/ 27 Sep. 2008 (Sat.) 「多忙のさなかの本と映画」

ロベール・ブレッソン『罪の天使たち』(1943年)
■九月になったらまた書こうと思っていて、ずるずると、さらに十日ばかりも過ぎた。
いちど日記を更新しようとして下書きをしたさいにはこう書き出していたものだったが、それからさらに二週間が過ぎてしまった。
■長らく書けなかったのはつまり、書かなかったということはおそらく、いそがしかったのだろう。いそがしさは少しも減じていないどころか、いったいいままでのどこがいそがしかったというのか、ここから先、いよいよではないかと気色ばむ、そのさなかにかえっていよいよ「元気」が兆すのは、いまもっぱらドゥルーズのおかげと言っていい。(日にちを付すことにまったく意味はないものの)3日に、またどかんと本を買った。夜、新宿東口の紀伊國屋書店に行った。レジではしきりに「無料で配送も可能です」と勧められたが、持って帰らずになんのための本屋か。
- ジル・ドゥルーズ+クレール・パルネ『対話』(河出書房新社)
- アラスター・グレイ『ラナーク—四巻からなる伝記』(国書刊行会)
- キャリル・フィリップス『新しい世界のかたち—黒人の歴史文化とディアスポラの世界地図』(明石書店)
- 栗原裕一郎『〈盗作〉の文学史』(新曜社)
- 『現代詩手帖特集版ブランショ2008 ブランショ生誕100年──つぎの百年の文学のために』(思潮社)
- 『現代詩手帖特集版ブランショ1978 ブランショ──不可能性の彼方へ』(思潮社)
『対話』が、どうしたことだろうかというほどにすいすい読め、だからといって「わからない」ことに事態はさほど変わりないし、「わかる」などと大層なことを言うつもりもないが、しかしたしかに言葉が「入ってくる」という体験はドゥルーズでははじめてだから、いったいこれは何事かということになり、ひょっとして、このまま『アンチ・オイディプス』も読めてしまうのではないかという静かな興奮さえ起こる束の間の読書である。
■さらにいきなりなことを言わせてもらえれば、映画は面白いね。もう終わってしまったが、有楽町朝日ホールでは日本未公開の13作品を集めた映画祭「フランス映画の秘宝」が先日まで開かれていた。また、東京日仏学院ではジャック・ドワイヨン特集が組まれ、ユーロスペースではまもなく上映権の切れるらしいエリック・ロメール作品群の日本最終上映が行われていた(いずれも終了)。まさに多忙を極めていたさなかの13日、朝から出かけて有楽町でロベール・ブレッソン『罪の天使たち』(1943年)と、ジャック・ドワイヨンの新作『誰でもかまわない』(2007年)、渋谷に移動して、妻とふたりでエリック・ロメール『パリのランデブー』(1995年)と、その日一日だけはただスクリーンをみつめてすごした。『罪の天使たち』で号泣。やられた。「今日がその百年の一日目だからよ」というセリフでだいぶまいっていたところ、ラストの移動撮影、そしてまさにラストの画面とで堰を切って涙があふれた。
■「フランス映画の秘宝」で上映された作品のうち、
- 『罪の天使たち』(ロベール・ブレッソン、1943年)
- 『あなたの目になりたい』 (サッシャ・ギトリ、1943年)
- 『三重スパイ』(エリック・ロメール、2003年)
- 『最後の切り札』(ジャック・ベッケル、1942年)
の四本(予定)は、シネマテーク・プロジェクト第一弾としてこの秋から全国を巡回するらしい。東京近郊では来年一月に川崎で上映されるほか、アテネ・フランセ文化センターでも上映があるとのこと。
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