/ 14 Nov. 2011 (Mon.) 「ふたたび『ショー・マスト・ゴー・オン』について」
■さて、12、13日に彩の国さいたま芸術劇場で上演された『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』(わたしは12日に観た)について、ツイッター上でなるほどなあと思わされたつぶやきを(同趣旨のものながら)ふたつ。
劇場に足を運ぶゆとりのある「中産階級」の日本人が見たいと思うニセモノの「共生」の絵柄を見せ、今や世代を超えた集団的記憶の貯蔵庫となった感のあるポップミュージックを流して共感の共同体へ誘う。オリジナル版はどうあれ『ショー・マスト・ゴー・オン』日本版はそういう下品な企みに満ちていた。
11月13日 9:05 PM
フィクションである演劇は、つねに観客との「共犯関係」を結ばざるを得ないが、ベルは狡猾にもその共犯関係をさも当然のように使い倒し、暗黙裏に共犯を共感にすり替える。そこに広がるのは、共犯関係が隠蔽や抑圧を伴うことに無反省な連中による承認の空間。@『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』
11月13日 10:38 PM
もちろん、「劇場に足を運ぶゆとりのある『中産階級』の日本人」というのはほかでもないわたしのことだし、「共犯関係が隠蔽や抑圧を伴うことに無反省な連中」というのもきっとわたしのことである。まず、そう認識するところから話ははじめたいし、いつでもその批判のもとに立ち返れるようにしなければならないというのが、引用してみて、あらためて思うことなのだった。
■ところでわたしはこれを2階のサイドバルコニー席から観た。すると(いや、そこは計算ずくで1階正面席でも同様なのかもしれないが)、舞台のすぐ手前中央に設けられた DJ 席の手元がよく見え、曲ごとに CDを一枚々々 CDデッキに入れては再生させている──ために、たとえば曲と曲のあいだにはトレイの開閉ぶんの間延びした時間が空くのだし、同様の弛緩ぶりによっておそらく、以降も曲はすべてひとトラックまるまるを流しては入れ替えていくのだろう。でもって、音響卓の上に10枚ほど積まれたあのCDの山を順にかけていくのだろう──ことがはやばや了解できて、それで「CD(デッキ)かい」というツッコミとともに、これはあれだな、身を乗り出して観るべきものではむしろないのだなという気分に持ち込まされ、下手側のサイドバルコニーなので乗り出さないでいると舞台の下手1/4ほどは見えないわけだが、それを自分に許容させつつ、基本見える範囲だけを、わりとぼんやり観ていたのだった。
■それでなぜ泣くのだという話だけれど、やはり〈ショー・マスト・ゴー・オン〉という言葉そのものの効用は大きかったと思われる。泣いたのは中盤、映画『タイタニック』の主題歌(「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」)のところで、あそこへ至り、ふたりずつ組みになった出演者たちが「あれだな、あれをやるんだな」という空気を生んでいたあのとき、なぜだか知らず目ににじむものがあったのはたしかな話だ。ほぼ満員にちかく埋まった「大ホール」(しかもウケて湧いている)に視線を転じつつ、ことによるとわたしは〈舞台〉という頑強な制度の、その頑強さのほうにこそ感応し、泣いているのではないかと思いをめぐらす。それはつまり「〈ショー・マスト・ゴー・オン〉だなあ」という、ちょっと説明になっていないが、そういう感慨だったのだ。
■最後の曲はもちろん「ショー・マスト・ゴー・オン」で、わたしの印象ではこのとき、歌のサビが聞こえてからさほど時間をおかずに出演者たちは舞台前方へ向かいだしてカーテンコールの状態になったように見え、つまりこの CDが行動の規範を与えようとしているのは観客にたいしてだと見えた。応えて場内は万雷の拍手(わたしの席から見えたのはひとりだが、立ち上がって拍手をするかたもおられた)。「これにて完結」だが、とはいえこっちゃあ、ショー・マスト・ゴー・オン。「だからわたしは(行くかどうか)悩むのをやめ、ポストパフォーマンストークを聞くのもやめて上野(鈴本演芸場)へ向か」ったというのはおととい書いたとおりである。
■ああ、これ(「きっといつか別の劇団が〜」)もなんだかいいつぶやきだな。エンリク・カステーヤ云々はよくわからない(知らない)けど、文脈もあるしまるまる引用。
祭りの最後はよいものですね。行くか迷ったけど、立ち会えて本当によかった。作品はまるで毒気のないエンリク・カステーヤのようで、(たぶん良い意味で)イライラして、今とても闘争心を掻き立てられている。
11月13日 5:59 PM
きっといつか別の劇団が、同じあの舞台で、観客たちを震撼させてくれるだろう。それを楽しみに待ちます。二階席から観て、劇場や作品の構造などなどいろいろ盗めた気がする。おつかれさまでしたー。
11月13日 6:15 PM
そしてこの一撃(一撃を食らうのはもちろん、日記でこんなに長々と扱っているわたし)。
さあ、ショー・マスト・ゴー・オンだぜ。
油絵茶屋再現を右目と左目で堪能した後クソのようなダンスを埼玉で観た帰りに初対面のクソ男にばったり出会ってクソ発言を間接受けしたのに反論もせずに妄想でバックドロップを決めた。だめじゃん自分もクソじゃん!と思ったのでとりあえずあのクソ男には私の脳内でとっととくたばっていただく。死ね。
11月14日 1:45 AM
■あ、そうそう、ぼんやり観ていたと書いたが、わたし、だいたいは(プログラムにあった顔写真から判断するにおそらく)鄭順栄さんを見ていた。かわいかったからである。
■本日(14日)の電力自給率:44.0%(発電量:9.6kWh/消費量:21.8kWh)。
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