マラ9の終楽章」というのは何にあたるのだろうかと考えてしまうのはいま、わたしがばかになっているからだが、声と静寂が入り混じり、聴衆が弱音に耳を澄ますといえばやはり、「うどん屋」のラストだろうか。(いやまあ、まじめに状況を置き換えるなら、たぶん談志が「芝浜」で、「百八つ…………百八つ」とやってるところあたりなんでしょうけどね。)
という話をマクラに、わたしが書こうと思ったのは昨年末に聞いた志らくの「芝浜」のことで、ついついマクラが長くなってしまったからこの話はさっと済ませたいものの、あのとき、じつはわたしもちょっとした聴取妨害に遭っていたのだった。
というのは、目の前の席に座った二人組のおばさんの片方が、連れにたいして小声で、「あたしこの噺聞いたことあるわ」とか、「ああ、談志さんで聞いたんだわ。このひともタテカワよね」といった調子のことを話しかけるのであり、そう頻繁ではないものの、話し出すとそこそこ長く話しているのが厄介きわまりない。携帯のアラームとは比ぶべくもなく、前後の一列ずつが被害を受ける程度の規模だが、迷惑なのはむろんで、噺の後半になってしゃべり出したときにはわたしのふたつ隣に座っていた初老の男性が、座ったままいきなりそのおばさんの席の背凭れを蹴ったのでそのことにもおどろいたけれど、けっきょくおばさんには伝わらなかった様子で、また、最後の最後でしゃべり出した。
それで、じつをいうとその日、わたしはそのおばさんのせいで「夢ンなるといけねえ」をあまり味わってないのだったが、まあ、ひとつにはそこに至るまでにすっかり満足させられていたということがあって、そのときはいっそ、「きょう、ここは、ある〈期待〉や〈想い〉を胸にした客ばかりで埋まっているように見えて百パーセントそうではなく、こういった客もまたきっちり居合わせて、そうか、やはり〈他者〉へも開かれているのだなあ」ということをこそ、暮れの空気のなか、やや感慨深く思っていたのだった。

本日(13日)の電力自給率:31.0%(発電量:12.9kWh/消費量:41.6kWh)

(2012年1月17日 19:06)

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/ 12 Jan. 2012 (Thu.) 「年賀ジョッキー」

そうだ、届いたのはきのう 11日のことだが、京都の児玉(悟之)・山村(麻由美)さんから年賀状の返信があって、そこに描かれていたペン画のもきち(ふたりの飼い猫)が抜群にかわいかった。もきちというか干支の龍なのだが、その顔や体つきがもきちを模していて、もきちだから鼻はもちろんピンクだし、龍だから手には玉をもって、空を飛んでいる。「謹賀新年!」の挨拶も手慣れて、「謹」の字が若干怪しいとはいうものの、干支までつとめようという猫はやはりちがうなと思わせるその物腰である。
と、そんなことを書きながら、ふと思いついたのは、年賀状を読み上げることでディスクジョッキーが成立しないだろうかということだ。
えー、「謹賀新年」ということで、これは栃木市のかたですね、年賀ネーム田村さんからいただいております。「本年も宜しくお願い致します」。よろしくお願いします。金色に輝く初日の出のイメージでしょうか、それをバックに、大きく豪快な字で「龍」と書いてくださっています。ありがとう、田村さん。
つづきましてこれは大田区の吉沼さんから。こちらも「謹賀新年」ということでいただいております。写真ですね、吉沼さんは。梅の花でしょうか、少しだけかぶった雪がもう解けて、そのしずくを枝に滴らせているという風情で、それと「2才になりました」とあるのは息子さんですかね。「TAKE IT EASY」と胸にプリントされた長袖を着ていらっしゃいまして、斜め上を向かれてにっこりされています。「たまにはみんなでのんびり温泉でも行きたいもんだね。今年もよろしく!」ということで、えー、よろしく!
それからこれは世田谷区、宮沢信子さんからの投稿。まあ、おそらく龍なんでしょうね、ロールシャッハテストのような版画に「寿」の印が押されてありまして、「平安を祈ります」とのことです。ありがとうございます。
もう一枚いけますかね。同じく世田谷区松原の上村さん。住所に「引っ越しました」とあるので引っ越されたんでしょう。この住所に引っ越したのかな? それともこの住所から引っ越したのかな? どっちでしょう。えー、こちらも「謹賀新年 2012」ということでいただいています。ありがとうございます。
てな感じの。
本日(12日)の電力自給率:36.9%(発電量:12.7kWh/消費量:34.4kWh)

(2012年1月15日 00:51)

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/ 11 Jan. 2012 (Wed.) 「フライブルクってみた」

終演後にアンコールの曲目が貼り出され、それを携帯のカメラで撮るひとがいるというのは落語会の風景と同じ(落語の場合にはそれぞれの演者と演目)。とある知人の Twitpic から拝借。「字が幼くて面白い」と知人。

夜、初台の東京オペラシティ コンサートホール。「フライブルク・バロック・オーケストラ」。いつだったかしばらく前にツイッターで、とある知人がチケットを取ったとつぶやいていたのだ。それで行ってみた。ことによると、「フライブルク・バロック・オーケストラ」というその名前の響き自体にもどこか──どこだ?──惹かれるところがあったのかもしれない。というのは、ツイートと、ツイートに添えられたリンクから飛んだ質素な公演案内ページ、そこに貼られてあったチラシの画像だけでもって即決したからで、何しろ知らないのだし、名前ぐらいしか判断材料がなかったようなものだからだ。って、あんまり名詞を連呼しているとまた、中身もないのに Google に掴まってはずかしいことになるからやめておくけれども、ともあれ、「フライブルクならな、いいんじゃないかな。バロックだし。大勢いるみたいだしね」と、その方面に何の知識ももたないわたしはそう考えたと思っていただきたい。
しかしあれだね、知らないというのは楽しい。まずもって曲を知らないから、どこで拍手したらいいのか、いったい終わったのかどうかがわからない。「管弦楽組曲第3番 ニ長調」というのが途切れ無しに 23分間つづく曲だと考えるのがどだい間違いなのであって、さらにいくつかの曲にわかれており(書いていて気づいたが、「組曲」って言ってんだからそりゃそうだろうさ)、それらの曲はわりと突然、すっと終わる。が、「管弦楽組曲第3番 ニ長調」というまとまりはまだ終わっていないから、そこではまだ拍手しないのがここいらの大人の振る舞いなのだった。
と、そんなことを書いている者が当日の曲目を書き写すことに意味などあろうはずもないが、まあ、

  • J.S.バッハ:
    ・管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068
    ・管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV1067
    ・管弦楽組曲第1番 ハ長調 BWV1066
    ・管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV1069

ということだったらしい。わたしのほうから付け加えることはとくにないけれど、強いて言うなら、ついつい「名曲アルバム」を思い浮かべたくなるのがニ長調ってやつであり、ロ短調はドラクエに想像をのばしやすいということだろうか。
あとまあ、門外漢としては、周囲から聞こえてくる「知っている」ひとたちの会話もまた楽しい。となりの席は壮年といった感じのご夫婦だったが、ご主人は「あそこ」と言って舞台上のどこかを指し、「ほら、いつもはあそこにあるんだろ、床ってことはないよ」と言っていた。応えて「床じゃないの?」とは奥さんの言葉だ。いや、たまさか耳に入った言葉をいまうろ覚えで書いているからほんとうはそんなことを言っているのではなかったかもしれないが、とかく門外漢を魅了するのは、そうした会話のなかにもどことなく響く〈かれらの了解事項〉的なるものである。
えー、いまさらあれかもしれないですが、よかったです。「音に包まれる」というようなのを想像していたのだけど、そうではなかった。そこで鳴っている、というあたりまえの感じ。そのごくあたりまえの感じが、いっぽうで僥倖にめぐりあったような奇跡を思わせもする。愉しげで、すっとしていて、やはり愉しげ。フライブルク・バロック・オーケストラ。よかったらみなさんもぜひ(今回が初来日で、残る公演は14日の三鷹[完売]と、15日の札幌だけらしいですが)
本日(11日)の電力自給率:29.3%(発電量:10.2kWh/消費量:34.7kWh)

本日の参照画像
(2012年1月13日 23:09)

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/ 10 Jan. 2012 (Tue.) 「新年だよ」

正月に編み上がったヒロイさんの新作。手袋。

4日が誕生日の笠木さんに本を贈る。写真は笠木さんの Instagram から拝借。

iPhone 4S とみまもりケータイ。本文にあるとおりそれぞれ義母用と義父用である。

ムスカリ。

どうも。そういうわけでございまして、明けましてから暮れの書き残しの日記をいくつか更新しておりましたけれども、ここいらで、そろそろ新年でございます。旧年中の日記ではほんとうにもう生意気なことばかり書いていたなと、いま、反省しきりなわけでございまして、今年はといえばもうごくごくつつましく、大きなことは言わずに、粛々と、更新していければと考えているところでございます。正月三日になってから作りまして、四日の朝に投函しました年賀状が右のものでございますけれども、まあ、どうということはございませんで、ええ、まあ、そろそろまいりましょうか、いつものように。

1日(日)

例年どおり大晦日に帰省してわたしの実家(茨城県筑西市)で年を越す。夕刻に東京にもどった。[電力自給率:50.0%(発電量:8.9kWh/消費量:17.8kWh)]

2日(月)

ごくごく怠惰に。ほんとうはこの日、〈志ん公初め〉のチャンス(芝神明新春寄席、12時開演)でもあったのだが、そもそも起きた時間が遅かった。[電力自給率:35.1%(発電量:9.2kWh/消費量:26.2kWh)]

3日(火)

4日が誕生日の笠木(泉)さんに贈ろうと、吉川潮『江戸前の男──春風亭柳朝一代記』(新潮社)をアマゾンで注文する。「そうだ、あれにしよう」と気安く決めたあとで絶版なのを知り、マーケットプレイスの古本で手を打つ。アマゾンの配送センターに在庫をもつ店を選べたので「お急ぎ便」を指定できたものの、あと一歩及ばず、5日到着の便になる。
『江戸前の男』は先代(5代目)柳朝の評伝であるのと同時に、8代目の正蔵襲名から協会分裂騒動あたりまでの〈時代〉を追って手頃な見取り図のようなところがあり(木久蔵や好楽、小朝といった名前を立体的にマッピングできるようになる)、そういう意味でも「ニューカマー笠木」に最適なのではないかというチョイスだ。
夜、年賀状作成。[電力自給率:34.4%(発電量:10.3kWh/消費量:29.9kWh)]

4日(水)、5日(木)、6日(金)

4日から出社して会社に二泊。
ところで『江戸前の男』だけど、まあ、絶版だし、笠木さんがすでに同書をもっている可能性はうすいとはいうものの、万一もっていたらどうするかということをいまさら考えた。落語関連のこれぞというもので、まず間違いなく笠木さんの蔵書にないもの──と考えるうちにひとつ浮かんだのだったが、こっちはマーケットプレイスにごろごろ出品されている『江戸前の男』とはわけがちがう。Yahoo!オークション、楽天、スーパー源氏……といろいろ見て回るも(タイミングもあるのだろうが)なかなかない。やっと一冊、「ふうらいまつ」という古本屋のサイトに見つけたときには思わず知らず注文してしまった。
どうするんだこれ。
というわけで、来年の誕生日プレゼント──プレゼントするにはちょっと経年劣化の大きい、古い雑誌なのだが──もすでに用意できてしまったわたしである。というか、〈いま、落語に貪欲〉な笠木さんのこと、いつそれを入手するともかぎらないことを思えば、早々に、適当な口実を見つけてあげてしまうのがいいのではないかとも思う。何かないか、いい口実は。クリスマスプレゼントでもいいが、そこまで待つならもう誕生日でいいのではないかという声は世間に多い。同様の理由でお歳暮もだめだな。どうしたもんかと悩むわたしである。
6日夜には今年はじめての「バンコク屋台料理 カオマンガイ」。テイクアウト。[電力自給率:4日=28.7%(発電量:11.0kWh/消費量:38.2kWh)、5日=40.6%(発電量:12.8kWh/消費量:31.5kWh)、6日=33.7%(発電量:11.4kWh/消費量:33.8kWh)]

7日(土)

昼前に歯医者。
三年前と同じフルーツロールケーキを手土産に、三年ぶりで妻の実家(埼玉県北本市)に帰省し、すき焼き、カニ、寿司でもってこれでもかともてなされる。17時半から食べはじめ、19時すぎには満腹、うっかりこたつで横になったところが長いこと寝てしまい、気づくと 23時すぎ、TBSの「芸能界特技王決定戦 TEPPEN」ではけん玉が佳境というところだった。1時ちかくになって寝室へとひきあげ、ふとんのなかで日記(12月21日付)を更新。[電力自給率:48.6%(発電量:13.1kWh/消費量:26.9kWh)]

8日(日)

昼すぎまでふとんでぐずぐずしているうちに、階下では義母が iPhone 4S を買うということで話がまとまっていた。そもそも義母は(義父も)これまで携帯をもったことがなく、妻が立川で買って、もろもろの設定を済ませてから後日引き渡す作戦である。義母の iBook G4 は三年前の帰省時に 10.5 へ上げてあったから、いちおう iTunes もシステム要件を満たしてはいる。
というわけで夕刻に帰京後、その足で iPhone 4S の白を手に入れる。義母がもっている妻名義の銀行口座から料金を引き落とすかたちで、妻がじぶんの名義で契約。キャンペーン中につき、むこう 2年は月額 5円のみで維持できるという「みまもりケータイ」を店頭で勧められ、義父にもたせるにはぴったりだということでこれも併せて契約する。
みまもりケータイのインターフェイスはボタンがひとつだけ、それを押すとオーナーとして設定した携帯に電話がかかる。発信できるのはその1件にたいしてのみで、着信は登録した20件の番号からのものを受けられる。デフォルト設定では発信のたびオーナー携帯宛に有無を言わさず位置情報付きのメール(SMS)が届くほか、ボタンを無効にする誤動作防止用のロック機能がなかったりと、まあ、万事そういう調子(持ち主をとことん信用しない作り)の携帯である。
ビックカメラで買い、その30分ほどの待ち時間のあいだに妻は「マリオカート7」を購入。
ところでわれわれ夫婦はいまだ iPhone 3GS のまま。まあ、ここまで来たら(今夏とも今秋とも噂のある) iPhone 5 待ちのかまえである。[電力自給率:51.6%(発電量:12.2kWh/消費量:23.6kWh)]

9日(月・祝)

夕方、相模原市は大沼公民館なるところへ行ったのは、来週そこで開かれる「新春大沼寄席」という催しに古今亭志ん公が出演するからで、直接、公民館の窓口でしか入場券(100円)を配布していないからである。立川からだと八王子に出て、八王子から横浜線で相模原、そこまでなら片道30分でわりあい近いのだが、さらに相模原駅からバスで25分かかることは確認していなかった。遠いじゃないか。
で、窓口に着いてみると完売だという(定員 120名)。「毎回早くになくなっちゃうんですよ」と窓口のひと。そうなのかあ。ただまあ、そうはいっても〈ゆるい〉催しにはちがいないようで、「早くに券もらって、忘れて来ないかたもいらっしゃいますんで」と窓口のひとは言い、当日来てもらえば入れるかもしれないし、外の大きなテレビにも映すから見られますよと案内はごく気安い。よもや片道一時間超かけて聞きに来ようというばかが相手とは思われていないようで胸を撫で下ろす。
ちなみに新春大沼寄席はネタ出しされていて、志ん公は「湯屋番」。その前座として、おそらく天狗連なのだろう白雪亭杏仁というひと(検索してみると桜美林大学の落研らしい)が「寿限無」を演り、その二席のみだ。まあ、ひとまず来週は行ってみようと思うのである。[電力自給率:41.2%(発電量:12.2kWh/消費量:29.6kWh)]

10日(火)

前夜に妻が風邪かもしれないと言いだし、そんな感じがする、だるいという以上にとくに症状はないものの、まあ、ひさびさ、「見舞い」と称して花を買って帰る。ムスカリ──よく知らないが、春の花だと花屋のポップは言う──の鉢。見せるなり、「あ、ムスカリだ」と妻は言い、どうやらムスカリは有名らしいのだった。
ところで下の動画(音声のみ)は、1956(昭和31)年12月24日、神田のうなぎ屋「神田川」にてラジオ用に収録が行われたという(5代目古今亭)志ん生と先代(3代目三遊亭)金馬の対談。とにかくゾクゾクっとなるのが、高座の印象とも少しことなる志ん生(当時66歳)の犀利なしゃべりである。口調は近年のビートたけしさんを思わせる。でもってね、相当考えてる。相当落語のこと考えてるよ、このひと。ちなみに、終始「バリバリ」と音がするのは、どちらかといって考えてないほうの金馬(当時62歳)がお新香を食っている音らしい。

きょうのひとこと

慎ませやがんだよ(3代目三遊亭金馬、対談より)

本日(10日)の電力自給率:34.2%(発電量:9.6kWh/消費量:28.0kWh)

本日の参照画像
(2012年1月13日 13:29)

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