/ 6 Mar. 2019 (Wed.) 「怪奇大作戦」
■買っちゃいないのだが『怪奇大作戦』のブルーレイボックスが出た。本日発売。ひとまず購入を見送っているのはすでに DVDボックスを持っていることに加え、これもウルトラシリーズ同様、WOWOWでやったりしないかなー、という淡い期待[※1]を寄せているためだ。ちなみにうちの「相馬ライブラリ」には DVDボックスから全話と、あと「狂鬼人間」は VHSからダビングしたものが入っている。
- ※1:淡い期待
ウルトラシリーズ各作品のハイビジョンリマスター版を WOWOWでやったときはブルーレイに先行するかたちでの放送だったと思うので、すでにそのパターンを外れている今作は「やらなそうだなあ」とも思っている。
■欠番扱いであることで有名な第24話「狂鬼人間」は、DVDボックスにひきつづき今回も収録されていない。この「狂鬼人間」(山浦弘靖脚本、満田かずほ監督)に出てくるのは「狂わせ屋」を名乗る女性科学者で、彼女は「どうしても殺したい相手がある人」を顧客に、自作の特殊な脳波変調器を用いて、その依頼者の精神を〈一定期間だけ〉変調させることを請け負う。「狂わせ」られた依頼者はその足で目的の殺人を達成し、裁判で心神喪失状態であることが証明されて無罪になったのちに短期間で〈正気〉にもどるという、そういう犯罪の話である。
■この回のこととなるといつも、高校同級の永澤(悦伸)がかつて口にした至極もっともな感想──「最後の的矢所長のセリフさえなけりゃなあ!」──を思い出すのだが、永澤、それどこに書いてたんだっけなあと探すと、2006年11月5日付の当サイトの日記に行き当たる。ひさびさに読み返し、へんな日記だなあとわが事ながら思ったのちに事情を思い出したが、これ、「日記を募集」した回の日記なのだった。「 11月5日の相馬の日記を募集します」として投稿フォームから日記を募り、けっきょく知人 4人から投稿があったものを編集してひとつにまとめた内容が上のリンク(だから、へんというか、一瞬「こんなの書いたっけ?」となるのも無理からぬ代物)。で、投稿してくれたうちのひとりが永澤で、その永澤パートに「狂鬼人間」への言及があるのだが、つい懐かしいので、ここでは編集する前のオリジナル全文を引いておこう。おそらくだが、永澤はこれ、その日の自身の日記を素直に書いて寄こしたのだと思う。
今日は予定外の仕事.
やっと会う約束まで出来たのに,それがつぶれてしまったよ.
帰ってきて,「狂気人間」をみる.おしいなあ,いつ見ても.
的矢所長が,最後の一言さえ言わなければなあ.
ここで出てくる変調器.原理はわからないものの,きっと,脳波を加速させて狂わせるんだろう.
今日は,仕事でお一人お見送りをしたのだが,モニター波形がゆっくり,そしてゆっくり遅くなって終わっていくのと対照的に思えた.突き詰めれば,我々の命やら精神活動やらは,波の強弱でしかないのだなあ.
■なんだよ、すっかり永澤の話になってしまったけれど、永澤はどうするんだろう、買うのかな、ブルーレイボックス。買ったら貸してくれ。すぐ(ディスクサイズを)倍にして返すからさ。
■ちょっと無視できないほどひどい的矢所長の一言[※2]はともあれ、『怪奇大作戦』は面白いのでぜひ見てもらいたい。もちろん実相寺昭雄監督の 4作──「恐怖の電話」「死神の子守唄」「呪いの壺」「京都買います」──はどれも手放しで面白いし、おそらく〈最高傑作〉の座は「死神の子守唄」と「京都買います」のあいだで争われるのだろうけれど、〈代表作〉ということでは、わたしは「霧の童話」と「かまいたち」というふたつの極北を推したい。これは妻とも意見の一致をみるところで、『怪奇大作戦』の醍醐味のひとつはなんといっても、〈解決してねーじゃんかよ〉という点にあるのである。
■『ウルトラQ』からはじまるウルトラシリーズにおいては一般に『ウルトラセブン』をひとつの作品的ピークとする見方があり、あくまでその見方に立てば、『セブン』のあと少しあいだを空けてはじまるのが〈ゆるやかな衰退のはじまり〉としての『帰ってきたウルトラマン』──という図式になるのだが、その『セブン』と『帰ってきたウルトラマン』のあいだ、『セブン』の直後に円谷プロが作ったのが『怪奇大作戦』であり、巨大ヒーローの系譜としてではなく円谷プロ作品の系譜として見たとき、ひょっとしてその頂点と見なすべきは『セブン』ではなく、『怪奇大作戦』のほうなのではないかというのは、後者を見た誰しもが抱くところの思いだろう。
■ブルーレイボックスに続き、13日には白石雅彦『「怪奇大作戦」の挑戦』(双葉社)も発売される。
1968年9月15日、第1話「壁ぬけ男」の放送で円谷プロの新シリーズ「怪奇大作戦」は幕を開けた。怪獣も宇宙人も登場しない新路線に戸惑っていたのは、視聴者だけでなく、金城哲夫をはじめとするスタッフも同様だった。一方で「マイティジャック」の失敗が、若き才能が集う〝梁山泊〟の先行きに暗い影を落としていた。それでも彼らは、切磋琢磨の中から、テレビ史に残る珠玉の傑作を送り出していく…。金城哲夫、上原正三、実相寺昭雄、円谷一、飯島敏宏…60年代後半、夢の映像工房に集った若き才能の角逐と光芒。その足取りを丹念に分析し、「そのとき何があったのか」を再構築する。
アマゾンの「内容紹介」
とのことで、永澤、こっちはどうだろう。面白そうじゃないか? ぜひ買って、読み聞かせてくれてもいいぞ。
- ※2:的矢所長の一言
「日本のように精神異常者が野放しにされてる国はないんだ。政府ももっと考えてくれなくちゃあね」
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