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Feb.
2018
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/ 10 Feb. 2018 (Sat.) 「高山玲子『ゴーストライター』 / ヒゲ王国出身の」

オカルト界の巨大なアイコン「ブラヴァツキー夫人」こと、ヘレナ・ブラヴァツキー [1831 - 1891]。おもにアメリカで活動し、近代神智学を創唱した。そうです。よく知りませんが。

ロビン。2016年9月。ずいぶん小さくなったなあと感じさせる一枚。

夜、横浜・井土ヶ谷の blanClassで、高山玲子の『ゴーストライター』。

どうも、こんにちはー

お返事ありがとう。
それではこれから演劇を始めます。
これから行う上演は『あなたが消えた時のこと』です。
『ゴーストライター』 | TAKAYAMAREIKO

 参加者でもある観客は、自分が消え(死んときのことを──それは何歳のときで、どこで、側には誰がいて、どんな景色が見え……、といった具合に浮かんだイメージを何でも──書くように請われ、続いて、ひとりずつ舞台脇に座ってマイクに向かい、それを読み上げるよう促される(もちろん参加しないでもいいが、結果的に大半が参加した)。ワンセンテンスごと区切って読み上げられたそれが出演者である荒木悠によって逐次英語に(参加者のテキストが英語である場合には日本語に)通訳され、客席から見て正面の壁には、読み上げる参加者を正面から捉えた生中継のカメラ映像と、そして別室(?)でひとり「上演」する高山玲子の姿をこれも固定カメラで中継する映像とが並んで投影される。自身が読み上げを行っているあいだは「観る」ことができないという理屈で、壁の両映像の全体をさらに撮影した記録映像が最後にもういちど「上映」され、(いちおう)そこまでを含めた時間の全体が「上演」であるという構成。
 ちなみに観客はもうひとつ、読み上げ用のテキストを書く前に「百年年表」と名付けられたシートにも記入を求められる。0歳から 100歳(もしくはその手前で死ぬ歳)まで、5年ごとに 1分の時間を与えられて各年齢に紐付いた記憶(場所でも出来事でも何でも)をメモするそれは上演に直接使用されることはないのだが、テキストを書くにあたっての〈準備運動〉になっていることはたしかで、5年で 1分という均質化された時間の経過のなかで百年を俯瞰するとき、たとえば単純に、(長生きするとしてだが)「まだまだ長いなあ」といったことを思ったりする。
でまあ、以下は雑多な感想。
別室にいる高山さんの映像にはいっさい音がなく、時折カメラに近づいたさいには口元の動く様子も見てとれるが、その声はこちらに届かない。じつはそれ、企画側からすると「テクニカルなミス」(ほんとは高山さんの発するセリフも客席に届く予定)だったらしいのだが、しかし無音であることによって結果的に、別室の映像と会場との〈没交渉〉はより際立つことになった。おそらく会場側のマイクの音(参加者によるテキスト、および通訳)は高山さん側に届いていて、それに感応して別室での「上演」が果たされる関係にはあるものの、むろんアテ振りをするわけでもなく、ただ気ままにふるまっているようにも見えるその映像は基本、会場との連関をもたない。映像の不鮮明さも手伝って、それはどこか、不意に発掘された遠い昔のホームビデオのようにも見えた。「わたしはなぜこれを見ているのか」「これはわたしにとって、何のゆかりのあるビデオなのか」といったことを思う。古いホームビデオに映るのは、何世紀も何世代も隔たった見知らぬ家族のようにも、よく知った、ごくちかしい恋人のようにも見えて、それにしてもやはり、「死者であること」はたんに「ここにいないこと」=すぐ隣の部屋にいて姿が見えないことに等しい、ただそれだけのことなのかもしれないと思わせられる。
降霊術? これもその不鮮明な映像と、少しく高山さんの白い衣装とから喚起されたイメージだが、かの心霊ブーム華やかなりし 19世紀イギリスあたりの、降霊会/交霊会も脳裏に浮かんだ。われわれは霊との交信を望む会の参加者たちであり、その会に乞われた職業霊媒師が高山さんだ。参加者の期待を一身に受け、いま、高山さんは別室でその降霊術を試みているというような。異名は平成のブラヴァツキー夫人、白いブラヴァツキー夫人こと高山玲子。
まあ、たぶんに参加者のテキストにも負うところの多い上演で、そのテキストは(それだけ強固な枠設定だということもあろうが)どれもよかった。ちなみにわたしがもっとも感銘を受けたのは、最後のほうで語った関西のイントネーションの方のあれ、「しかし、心のどこかで諦める。それに尊さを一瞬感じる」と閉じられるあの一篇である。
書いたテキストは提出してしまったのでいま手元にないが、わたしのは短いのでだいたい覚えているといえば覚えている。せっかく(?)なのでついでに披露すれば、これがきのう考えた、わたしの最期なのだった。

99歳のとき。
どこかも、誰が側にいるのかも、意識はおぼろになっている。
側には妻がいる、ように思っているが、ほんとうにそうかはわからない。
元気か? 元気なら、ちょっと看取れそうにないぞ、おれ、と妻に。
あいにく元気ね、と妻──が言ったような気がしたが、気のせいだったかもしれない。
鼻わるいからな、おれ、とよくわけのわからないことを応えた。
それっきり。

帰宅するともう 0時ちかかったが、なんとジャンプの男子ノーマルヒル決勝がまだ競技中だった。見ていると、ものすごく立派な口髭をたくわえた選手が映り、大ジャンプを成功させた。「おおー」となったもののどこの選手だったかを確認し損なった茶の間では、いかにも爵位を持っていそうなこの彼こそ、今回がオリンピック初参加となる「ヒゲ王国」の選手団のひとりだったのではないかというふうに話がまとまる。以降、ヒゲを生やした選手が出るたびに国籍を確認しては、「ヒゲ王国か? あーちがう、このひとはドイツだ」といった具合に残念がる遊びが流行ったのだった。
って、この話、要るか? 『ゴーストライター』の感想だけでよかったんじゃないか?

Walking: 4.1km • 5,660 steps • 57mins 45secs • 195 calories
Transport: 108.1km • 2hrs 40mins 33secs
本日の参照画像
(2018年2月11日 19:30)

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