/ 28 Sep. 2008 (Sun.) 「句会だった」
■「句会」だった。と、ついつい括弧にくくりたくなるのは、それがたいしてまっとうな性格のものではないからだが、開催するのはこれが四回目となる。前回が去年の秋。今回、七月のはじめに話が持ち上がったときにはまだ夏も本格的には到来しておらず、かぁーっと照りつける底抜けの太陽はおもに想像のなかにあって、先の夏を想い、いっそ句会を海でやるのはどうか、その場合には、ただ、句会の最中は泳ぎとか禁止にしないと駄目なんじゃないか、禁止しないときっとみな泳いでしまって句会どころではないだろうし、泳ぐことにべつに反対はしないものの、あるいは寝そべり、肌だけ焼いて帰る者など出ればそれはどこか腹立たしい。そこはまあ各自節度をもって、たとえばビーチボール類の持ち込みもひとり2個までと決めようといった具合に、「なにより、気持ちのいい場所はいいよ」ということの前に私も、共同主宰の吉沼もどこかウキウキと浮かれていたものだったが、結局日々は目の前を過ぎていって、「夏の終わり」さえ過ぎ、「秋」へと大きく踏み込んでもう戻らないと印象づけるような気候の、本日を迎える。
■直前に都合が悪くなった人や、体調を崩した人などもあって、結局参加者はこぢんまりと6人。主催側から私と吉沼夫妻、あとはみな初参加で、細江(祐子)さん、田中夢、と、荒川。そこに、当日来られず「句のみ」の参加として南波(典子)さん、大竹君、上山君が加わる。
■お題は、「夏休み」、「昭和」、「家電」、それと自由詠で、下記の18句が集まった。
【夏休み】
スコールに掻き消されてく蝉と君(田中)
ピノキオの肩にふるふる蝉時雨(南波)
かき氷プールに咲かせる舌の花(荒川)
大玉の西瓜の重さ赤子の丸み(田中)
雷鳴の連れたる涼と父網戸越し(相馬)
【昭和】
夕暮の台所にある戦後かな(吉沼)
シャボン玉ルルルルルルル熱帯夜(相馬)
はやりの眼鏡 かけて際立つ 昭和顔(細江)
8時だよ オレたちひょうきん おかげです(荒川)
【自由】
新発売岩にしみ入蝉の声(吉沼)
【家電】
ぽこぽこと 加湿器の音 たゆたう夜(細江)
コンパクトシュレッダーのごと夏割いて(相馬)
自走式母型ミシン回収へ(吉沼)
無線IPひかり炊飯オブレフォン(上山)
配線は完璧なのに返事来ぬ(田中)
ハイビジョン? フルハイビジョン? 綺麗だねぇ(荒川)
生きてみて首縦に振る扇風機(大竹)
ピアノ、ミシン、ピアノ、ピアノだピアノが先だ(南波)
これらの句をひとつずつ前にして、参加者でああだこうだと合評するのが会の趣旨である。夜、投句一覧を見た(合評には不参加の)上山君からは、南波さんの「ピアノ、ミシン、…」がいいねというメールがあった。また吉沼は、「句としては『スコールに』が一番よかったかな」と田中さんの句を挙げつつ、「やっぱり、普通にいい句というか、まじめに作った(風な)句の方が盛り上がるんじゃないでしょうか」とメールに書く。まあね、そこのさじ加減はむずかしいというか、逆にそこをねらい、合評段階での〈読みの幅〉みたいなものに資するような句を、と意識してみては毎度失敗し、たんに「ふつうの句」になっているのが私だ。そんな計算は要らないのかもしれないなといまさら反省する。そこへいくと、吉沼の「新発売…」や、大竹君の「生きてみて…」は、その実直さにおいて私にはとても好ましいものに映る。
■終わって、会場(森下にある江東区の公共施設を借りた)のちかくにあった焼鳥屋に移動、しばし歓談。ホストとしては毎度、初参加者の顔色が気になるが、細江さんも田中さんもそれぞれに楽しんでくれたようではあり、まあ、ほっとする(というか毎度、俳句というジャンルそのものの娯楽性に助けられている)。荒川は荒川で楽しんでいたようだし。
■さて、次回、どうしようかと考える。あまり間を置かず、冬にでも声を掛けてみようか。あるいは大晦日、カウントダウン句会はどうか。紅白に分かれて詠もうじゃないか。はたまた新年…と言っているうちにまた時間は過ぎていくだろうか。
■参加者のみんなと別れてから、私は初台へ。宮沢(章夫)さんのお宅に寄り、貸すことになっていた赤塚不二夫の本を届ける。結局二時間近くも居たか。ときおり、強く笑ったときなどに胸に手を添える仕種が見られ、そうしたところで「術後」であることを思い出しはするものの、まあ、傍から見ているぶんにはお元気そうで、というか、いっとき、「そうはいっても気が気でない思い」にふと襲われ、不安を味わわざるを得なかった身のひとりとしては、まさに「生還」されてそこにいるということがまず僥倖であり、よろこばしいかぎりである。といったことは、面とむかってちっとも口にしてはいないものの。
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