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Feb.
2019
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/ 23 Feb. 2019 (Sat.) 「かが屋、取れず(代わりに去年の感想を)」

かが屋。加賀翔(かが しょう・左)と、賀屋壮也(かが そうや・右)。

第二回かが屋単独ライブ『瀬戸内海のカロカロ貝』のチケット発売日だったが、ものの 10分で完売し、取れず。ちゃんとスタートの 10時からローチケのウェブに張り付いたのだけど、混雑によるエラーばかりを引くうち、まさかの「予定枚数終了」表示が現れた。そうはいってもちょっとナメていたので、おどろいた。
去年、『 14歳の国』の打ち上げの席で大塚(健太郎)君を相手に、かが屋の大ファンであるところの大場(みなみ)さんが熱心に説いていたのが、〈ヘンな人〉を登場させてそれを笑うのではない、「誰も何も傷つかない」構図の笑いということだった(と思う)。大場さんの認識としてまず、かが屋にかぎらず、いま、見る側の「見たい」笑いがそういうかたちのものに変化しているということがあるわけだが、そうした、いわば〈時代の要請〉に合致した存在──いま面白い笑い──のなかでも、その「誰も何も傷つかない」構図の達成度において群を抜くのがかが屋なのだ、といったようなことを、かが屋をまだ見たことのない大塚君にたいして説明する大場さんである。まあ、大場さんもわたしも、テアトロコントで観た『夫婦』というコント(くら寿司のやつ)にやられたクチなのだけど、大場さんが受けたとおぼしいその〈感銘〉についてはよくわかるつもりだ。
で、そののち、12月の「テアトロコント vol.32」にかが屋がふたたび出演したのをわたしは観に行ったのだが、そこで、大場さんの言った意味でじつに「かが屋」的な、象徴的な出来事に遭遇したのは、『このあと空いてる?』というコントの最中においてだった。
筋を説明するとそこは放課後の教室とおぼしき場所で、「このあと空いてる?」と周囲に声をかけ、みんなでご飯に行こうと誘っているいかにもな男1(賀屋)と、その賑やかさからいかにも取り残されそうな雰囲気をまとい、ひとり机に残ったままの男2(加賀)がいる。まとった雰囲気とはうらはらに、男2は内心、ぼくも誘われるだろうかという期待にどきまぎしているのだが、男1がいよいよ男2に「このあと空いてる?」と声をかけると、事態はまず、そこからひたすら好転を見せていく。じつは密かにマンガ家志望である男2が授業中に描いていたらしい絵を見咎め、男1が言い出したのは、「ぼくは読まないからよく知らないけど、うちの叔父さんが有名なマンガ家で、いまアシスタントを募集してるらしいから頼んでみようか?」という願ってもない夢のような提案で、よくよく聞き出すとそれはほんとうに超有名マンガ家だった──というようなところでいったん暗転がはさまり、ふたたび明るくなるといままさに男2が机で目を覚ましたところ。周囲の状況は男1に声をかけられる直前のそれに戻っている。
で、そこから〈夢と現実の落差〉で笑わせるのではなく、〈男2にとって正夢のように同じことが起こっていくさま〉を見せていくところもかが屋らしい手つきであるわけだが、なにより象徴的だったのは、その途中の暗転時に拍手が起こったこと──暗転したことで「終わった」と思った客席の多くから、そこでじつに満足げな拍手が湧いたこと──だった。つまり、前フリであるところの前段──ただただ事態が好転していくさまと、そこに生まれる可笑しみ──だけでもって充分コントとして成立していて、客も満足を得ているという、とても「かが屋的な成果」をその拍手は示していたように思うのだ。
あと、その日は Aマッソも出ていて、そちらもやっぱり面白かった。『アレゴリー』は、ある意味「いまどきな笑い」それ自体を笑いの対象にしたようなメタ的な作りで、これもまた、いま何を笑うかということの突端を見るような感じがあった。

本日の参照画像
(2019年3月 2日 12:27)

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