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Feb.
2017
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/ 24 Feb. 2017 (Fri.) 「バストリオが時計を手放すとき」

ロビンとわたし。2005年5月。

夜、バストリオの新作公演『 TONTO』を観に、早稲田小劇場どらま館へ。
まずはあらためまして新穂(恭久)君、黒木(麻衣)さん、チラシよかったよ。予算の都合で表面のみになり、すべての情報を片面に入れなくてはならないことからああしたデザインになった、というのは言われてはじめて「あ、そっか」と気づいた次第だが、相当な結果オーライじゃなかろうか。
最後に観たバストリオはたぶん 2014年の『 Alice, where are you going?』で、それ以来のはずだからずいぶんひさしぶりである。遠のいていたのはたんにわたしの怠惰と、その他のやむにやまれぬ事情による。その前は皆勤にちかく観ていた時期があり、2010年には『まるいじかんとわたし』という公演を京都まで観に行ったりした。のち、その『まるいじかんとわたし』に寄せた文章を頼まれて、彼らのサイトのために書き、載っけてもらったりもした。で、その文章だけど、バストリオのサイトがリニューアルされて以降、どこに載ってるのか見つけづらい(検索してここに残っているのは見つけたが、サイトのトップからここに辿り着く動線がない?)ことにもなっているので、こちらにも掲載しておくことにする。もしよければお読みください。当時いっしょうけんめい書いたものです(当時からいまに至るまで、言ってることが変わってない気もしますが)
さて、『 TONTO』。「とんと」は焚き火の意とのこと。すると「どんど焼き」とか「とんど焼き」とか言ったりする(うちのほうでは「どんどん焼き」だった気がする)あれか。
今回もまた舞台上には、すぐ目につく位置に時計──小道具として物語内の時刻を示すそれではなく、現実の現在時刻を示して動いているそれ──がかかっていた。わたしの知るかぎり、バストリオの舞台にはいつも必ずこの「時計」が存在するように思うのだが、それはきっと、この時計の存在が彼らにとって、ある種の宣言のように機能するからだろうと思われる。バストリオにおける時計が象徴しているのはおそらく、時間ではなく場所──同じ現在時を共有してこの瞬間に無数に存在する、ここではない場所──である。すなわち、この上演の瞬間にも〈彼方〉で生起している(だろう)出来事について、われわれは想像することを手放してはいないという決意と宣言が、あの時計には託されているようにわたしには思われる。
けれどもいっぽうで、外部にむかって開かれたこの時計という窓とひきかえででもあるかのように、舞台の内部においてはいっこうに時間が堆積しないという事態が起こりもする。「夢」を題材とした『 TONTO』においてそれはより顕著だったということか、そこにおけるイメージの連なりは、そのテキスト量にもかかわらず、時間としてある一定の幅をもつことを拒みつづけているように見えた。それは夢として、成功だったのだろうか、失敗だったのだろうか。失敗だったとすれば、わたしの──醒めることのできなかったわたしの──失敗だろうか。『夢十夜』から引かれた「百年」の言葉が百年の射程をもつことはなく、上演時間の 90分は計量されたとおりの 90分としてそこに横たわっていた。それは誠実なことのようにも思えるし、むしろ不誠実なことのようにも思える。仮に不誠実なのだとしたら、それはわたしの不誠実さか。
はたして、バストリオがあの「時計」を手放すことはあるのだろうか、手放したとき、それはどんな舞台になっているだろうかと夢想する。それはもはや「バストリオではない」のだろうか。そのようにも思えるいっぽうで、バストリオならばじつに軽やかに、あるとき、時計を手放してみせるような気もする。
と、何やらあらぬ方角へと向かいつつある感想/夢想だが、ともあれ第七夜の松本一哉さんによる独白と、第九夜の橋本(和加子)さんの夢語りがよかった。やっぱりそうだ。いつだって最後の最後、〈なけなしの物語〉をしっかりと駆動させる役目は橋本さんのものなのだ。
これもまた率直な感想としてぜひ言い添えておきたいのだが、酒井(和哉)君がよかった。とてもよかった。うまいとさえ感じた。そして、ふたつに分かたれた舞台のあいだの溝に落ちる、その落ち方がとてもよかった。「あ、落ちた」と思わされた。
形式としての時計を手放して、舞台の内部、なけなしの物語のうえに積み上がった時間の先に、不意に彼方の土地が像を結ぶ。そんなバストリオも観てみたい──あるいは今度こそ百年後に。『 TONTO』の焚き火のうちに、もう、百年が経ったのかもしれなかった。
そんな夢を見た。

橋本
こんな夢を見た。いつもと同じように眠るようにそのまま眠ってしまう。魂だけになって、次に生まれ変わるまでには宇宙とかに行って、何十年か何百年かしたらまた生まれ変わる。あ、向こうに家族みんなが並んでいるのが見える
Walking: 4.7km • 6,320 steps • 1hr 4mins 36secs • 224 calories
Cycling: 2.5km • 12mins 55secs • 55 calories
Transport: 64.8km • 1hr 32mins 45secs
本日の参照画像
(2017年2月28日 01:00)

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