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Nov.
2016
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/ 7 Nov. 2016 (Mon.) 「志ん好『五人廻し』がよかったのだ!」

5代目古今亭志ん好。「古今亭志ん好応援隊」のサイトより拝借。

夜、神保町のらくごカフェで「第一回廓噺研究会/志ん好・馬治二人会」。山村(麻由美)さんを誘って観に行った。らくごカフェはたしかこれが二回目。あんまり縁がない。なにせきらいだからね、落語。狭い会場なのでそうは言ってもたかは知れているが満員にちかい入り。てめえももういい歳なのであって他人事みたいに言っている場合かって話ではあるものの客の年齢層は高い。山村さんあたりが最年少か。ともあれ大入りで、贔屓としてはちょっとほっとする。
というわけでおおよそ二年ぶりの志ん好。当日の、やや興奮気味のツイート群を引用してしまえばそれでもうだいたいのことを言ってしまっている気もするが、まずはそちらを。

21:48
11/7 第一回廓研究会/志ん好・馬治二人会@落語カフェ。蜘蛛駕籠/志ん好、お直し/馬治〈仲入り〉五人廻し/志ん好。山村さんと。
22:31
というわけで、ほんとひっさびさの志ん好さん。確実に上手くなっていて安心した。というか、よかった。五人廻し。噺の可笑しみの、その骨格がちゃんとでていた。にやにやできた。ほんとはもっと大笑いしたいが、それはまた五年後にでもいいさ。
22:37
でもって、そこらへん(志ん好評)について山村さんと意見の一致をみれたのがとてもうれしい。
22:48
じつをいって、今日の満足度/興奮度はかなり高いのだ。それはたとえば、時を同じくして開催されていたらしい「『よみらくご』小三治スペシャル」について、どんな感想ツイートが流れてきたところでくやしくないくらいのものなのだ。

一席目の「蜘蛛駕籠」は特筆するような出来ではなかったというか、どちらかといえば〈よくないときの志ん好〉が出た印象がある。なぜ「蜘蛛駕籠」? という疑問もちょっとあった。というのも、〈入れ替わり立ち替わり、いろんな客が現れるのをオムニバスで描く〉という噺の構造が「五人廻し」と同じだからだ。こういうのはあまり「付く」とは言わないのかもしれないが、これはこれで「付く」ように思われ、ってまあ、そもそもが「廓噺研究会」という題材縛りのある会なのだから噺が付くのはべつに構やしないのだけれど、ひょっとして練習?──『乱』を撮る前に『影武者』を撮るみたいな?──とか思いながら観ていた。というか、なかなかむつかしい噺だよね「蜘蛛駕籠」。どう魅力を提示すればいいのかがいまいち見えない。坦々と演ったんじゃ面白くないのは当然ながら、でもけっきょく、坦々と演ったうえで面白くするしかないたぐいの噺であるようにも思える。噺の面白さではなく、演じる当人の面白さを出すしかないというか、べつにムキになるような噺じゃないというか。あ、でも、ムキになるってのも手ではあるのかも。どうやら師匠・志ん五がしばしば掛けていたネタであるようなので(わたしはあんまり出会わなかったけど)、そこはやっぱり、ぜひ掌中に収めてほしいところではある。
「五人廻し」もまたむつかしいネタだ。必要な技量が半端ではないと想像されるうえに、ストーリーがほぼない。各ブロックのその〈人物〉を積み上げていってうねりを生むしかない。志ん好は、途中で妓夫太郎(若い衆)に「どうもアタマが狙われるねえ」と言わせ、うまく独自の(?)補助線を引いてもいたが、それ以前にまず各〈人物〉がよかったのだから興奮させられる。ツイートの繰り返しになるが、「噺の可笑しみの、その骨格がちゃんとでていた」のだ。だから後半は終始にやにやさせられたのであり、この「にやにや」から「大笑い」まではまちがいなくあと一歩だ。その一歩が大きいとも言えるわけだけれども、難なく跨いでいきそうな予感が、今夜はあった。いやまあ、さすがに二年も観ないでいれば上手くなっているのであり、その着実さがたのもしい。初演であったらしいことも考え併せればなおのこと、うれしい出来だった。
高座が面白いとき、噺家は高みにいる。ほら、これはこういう噺なんですよと、その高みからの〈眺め〉を見せてくれる。もちろん、そのためには(噺の理解や、技量の点で)ハナから高みにいる必要があるが、しかし聞く側からすれば〈愛宕山に挑む一八〉よろしく、徐々にその高みへと登っていく場合もあり、あるいは〈八〇尋の谷底から生還する一八〉のように、一瞬で、不意に高みへといざなわれることもある。──といきおいで書きはじめて、おれ、いったい何の話をはじめたんだ? とすでにわからなくなっているが、つまりあれだ、「愛宕山」はいい噺だなあということだ。そして、うっかりはじめてしまったこの喩えにあくまで乗っかるならば、落語の高みなるもの──愛宕山の「試みの坂」を登ったところ1]──は、じつはそんなに高くないってことでもある。うん、きらいじゃないんだよ、落語。

1:「試みの坂」を登ったところ

一行が休憩して弁当を使い、旦那が土器(かわらけ)投げをするそこは「清滝試みの坂」を登り終えた中腹。3代目桂米朝の旦那の説明では頂上の本殿は「もう二十五丁上」、8代目桂文楽の旦那にいたっては「てっぺんはまだ三倍もある」と一八を驚かす。3代目古今亭志ん朝がそのマクラで語っていたような「名人」、5代目古今亭志ん生にとってのかの「圓喬」などは、いわば、この頂上なのであろう。

次回の「廓噺研究会」は来年 4月ごろを予定とのこと。つぎの噺はいったい何を選ぶだろう。「文違い」あたりをピシィーーッと演ってくれたらそれは夢のようだ。それまで待てないとなった場合は 12月14日の独演会、「落語しんこうどう」@日暮里サニーホールがある。ネタ出しは「味噌蔵」と「穴泥」。ゲストは講談の宝井琴柑。

きょうのひとこと

で、げしょ? でげしょ?( 5代目古今亭志ん好「五人廻し」)

本日( 7日)の電力自給率:43.9%(発電量:9.5kWh/消費量:21.6kWh)

Walking: 5.1km • 7,773 steps • 1hr 20mins 49secs • 242 calories
Cycling: 2.3km • 12mins 2secs • 51 calories
Transport: 76.8km • 1hr 33mins 12secs
本日の参照画像
(2016年11月17日 04:41)

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