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Oct.
2007
Yellow

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/ 13 Oct. 2007 (Sat.) 「総理大臣といえば/プリセタ/『洋楽コトハジメ』」

プリセタ第9回公演『モナコ』のチラシ。チラシのデザインは言わずとしれたなんきんさん。

ものはついでということで、「〈総理大臣といえば〉アンケート」を開始。それを聞いて、で、どうするという考えはないが、参加していただければさいわいです。
戸田昌宏さんの主宰する劇団「プリセタ」の第9回公演『モナコ』が、本日チケット予約開始。公演は11月29日(木)〜12月4日(火)の全8ステージ。これも私がWebデザインを担当しているので宣伝しておきます。そういえば、チラシにそう書いてあるのを見て「あ、そうなんだ」と思ったということ以上の情報はまだないんですが、今回の公演には浅野(晋康)が演出助手として参加するらしい。あ、そうなんだ。
午後、門前仲町へ芝居を観に。ミズノオト・シアターカンパニー公演『洋楽コトハジメ』。試演・第1弾(Work in progress #1)というふうに案内にあるそれは50分ほどの一人芝居で、出演する熊谷(知彦)さんにとっては復帰第一作でもある。テーマである「日本における音階の近代化」をめぐって、多くはおそらく文献からの引用ではないかと思われるテキスト群がごつごつと並べられ、それを熊谷さんの身体が必死につないでいく。〈枠〉としていちばん外側にあるのは現代風のDJが提供するラジオ番組という設定だが、そのひとつ内側にあって、もうひとつの基調となるのが「呂律の害について」と題された講演である(呂律=ロレツは邦楽の音階の名称のひとつ)。もちろんそこではチェーホフの『煙草の害について』が利用されているのだけど、その講演者である明治の男性を演じる熊谷さんが、途中から、どうしても石坂浩二に見えてきてしかたがなかった。単純に「似て」見えたんだけど、なんだろう、〈いやらしくてだめな男前〉ってことかなあ。なんなんだろうこの人はと思って熊谷さんを見ていたのだった。
講演のなかにはさらにさまざまな声=テクスト=身体が折り畳まれているのだが、途中、「蛍の光」の原曲であるスコットランド民謡の「Auld Lang Syne」(たぶん)がかかるなか、講演者は「赤(い)紙」に印刷された「蛍の光」の歌詞カードを客席に配って歩き、やがてそれを歌いはじめる。きちんと、歌詞カードはひとりに一枚ずつ行き渡って、私も隣の人から受け取ったその紙をしばらく、飽かず眺めることになった。

蛍の光 窓の雪
ふみよむつき日 かさねつつ
いつしか年も すぎのとを
あけてぞけさは わかれゆく

千島の奥も 沖縄も
八島の内の(我らの国の) 守りなり
いたらんくにに いさおしく
つとめよわがせ つつがなく

台湾の果ても 樺太も
我らの国の 守りなり
いたらんくにに いさおしく
つとめよわがせ つつがなく

 現在もよく知られる「1番」の歌詞につづいてここにある、二連目と三連目の歌詞は、じっさいに明治時代、文部省が採用・改変して小學唱歌集に載せた、「蛍の光」の「4番」の歌詞である。二連目のほうがその初出時(1881年)の歌詞で、日露戦争後、領土の拡大にともなって文部省はそれを三連目の歌詞に改変したのである。
これ、この歌詞をそのまま熊谷さんが歌い上げていたら、それでもうある種のカタルシスはあったんじゃないかと思うのだが、しかし、「いまさらそんなことが言いたいんじゃないよ」とばかりに、熊谷さんは途中で歌詞を放棄し、メロディーにあわせてただ「アー、アー」と声を張り上げるだけになる。だからなおさら、われわれは手にしたその赤紙の文字を読まされることになる。
熊谷さんの魅力もあるし、あと、「国民身体の近代化」という(たぶんに〈国文学〉的な)テーマは、やっぱり私にとっては面白い。ごくささやかに添えられた当日パンフにはいくつかの参考文献が挙げられてもいて、エドワード・サイードの『知識人とは何か』とか、姜尚中の『ポストコロニアリズム』といったものもそこに含まれるが、こうした問題を考えるにあたっては、兵藤裕己先生のいくつかの仕事(『〈声〉の国民国家・日本』や『演じられた近代—〈国民〉の身体とパフォーマンス—』など)もやはり参考になるのではないかと思う。
ともあれ、熊谷さんは元気そうだった。終演後に少しだけ話す。あと、客席には三坂(知絵子)さんも来ていた。三坂さんは、こないだの『コンテナ』(三坂さん作・演出の舞台)を私が観に行っていたことをまだ知らなかったようだ。で、少し立ち話をする。三坂さんは「片倉(裕介)さんといっしょにやることの楽しさ」について、「とにかく、私の提案にことごとく反対するのが、やっていて楽しい」と、ま、ハナからそこを楽しむのもどうかとは思うものの、そう言っていた。セーラー服や、スモーク、裸といった〈三坂的なるもの〉たちに、片倉さんはいちいち異を唱えていたらしい(で、最終的には押し切られて、その全部が舞台上にあったのだけど)。その声と姿が想像されて笑ってしまったのは、スモークをたくことに反対して片倉さんが言ったという言葉だ。「そのスモークはいったいどこから出ているんだ」。ごもっともです、片倉さん。
明日は、宮沢(章夫)さんが講演者として出る、日本パーソナリティ心理学会主催のシンポジウム「演劇におけるHow to個性記述 〜パーソナリティの記述のもうひとつのかたちを求めて」へ行ってきます。

本日の参照画像
(2007年10月14日 01:26)

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