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Aug.
2007
Yellow

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/ 1 Aug. 2007 (Wed.) 「八月は小田亮さん推進月間」

最左欄、丸数字の「8」の下にある八月の写真のボツ案。オリーブ。

本橋哲也『カルチュラル・スタディーズへの招待』(大修館書店、2002年)。入門というか、思考するきっかけとして手ごろな啓蒙的一冊。平易な文章であることがかえって厄介なほどに、扱われる内容は平易ではない。

かしまゆう『Tシャツ』(文學の森、2004年)。楽天ブックスで扱っている。商品ページはこちら

大学時代に教わった先生のひとりである小田亮さんがブログ(はてなダイアリー)をはじめていたことをいまになって知った。そのひどく〈分厚い〉ブログを見つけた興奮のようなものはひとまず「blue」のほうに書いたのでそっちを参照していただきたい。

 その小田さんのブログはあまりの〈分厚さ〉ゆえ、たんにリンクを張ったくらいではたしてその一次テキスト(というのはつまり小田さんのブログ記事)をどのぐらいの人が読み進んでくれるだろうかとちょっと不安でもあり、おこがましいけれどもできれば私なりにその内容(とりわけ刺激的な部分について)を紹介──することをつうじて自分自身の理解するところを整理──したいと思うのだけれど、たったいまはその時間がないのでまたいずれ。
ほかに最近買って読んでいるのは本橋哲也さんの『カルチュラル・スタディーズへの招待』(大修館書店、2002年)。「カルチュラル・スタディーズ(文化研究)」はすでに私の学生時代、かつての「テクスト論」に取って代わり、文学研究においてそのメインストリームとなりつつあったもので、さらにはいわゆる「カルスタ」なる略称(基本的にはたんなる略語だが、人によっては「軽スタ」の響きを含み、「お手軽な研究手法」という皮肉が込められる)も当時から広く出回っていたけれど、いまふたたびそこへ「招待」されてみようというきっかけは何だったか。えーと、忘れたな。例によってアマゾンで買ったのだけど、その商品ページにあるカスタマーレビューのひとつがすごくひどいので紹介しよう。「くだらない。本当にくだらない」と書き出してからそのレビュアーはこうつづける。

そもそもカルチュラル・スタディーズとは、学問ではない。左翼やマルクス主義者の隠れ蓑(つまり学問を装った政治運動)である。それを大学で「教えて」いたり、もっともらしい言葉をしたり顔で使ったり、カタカナ語を多様したりするから、生真面目な人は勘違いしてしまう。

 これ、ある意味において応えるなら「おっしゃるとおり」である。透明であるかのような「学問」という価値の体系そのもの(何が学問であり、何が学問でないのか)が、すでに何らかの政治性をともなっているのであって、むしろそのことを指摘してみせるのがカルチュラル・スタディーズの典型的な仕事であるからだ(むろん、たんにそこに政治性があることを指摘するだけで事足れりとしてしまう論は、それこそ「カルスタ」の悪例だけれど)
7月28日付の日記に書いた句集、かしまゆう『Tシャツ』(文學の森、2004年)も届いた。一読。

俳句を作るようになってから、移ろう季節の中で風も水も輝きはじめました。私が感じた夏草を揺らす風を、この本を手に取ってくださった誰かに伝えることができたなら、それほど嬉しいことはありません。

 と、かしまさんは「あとがき」のなかに書くが、まああれだよね、「十七音でしゃべる技術」ってことだよね、ひとまず俳句は。むろん十七音は短い。短いがゆえに、直接詠まれている言葉以上の情景をそこに呼び起こしてみせるという技術なり、その魅力なりといったものがあるのだろうが、それとはまたべつに、十七音で、きっかり十七音分の情景を差し出してみせるという技術があるように思え、さしあたり私が魅力を覚えるのもそちらの技術である。たとえばこれはどうか。

 裃を着て舞猿の叱らるる

 裃(かみしも)を着た猿回しの猿が叱られていたのだろう。それだけのことである。それだけのことなのだけど、「十七音でしゃべる技術」(もしくは「十七音で視る技術」)をもった者はついそれを〈詠む〉のだ。

 一着の馬七夕の雨の中

 これは多少野心的な作りなのかなとも思うが、しかし、これも〈きっかり十七音分の情景〉であるところが私には好ましい。

 見送りに行かざる髪を洗ひけり

 これ、ついつい五・七・五のリズムでもって、「見送りに/行かざる髪を/洗ひけり」と読むと「見送りに行かざる髪」という〈女の物語〉がやにわに立ち上がるのだが、あえて不定律俳句ふうに読み、「見送りに行かざる/髪を洗ひけり」と考えると、これはまたべつの、〈きっかり十七音分の情景〉が浮かんで面白い。

本日の参照画像
(2007年8月 3日 05:53)

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