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Mar.
2019
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/ 7 Mar. 2019 (Thu.) 「魔眼の匣の殺人 / 七緒」

今村昌弘『魔眼の匣の殺人』(東京創元社)。

『七緒』vol.57、2019春号(プレジデントムック)。

緒方貞子さん。

緒方孝市監督。

『魔眼の匣の殺人』を読み終えた。
いまこれを書く前に、『屍人荘の殺人』(同じ著者の前作)の読後にはどんなことを書いたんだっけと確認したが、何しろネタバレへの配慮で漠としたことしか書いてないもんだから、自分で読み返してもどこの何に感心してそう書いているんだかいまいち記憶が呼び起こされないという、日記としてはちょっと甲斐のないことになっている。まあ、今回もそんな感じになるんじゃないかと。
まずははい、たしかにみなさんのおっしゃるとおりで。『屍人荘の殺人』より面白いっす。「史上初、デビュー作にして3冠!」という惹句が帯に踊った前作(その後、「本格ミステリ大賞」も受賞して四冠)のシリーズ続編でありながら、その天井のようなハードルを(わたし自身は、何しろ前述の日記でその四冠作品を「佳品」呼ばわりしているくらいなのでさほどのハードルを設けていたわけではないものの)軽々と、心地よく上回ってきた印象。非常にロジカルな組み立てで「こうでしかありえない」というふうに設定/指摘される犯人=《フーダニット Who done it》が基点となり、その上にこれでもかと積み上がっていく事件の成り立ち=《ホワイダニット Why done it》という、その構図がとにかくすばらしい。物語的事実としてはもちろん、両者の関係は逆である──状況のなかに動機が生まれ、動機が犯行を生み、犯人が生まれる──わけだが、それを逆転させて語る「語り口」こそが「ミステリ」なのだと、あらためてそんなことを言ってみたくもなる。
だから、いちばん「ぎゃっ」となったのは犯人の素性にかんする伏線回収の部分だ。「オカルトの逆襲」という言葉が浮かぶ──逆襲されるのは読者であるわれわれ)。そして、「予言者と恐れられる老女」についてのある暴露にかんしては、うん、手記のその一文にはたしかにひっかかりを覚えたんだよ。もう少し粘ってそのひっかかりに付き合っていれば、あるいは気づけていたかもしれないなー、などと。
最後に堂々と予告されている次回作──風呂敷を広げてみただけで、現時点はノーアイデアなのではないかと想像するが──がとにかく楽しみであり、これでいよいよハードルは上がった。次もおそらく飄々とそれを乗り越えてくれるんじゃないかと期待するけれども、仮に〈超常的な何かの存在を仮構した上に成り立つクローズドサークル〉というシリーズの特徴を維持するとすれば、それ、あと何があるかなあ。
『屍人荘の殺人』は映画化されるんですってな。キャスティングの葉村譲=神木隆之介、剣崎比留子=浜辺美波というのはなんとなく妥当な感じを受けるのにたいして、明智恭介までもが中村倫也なのは原作イメージからするとちょっと「かっこよすぎやしないか」というところだが、でも、明智恭介という人物について「なるべく位置エネルギーを大きくしとかないといけない」だろうことを想像すれば、まあ、そうなるかという納得感はある。
話変わって。本日から店頭に並んでいる最新号の『七緒』に、大場(みなみ)さんが着物とメイクのモデルとして登場していると本人の告知インスタで知り、書店で確認する。

@soma1104: 「七たび生まれ変わって、緒方になる」の『七緒』、見ました。
2019年3月7日 21:42

プレジデント社から出ている季刊誌の『七緒』は 2004年秋の創刊で、「七たび生まれ変わって、緒方になる」のこの「緒方」は当初、女性ではじめて国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子を指すと説明されたものだ。緒方貞子に「活躍する女性」の新たなロールモデルを見、いつか必ずわれわれも緒方貞子になるのだという決意を込めたかたちだったが、「七たび生まれ変わって」という表現が災いした。犬養毅を曾祖父にもつ緒方の〈血統的エリート〉としての側面と結び付けられることで、「けっきょく〈生まれ〉なのか」という批判を呼び込むことになったのだ。そこで現在ではこの「緒方」を、元プロ野球選手で現・広島東洋カープ監督の緒方孝市、あるいは広く緒方姓一般を指すものとして説明していて、緒方孝市のようになりたい女性、もしくはとにかく緒方姓になりたい女性に向けたライフスタイル情報誌という、よくわからないことになっている媒体ではあるものの、少なくとも、大場さんに罪はない。
ところで、

@obami23: @soma1104 「着物からはじまる暮らし」のほうの七緒もぜひ
2019年3月8日 0:12

というこのリプライをもらってからあらためて自分のツイートを見て、「緒形」と書いたつもりだったのが「緒方」になっているのに気づいたわたしだ。「緒形拳にあこがれる人たちの雑誌」といったことをここには書くつもりだったのだが、タイプミスにより再考を促されることになって、

@soma1104: 怪我の功名、としたい。
2019年3月8日 2:34

というこのツイートにつながる。さて、結果は?
いや、それはそれとして 25ページの「ほんわか」、なんか引きつったような顔じゃない? 気のせい?

本日の参照画像
(2019年3月10日 02:46)

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