/ 24 Jul. 2004 (Sat.) 「京都へ」


■7時に起きだしてシャワーを浴び、出掛ける準備をする。ぎりぎりに日記を更新して9時に家を出た。新幹線で京都まで。以前に京都に行った折りに使った2001年版の「るるぶ」を見ながら、新幹線の車中で今日着いてからどこを観光するか相談する。うちの奥さんはおもむろに「苔寺に行きたい」と言い出すが、「るるぶ」によれば苔寺(西芳寺)の拝観には往復はがきによる事前申込が必要とのことで無理。金閣寺→竜安寺→広隆寺というコースに決まったのは広隆寺に収められた有名な「弥勒菩薩半跏思惟像」を見ようというのが決め手となったからだ。
■うちの奥さんは以前、会社の人に「弥勒菩薩半跏思惟像に似ている」と言われたことがある。顔が、という話だったはずで、「あの、あれ、仏像でさ、片足組んで、考え込んでるやつ、あれに似てない?」とその人は言い、居合わせた私が声を出して笑ったのは言わんとするところが多いに通じたからで、しかし具体的にどの部分がと説明するのは困難だし、ほんとうのところ似ているのかどうか怪しいとさえ言えるのは、それがそもそも「記憶のなかの弥勒菩薩半跏思惟像」を基準とした話だからだ。その発言をした人と私の、それぞれの輪郭のにじんだ記憶が当時の拓位さんの顔の上でそのとき合致したのだった。
■出色だったのはやはりその半跏思惟像を含む広隆寺・霊宝殿の仏像群で、四天王、十二神将、日光菩薩、月光菩薩、薬師如来、阿弥陀如来、大日如来…といったオールスター勢揃いぶり。コの字形に並んだそれらの仏たちの真ん中に件の弥勒菩薩が安置され、その弥勒の対面には巨大な三体の仏像──その中央は、かつては42本あったという腕がことごとく欠損してしまっているひときわ大きな千手観音の座像──が存在感を示す。対峙する弥勒と千手観音の様子に「はたしてどちらが暗黒面の使い手だろうか」と見当違いなことを考えるのは先日『スターウォーズ』シリーズを奥さんといっしょに見返してしまったためだ。拓位さんは自分に似ていると評判の、半跏思惟像のミニチュアが中に入ったお守りを買う。しかし、「弥勒に似ている」というのもものすごい褒め言葉だ。
■観光を終えて、大阪に向かう。阪急の茨木市駅に午後6時ごろ到着し、迎えにきてくれた上山君と落ち合う。恭子ちゃん(上山君夫人)はこの週末、友達の結婚式のため上京していていない。上山君は9時半からサッカー日本代表の試合をテレビ観戦しなければならないのでそれまでに夕飯をすませる段取りになり、冷蔵庫に残っているという豚肉に材料を買い足して、冷しゃぶを作る。作ったのは上山君とうちの奥さんだ。私は何をしていたろうか。
■シャワーも浴びてしまってからいよいよキックオフを迎えたが、しかしいったい何年ぶりにテレビでサッカーを見るのだろうか。と書いて、いや、さすがにこのあいだのワールドカップの際にはテレビに向かっていたのではないかと記憶をつなごうとするがよく思い出せない。ひょっとして見ていないのではないか。あのときもスポーツ番組の映像でだけ接したとか。少なくとも今日のように一試合をフルタイムで観戦するのは高校のとき以来である。信用のおける上山君の解説付き。やはりサッカー観戦にはとなりに「サッカー好き」が必要だ。
■ところで上山君ちはこの夏、まだエアコンを使っていないのだという。むろん暑いが、網戸からの風と扇風機とでまだしのいでいる。頭がさがる思いだが、しかし引っ越してからこっち寝室にエアコンのない状況のつづく私がまたこの夏、認識をあらたにしたのもまた「扇風機はなかなかやる」ということである。そして驚くべきことに、団扇もまたかなり涼しいのだった。
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